fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

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『生きる 劉連仁(リュウリュンレン)の物語』(森越智子)童心社

2015年11月24日 | 本の紹介
 1944年9月、
 劉連仁は日本軍によって、
 生まれ育った中国の大地から、
 無理やり引き抜かれるようにして連れ去られた――。(帯より)

   

 劉連仁は、ある日突然に身重の妻や両親と引き離され、故郷から遠く離れた日本、北海道へと強制連行され、過酷な炭坑労働を強いられます。
 そして逃亡、その後の北海道の山中で一人生きぬいた13年間・・・。
 戦争のあった時代は、殺し殺されるというだけではなく、残虐な行為がまかり通る時期でした。多くの人が死に、多くの人の心を壊しました。でも、連仁の心は壊れることなく人としての尊厳を守り抜きました。
 
 森越さん、これを書くため、どれほど連仁のことを調べたことでしょうか。ご本人はもう亡くなられているのですから、直接話を聞くことは叶いません。記録として残っているものを調べあげ、事実は曲げることなく、そこに心理描写、情景描写を加えるという仕事は並大抵のことではないと思います。

 日本の炭坑や銅山などで、中国人が強制労働をさせられていたことは知っていましたが、劉連仁という人がいたことを、私は全く知りませんでした。
 森越さん、この本を書いてくださって、ありがとうございました。
 多くの方に読んでいただきたい本です。
 戦中に使われていた聞き慣れない言葉も多用されていますが、描写に臨場感があるので、「難しい」とは感じさせません。小学校高学年から読めるのではないでしょうか。

 森越さんは、「季節風」で長く学んでいる方です。亡き後藤竜二さんがこの本を手にしたら、どれほど喜ばれただろうかと思わずにはいられませんでした。