どちらも作者は八起正道 、絵はいとうひろしさんです。対象年齢は、中学年から高学年というあたりでしょうか。
『ぼくのじしんえにっき』は、福島正実SF記念童話賞の大賞受賞作で、作者にとってはデビュー作です。初版は1989年
東京に大地震が起こります。水も食べ物も配給になり、それをめぐって争いが起こります。そして、伝染病が流行り出し・・・。
『ふうせんの日』は、原子力発電所の爆発という事態を描いています。1992年の発行です。
主人公の少年は、夏休みにひとりでおばさんの家へ行くのですが、そこは何か不穏な雰囲気のするところでした。原発をめぐって、地元の人と原発に従事している人たちとの間には対立があるのでした。道路はがらんとしています。そして、あってはならない爆発が起こってしまうのです。少年はもっとも爆心に近いところで被爆してしまいます。その後、町から逃げようとする住民と行政側とのやりとり、病院に入るときの様子・・・、少年の体には変化が起こり始めます。
どちらも20年以上前の作品。
東日本大震災を経験した私たちにとっては、現実にあった出来事のように思えますが、これが書かれたときにはそうではないのです。おそらく作者は災害や原発に対してかなりの危機感を抱いていたのでしょう。阪神淡路大震災は、この本が書かれる前かもしれませんね。
東日本大震災を、作者はどのような思いで受け止めたのでしょうか。
残念ながら、この2作以外の著作はないようです。
今の社会に警告するような作品を発表してほしいと思いますが、もう児童文学の世界からは遠ざかっているのでしょうか?
*左側のブックマートに、『しゅるしゅるぱん』(福音館書店)の表紙と挿絵を描いてくださった古山拓さんのブログを追加いたしました。古山さんのご紹介は後日また改めて書きますが、美しい水彩画の世界をどうぞ訪れてください。