1944年9月、
劉連仁は日本軍によって、
生まれ育った中国の大地から、
無理やり引き抜かれるようにして連れ去られた――。(帯より)
劉連仁は、ある日突然に身重の妻や両親と引き離され、故郷から遠く離れた日本、北海道へと強制連行され、過酷な炭坑労働を強いられます。
そして逃亡、その後の北海道の山中で一人生きぬいた13年間・・・。
戦争のあった時代は、殺し殺されるというだけではなく、残虐な行為がまかり通る時期でした。多くの人が死に、多くの人の心を壊しました。でも、連仁の心は壊れることなく人としての尊厳を守り抜きました。
森越さん、これを書くため、どれほど連仁のことを調べたことでしょうか。ご本人はもう亡くなられているのですから、直接話を聞くことは叶いません。記録として残っているものを調べあげ、事実は曲げることなく、そこに心理描写、情景描写を加えるという仕事は並大抵のことではないと思います。
日本の炭坑や銅山などで、中国人が強制労働をさせられていたことは知っていましたが、劉連仁という人がいたことを、私は全く知りませんでした。
森越さん、この本を書いてくださって、ありがとうございました。
多くの方に読んでいただきたい本です。
戦中に使われていた聞き慣れない言葉も多用されていますが、描写に臨場感があるので、「難しい」とは感じさせません。小学校高学年から読めるのではないでしょうか。
森越さんは、「季節風」で長く学んでいる方です。亡き後藤竜二さんがこの本を手にしたら、どれほど喜ばれただろうかと思わずにはいられませんでした。