「季節風」同人、佐藤いつ子さんのデビュー作です。
まず、何より嬉しいのは、元となった短編は「季節風」に投稿し、掲載されたものだということ。それを読んだKAGOKAWAの編集者さんからコンタクトがあり、長編に書き直し、そして本になった! という同人誌に所属しているものとしたら、理想的な夢のような話です。
長編への直しは大変だったことだと思います。
でも、やり遂げました。
もと陸上競技選手であった父、運動神経抜群の妹。でも走哉は、走ることは好きだけれど、脚が速いとは言えません。でも、地区の駅伝大会があることを知ったとき走哉は「走りたい」と思います。ところが、クラスから参加するチームから補欠としての誘いがきて、走哉はそれを受けるのです。補欠という立場に立ったときの気持ちがいかほどなものか。当日はみなと同じたすきをかけながら、応援するしかない。しかしそれでも走哉は毎日トレーニングをかかしませんでした。
そして、当日。
さて、どうなるか。ぜひ読んでいただきたいです。
以前も書いたことがありますが、私は中学の時、陸上競技部にいました。走るのが速いのだけが取り柄だったので。
陸上の練習、辛かったです。気持ちのいい瞬間とか、あったかなあと思うほど。
正直なんであんな辛いことをやっていたんだろうと思うほど。
いや、脱線です。
佐藤さん、あとがきに、「走ることと書くことは似ているように思います」と書かれています。この部分は激しく共感します。
書き始めた私達は、休みたくなるのをこらえながら、書き続けていくしかないのです。でも私の陸上競技と違い、書いていてよかった! という瞬間はあります。その最たるものが、こうしてデビューできたこと。(私も佐藤さんも)でも、それはゴールではないのですよね。