ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

Mobikeのプロフィットモデル:利益はどこからもたらされるのか?

2017年09月12日 | ITS
今話題となっているシェアバイク。Mobikeは札幌でサービスを開始し、日本の企業も参入を表明しました。果たしてこのビジネス、本当にもうかるのでしょうか?中国語学習の一環として中国のQ&Aサイト「知乎」でのテンセント(騰訊科技)の投稿を翻訳しました。(今年の3月の記事。)
引用元 https://www.zhihu.com/question/49355450
摩拜单车的盈利模式和可持续利润来源是什么?
読みやすいように語彙についてはかなり意訳となっています。
翻訳責任は当方にあります。誤訳があればご指摘ください。

一日の稼働回数、故障率、再配置の費用などの変数が公式数字がないことから推定となっていて、正確は収益性についてはよくわかりませんが、少なくとも簡単に収益が上がるビジネスではないように思います。特に現在の中国大都市部に於いては2強(Mobike、ofo)の競争により供給過剰となっており、日当たり稼働率は低下していると思われます。
リンク先にはこれに対する回答として様々な試算が掲載されており、かなり知的な議論がなされているなと感心しました。

以下翻訳
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Mobikeのプロフィットモデル:利益はどこからもたらされるのか?

投資時期の後半に差し掛かっているものの、依然シェアサイクルは利益を生んでおらずむしろ厳しさを増してきている。業界はバブルであるとのレッテルを否定する事ができない中で、なんとか正常な発展に向かって進もうとしているが、実態としては完全にバルブ状態に依存している。

現時点では自転車の利用料が唯一の営業収入だが、我々の調査によれば現在平均的なシェアバイクの日当たり利用回数は2回/台まで落ち込んでいる。補助金が付いている場合を除けばシェアバイクの1回あたり使用料は0.5元~1元。まあ多く見積もって1台が一日に稼ぐ金額は2元だろう。
冬や雨の日には稼働率が下がることを考えれば一年で稼働する日数は270日程度。ここから推測する年間の1台あたり収入は500元前後だろう。
500元という金額はofoのスマートロックが付いていない自転車のコストと同等。現時点ではこの自転車の設計寿命は3年となっており、これによれば2年目、3年目は純利益が出ることになる。ここから見る限りシェアバイクは利益が出るビジネスに見える。
ofoの創始者である戴威はかつて、ofoは特定の地域ではその利益率は40%に達しており、おそらく今年中に黒字化するだろう、と語った。しかし事態はそれほど楽観的ではない。

この業界の人々が常に引用する計算式では、日当たり利用回数の低下を考慮しなければ自転車の故障が最終利益に直接の影響を与える。もし一台の原価が500元として、三台中一台が壊れて廃棄されてしまったとすると償却に必要な期間は半年延長されなければならない。
したがって仮にその故障、破損率が有る一定レベルでコントロールできるとし、また関連する運営コストを最低に押さえ込んだとしてもそれはシェアバイク事業の収益性に直接的影響をもたらす。

これに加え、入会時に徴収するデポジットがシェアバイク事業の重要な収益源とみなされているが、それには大きなリスクがあるため関連企業はとても慎重な見方をしている。
これは後述するとして、まずは上記の利益に関するリスクを見ていこう。

1)故障率の秘密
すでに30%まで達している?
Mobikeとofoが競争する中、両者の戦略の違いからその故障率は異なっている。Mobikeはその初代バージョンから「4年間メンテナンスフリー」を歌っていた。
Mobikeの設計思想は強度補強を中心になされており、ユーザーの利便、利用性を犠牲にすることもいとわない面が有る。しかしそれでもMobikeのCEO王晓峰が漏らしたところでは、上海地区では運営開始後4ヶ月時点での故障率は10%に達したという。
ofoの状況は大部異なる。最初のバージョンではofoは普通の自転車にちかい乗り心地、使い勝手の商品をユーザーに提供した。 自転車が完全な状態であれば、たしかにMobikeより優れていた。しかし、補強面の考慮が不足していたためにofoが非常に壊れやすかった。その後製品に補強を施したものの、企鹅智酷(テンセント系研究機関)の調査ではofo利用者の故障報告率は明らかにMobikeを上回っている。(ofo: 39.3% Mobike:26.2 %)
ofoは数字を公表していないのでその故障・破損率については諸説あるが、テンセントが複数の情報源から得た情報からは、同社の控えめな想定で20~30%、30%超もありうるとしている。
Mobike,ofoに加え、その他の勢力も故障率のトラブルに見舞われている。公共自転車とシェアバイクを同時に運営する永安行のCEO陶安平は公共自転車とシェアバイクの故障、破損率には大きな差があるという。訳注:公共自転車とは、行政が主導で設置した共用自転車。専用ポート返却。
公共自転車は公共施設の一環であり法律によって2000元以上の罰金が課せられることもあるため、公共自転車の破損はさほど深刻な状況ではない。大抵はちょっとした修理で済むが、シェアバイクはそうは行かない。
「我々の状況では、シェアバイクの破損率は公共自転車よりはるかに高い」陶安平は現在の永安行のシェアバイクの破損率はすでに10%に達しており、しかもこれは市場参入して間もない数字なのだ、と明かす。
更に深刻な事態が存在する。深センで公共自転車事業を展開する凡骑绿畅公司の総経理贾金涛曰く、シェアバイクは投入して一年後には破損問題が大爆発する可能性があるという。
ブレーキパッド摩耗によるブレーキ不良、スマートロックの電池切れ、こうした問題は短時間には簡単には発生しないが、一定時間を経過し自転車のダメージが一定段階を超えると集中して問題が発生する可能性がある。
一年を経過するとシェアバイク業界でのこの種の破損率の数字はおそらく10%を超えると見ている、という。ひとたび破損率が30%の水準を超えれば、仮に上記の推定を理想的な単一変数と仮定した場合、自転車のコスト回収期間は50%延長されることになる。
これら破損率の問題を考慮した後で考えると、ofoは今年中に利益が出るだろうと明言しているものの、Mobikeや永安行が利益が出るまでには後1年半程度かかるといっていることは我々の分析に一致する。

2)回収・配置換えに3元/台
シェアバイクの運営はときにとんでもない落とし穴にはまることが有る。シェアバイク運営は常にその回収業務がつきまとう。このプロセスには3つの工程がある。

第一に自転車を取りに行くこと。取りに行く人とトラックが必要となり、自転車の増加に合わせて人と車を増やさなければならないのは当然のことだ。以前深セン南山で発生した自転車回収事件では関係企業は半月に亘りその回収に囚われ、回収力不足の弊害を露呈した。

第二にメンテナンス。メンテナンスコストは自転車の設計、品質管理、投入される都市の人口やマナーに直接左右される。現在、急激に増加する修理要請はすでに産業チェーンにかなりの負担をもたらしており、一部都市では修理技師の高給与での奪い合いが発生している。

第三に自転車の再配置。
これら三つの工程はすべて人間が必要で、それは日ごとに段々と厳しさを増していく故障率の問題と関連しており、それにともなって負担も増加する。
しかし、回収問題は事業運営の一部分に過ぎない。Uberのようなカーシェアリングとは異なり、シェアバイク業界の運営にはオンライン、オフラインの運営が必要となる。特にオフライン時の運営コストはネット業界出身の会社にはその概念を理解するのが難しい。実際の運営にあたり、この負担はどの程度のものになるのか?オフラインの経営資源配分を例に取れば、自転車の投入量が増加すればオフライン業務への資源もそれに合わせて増加させなければならない事がわかった。シェアバイク運営会社の社員数ではその要求を満たすことはできず、一般的には外部委託の運送会社を起用することになる。

運送会社に近い業界人からの情報によれば、「シェアバイクの需要は非常に大きく、規模の経済も働くのでその配送料は比較的安くなる。しかしそれにしても一台の配送料には3元程度はかかる」
シェアバイクの日々の配置換えとその頻度、例えば朝晩通勤時の需要の偏在に対応するための配置換え等を考慮すると、そのコストは膨大なものになる。厄介なことは、自転車の配置を理想的なものにしようとすればするほど、それにかかるコストはより高いものになってしまうということなのだ。配置換えをすることでの自転車の利用料の増分が、果たして配置換え費用を賄えきれているかどうか、簡単には結論付ける事はできない。

それに加え、「科学的運用」のため普及が進むスマートロックもコスト増大圧力となっている。サプライチェーンの関係者によれば、現在のシェアバイクコストは300元から500元だが、スマートロックをつけることでコストは1000元近くまで上昇するという。現在Mobike
は全車にスマートロックとGPSを装備しており、ofoのスマートロック版は未だ限定的な試験状態だが、ofoの責任者は遅くとも今年の後半にはスマートロック版を大規模に展開すると言っている。
このコストはまた投資回収の期間を長くさせることになる。仮にスマートロック版自転車のコストが従来版の倍だと計算して、一年の投資回収期間は二年に、更に故障率で50%伸びるからコスト回収にはちょうど三年かかるということになる。
強調しておきたいことは、現時点では数値データが不足しているためこの計算は完全に科学的にではないが、大まかにいって利用料収益の他にシェアバイクが直面している運営経費の圧力はかなり重たい物があるといえよう。

加えて、その解決策がうまくいかない場合は利益増大が望めないことは言うまでもない。
シェアバイク運営会社とてもちろん黙ってみているわけではない。公共自転車企業の幹部が匿名を条件に語ったところによれば、シェアバイク運営会社はすでに公共自転車運営会社との協力関係を模索しているという。公共自転車というビジネスはすでに時代遅れとなっているが、彼らの長年の運営経験はシェアバイクビジネスに比べ豊富なものがある。
しかし、この種の協力関係はシェアバイク運営会社にとってある程度の助けにはなるが、正確な予測が難しいことには変わりはない。

デポジットとPPP(公的,私的資本提携)どちらがシェアバイクの未来となるのか。
儲けることがビジネスの目的でありシェアバイクも例外ではない。
会社の業務という面からみれば使用料がシェアバイクの唯一の収入源であるが、法律の専門家の中にはシェアバイク運営会社の収益原はそれだけではないと見るものもいる。
現在Mobikeとofoのユーザーは1000万人。Mobikeは299元、ofoは99元のデポジットをとっており両社の保有するデポジットは30億元と10億元規模である。当然、この莫大な資金については色々な想像が働いてしまう。
デポジットの返金に関して、テンセントの理解ではofoは即返金。銀行の処理時間にかかわらず最終的に返金払込は数分で完了する。一方Mobikeは随分と異なり、同社の最近の公式見解ではユーザーが返金申請をした後に返金が行われるまでには2−7営業日が必要であるとされている。この返金時間の差は各方面からMobikeのデポジットの取扱いに関する疑念を抱かせている。
中国政法大学知識産権研究センター特約研究員の李俊慧は最近の文章で原則的に銀行の振込はリアルタイムであり、Mobikeはデポジットを自社内で取り込んでいる可能性がある、と指摘した。こうした返金までにタイムラグを設けることにより、一時的にMobike社内に資金がプールされ同社はそれによる理財活動利益を得ることができる。

関連法規によれば支払われたデポジット及びその保証対象はリース行為で発生したものであり、企業はそれに手を付けてはならない。リース契約を解除した時にデポジットが返還されないと資金の違法専有問題に波及する。
おわかりの通り、もし関係する部門が監督を行わなければシェアバイク運営会社はデポジットから巨額の利益を得ることができ、自転車使用料収入なんて目じゃなくなる。しかし非常にセンシティブな事にとりわけ資金プールの問題は非合法資金集めとして追求される可能性が極めて高く、シェアバイク運営企業はそのリスクを避けるためすでに企業ポリシーで自己規制を行っている。Mobikeは先月末、招商銀行と協同で招商銀行がMobikeのデポジットを厳重に管理するとの声明を出した。Ofoも同様、デポジットは専用の口座で保管されており、投資などには使用できない仕組みになっていると表明している。
加え、政府による監督が徐々に始まっており、デポジット流用による収益獲得モデルは今後ほぼその継続余地がなくなっている。

一方、もう一つのシェアバイク企業にとっての利益獲得方法として、公共自転車と同様なPPPモデル(官民パートナーシップ)に向かうという手がある。この種の方式には色々な関連がある。同済大学の持続可能経済発展管理研究所長の诸大建は、通常は政府がサービスについての計画をするべきであり企業はサービスを提供し、消費者はサービスを受益するという。
こうしたモデルの中で政府は助成を行い、サービス提供者としての企業の利益獲得圧力を緩和する。これは決して荒唐無稽な話ではない。現在Mobike,ofoは経済資本によって運営されているが、シェアバイクに代表されるフリーフロー式は実際政府資本での検討射程距離に入ってきている。北京市房山区の政府が昨年10月10日に発表した情報によれば、房山区の燕山地区においてフリーフロー式シェアバイク類似公共自転車を投入するとしている。Mobikeやofo同様、このフリーフロー式自転車はQRコード読み取りで乗車でき、唯一違う所は白線で区切られた「バーチャル電子柵」の専用駐輪区域内に返却しなければならないことだ。
このプロジェクトに関して房山区政府が購買する自転車は北京途自在物联科技有限公司という企業である事が分かった。その企業のHPでは、スマートフリーフロー式自転車及び専用アプリ、運営用システムを自主開発し、QRコードスキャンで即座に乗車、返却可能、といっている。
これからも分かる通り、この企業はすでにフリーフロー式のシェアバイクに関し包括的な解決法案を政府向けに設計完了している。

房山区政府がこれを受け入れることで、シェアバイクの領域での経済資本と政府資本の融合が始まるかもしれない。陶安平はまた、こうした動きはほかでもすでにはっきり現れているという。「特に4線級以下の都市においては、投資コストの回収が難しい事を考えればインターネット企業はどこも参入に積極的にはなれないが、政府の介入が有るのであればその都市の要求を満たすことができます」
しかし、もし仮にこの方式が一部の地域で実現可能だとしても、まだ多くの地域が残されるし、あるいはそうしたことがMobikeやofoのような企業レベルで実現が可能かどうかは依然相当不確実だ。
しかし利益確保の見通しが困難な利用料モデルに比べ、低リスクなPPPモデルは十分魅力がある。唯一の問題は、このモデルの場合主導権は最初から企業側が掌握することができないということだ。
by @Bassy

駐車場シェアリング

2017年09月10日 | ITS
ETCの駐車場利用で調べていたら、ETC2.0普及促進研究会という任意研究活動団体のサイトを見つけた。主に三菱電機が中心となって進めているグループのようだ。

静岡の駐車場実験を主催しているようで、現在トップページでその情報を見ることが出来る。
しかし、私がそれ以上に興味を持ったのは一般住宅や農家の駐車スペースのシェアリング。

一般住宅で駐車ポートがあるが車を持たない家は多い。また農家には駐車スペースが空いている。(農村で駐車場需要があるケースは限られるだろうが)。これを駐車場として活用するというアイデアはとても面白い。しかしDSRCでの実現は難しそうだ。
研究会の提案は、料金収受や駐車時間管理などを無人で出来るETCポストの設置ということだが、もちろんネックは設置コストだろう。1台分、しかもいつも利用されるわけではない駐車場。月に1−2万円の収入があれば御の字だろうが、設置する機器のコストがそれに見合うだろうか。

コスト的に現実的なのはやはり前回エントリー同様、カメラと画像認識の組み合わせだと思う。
車が枠内に入ったらカメラ画像をサーバーに送り、クラウド側で画像認識とナンバー読み取りを行い、ユーザーのスマホに駐車開始の通知をする。出庫は画像認識で自動的にに処理でも、スマホからの出庫送信と画像の確認でも良い。
このような仕組みであれば駐車場側の設備投資はカメラと通信機器だけでかなり小さくて済む。

駐車場キャッシュレスの可能性とETC2.0

2017年09月10日 | ITS
ETC2.0関連のサイトには、この先ETC2.0で可能になるサービスとして駐車場のノンストップ決済が挙げられている。
しかし、この取組については以下のような障害がある。
まずは、商業施設利用時の料金割引をどう処理するか。精算機等を使わずに完全ノンストップにするためにはETCカードを持ち出し商業施設で精算時に提示し、請求金額を調整してもらう必要がある。技術的には大きな問題はないが、ETCカード持ち出しやシステム導入がネックになるだろう。商業施設側にコストが掛からない方法としてはETCカードの親カードで決済し、カード会社で照合、引き落としから割引くという方法もあるが、果たしてETCカードの親カードが常用支払い方法であるかどうかはわからず消費者にはあまり使い勝手は良くない。
次に、駐車場側の機器導入コスト。具体的な金額はわからないが結構なものだろう。費用対効果が明らかでないと駐車場側は導入しない。一般的にユーザーが駐車場を選ぶ基準は目的地との距離と値段であり、ノンストップ精算だから遠くてもいいと思う人はいない。

こうした状況から簡単には普及しないだろうということはETC側も理解しているようで、ETC2.0限定をやめてETCなら利用できるようにするらしいが、それでも私は実証実験や公共駐車場での利用にとどまると思う。
(なお、私は駐車場のETC利用拡大自体は大賛成。上記の制約がない空港や公共駐車場はどんどん進めてほしい。)

そこでちょっと考えたのが、ナンバー読み取りとスマホ連携でもっとうまい仕組みができないか、ということ。

日本でもナンバー読み取り式駐車場は増えているが、駐車券は発行され精算機で精算(割引処理を含む)、出口はノンストップというパターンが多い。

中国では入り口にチケット発行機がなくナンバー読み取りでバーが開き、出口で有人精算というパターンが多い。割引はチケット提示。

いずれの方式も出入り双方のノンストップは実現できていないが、これをスマホ連動させれば新しい展開があるのではないか。
専用ソフトとそれに連携する駐車場システムを構築する。それには料金収受システムも必要だから統一プラットフォームがある中国ではやりやすい。

ナンバー読み取りでノンストップ(読み取る時間は一旦停止)で入場。ナンバーとスマホの支払いプラットフォーム(中国で言えばアリペイやWeChatペイ)を紐付けて出口では自動精算。
商業施設での利用割引は施設用のソフトを作り、料金精算時にQRコード読み取りなどで一瞬で処理ができる。

これは技術的なハードルは高くないし、駐車場が負担するナンバー読取機はコスト的には大したことはない。
多分中国では近いうちに出て来るんじゃないかな。

【官製プローブ】ETC2.0に意味があるのか

2017年09月08日 | ITS
そもそも13年前にこのブログを始めた理由がETC2.0に対する疑問だった。
当時はそういった名前がなく、単にETCを高速料金収受以外に拡大し、その未来には数兆円のマーケットが有る、という話だったのだが、それに対して絶対にそんなことはないと感じ、始めたのがこのブログなのだ。

で、すでに15年近い月日が流れ、遅々としてすすまなかったETCのその他利用だが、ここにきてETC2.0という名前でゆっくりとでは有るが拡大してきている。しかし、それは単にETC車載器の世代交代によるものであり、消費者が正しくそのメリットを理解して高額なETC2.0を購入しているのかどうかは極めて疑わしい。

ETC2.0は、単に高速料金ノンストップ収受にとどまらず以下を実現すると言っている。
a.渋滞情報と最適ルート案内
b.高速道路以外での利用(駐車場、GS、ドライブスルー等)
c.安全運転支援(この先の渋滞、落下物注意等)
d.経路情報サービス(渋滞迂回ルート通行車への割引など)

これらをセールストークにしてETC2.0車載器は販売されており、消費者も漠然とした理解で購入しているという感じなのだが、実際にはこのa~dのメリットなんか殆ど無い。
aの渋滞と最適ルートについては民間の通信型ナビがあるし、スマホのGoogleマップでも用が足りる。というか、ポストを通過しないと受信しないETC2.0よりも常時アップデートされる携帯通信利用に分があるのは言うまでもない。
bはもう13年前からずっとやろうとして実現しない。まだ諦めずに公共駐車場でやろうとしているが、多分民間には拡大しない。
cに関して、事故防止に実効があったという話は一切聞こえてこない。ETC2.0はポストを通過しないと受信しない。路側電光掲示板をナビ画面に表示するような話。
dは実際に行われているが、これは単なるETC2.0を普及させたいがためのETC2.0優遇策。

このようにあまり意味がないとしか言いようがないETC2.0に関し、なぜ官は予算を使い優遇割引をしてまで普及を進めるのか?

今となっては、その理由は自前のプローブデータ収集という一点しかない。(15年前にはそんなこと全く言っていなかったが)
プローブデータ(wikiへのリンク)=実際に走行している車両の位置情報。これを元にデータ解析を行い交通情報を作成する。
国が自前のプローブ情報を収集したい、ということであれば、わざわざ高い2.0車載器を購入し走行データを無料で提供するユーザーに対して料金優遇をするということは理にかなっている。但しそれを正しく理解している消費者はほとんどいない。

最近のETC2.0に関するニュースで、鎌倉市内の観光渋滞改善のためにETC2.0の走行データを分析するとか、外国人のレンタカー事故防止のためにETC2.0の情報から危険箇所を割り出す、ということが言われている。
結構なことだが、まず第一にETC2.0が渋滞や事故を防止するといっているのではない。交通規制のための情報分析としてプローブデータを活用する、というだけこと。そして、これがもっと重要な事だが、そんなのは民間が先行している携帯通信利用のプローブ情報を購入すればいいだけの話ではないか、ということ。すでにトヨタ、日産、本田、パイオニア、Google等がその仕組を持っている。

民間から買ったほうが早いし安い。そこまでして官としてプローブ情報を自前で持ちたい理由があるのだろうか?
ポストを設置しそこを通過しなければ情報授受ができないETC2.0と携帯通信のどちらが理にかなっているかは自明だろう。

現在はプライバシーの問題からETC2.0の位置情報と車両は紐つけされていないが、将来的には国家セキュリティとして活用したいのか?
それとも単に、ここまでやってきたから撤退できない、ということなのか?

路側ポストに掛けた250億円は無駄なお金だったが、この先更に活用する意味はない。これはサンクコストと割り切ってきっぱり諦め、この先の投資はやめるべきだと思う。

EV化で自動車メーカーは消滅するのか?

2017年08月25日 | ITS
今更ながらEVについて。(一部過去記事と内容重複します)

ドイツのメルケル首相は、英国、フランスに続き将来のガソリン、ディーゼルエンジン自動車の廃止を示唆した。
ご承知の通りドイツは日本と並ぶ自動車生産国。内燃機関のパワーで他メーカーを凌駕してきたプレミアムブランドをもつドイツのトップのこの発言はかなりのインパクトがある。モーターの効率についてはもはやこれ以上の改善は望めないが、電池コスト・性能や充電等の技術革新の余地はまだありいずれ航続距離・コスト面から実用に十分耐えうるEVが出てくることは間違いない。もう舵はきられた、と見るべきだろう。

すべての車両のEV化には化石燃料燃焼量抑制と十分な電力供給の観点から原子力発電が必須であるという議論がある。これには色々な分析が有るが、再生可能エネルギーに限界がありまた原発の新設や再稼働が非常に難しい我が国では今後課題となるだろう。直感的には日本の全自動車がEVに置き換わるためには発電に関する考え方を変える必要があると思う。

一方で、EV化によりカーメーカーは消滅するという類の記事が未だに散見される。
その根拠は難しい設計生産及び制御技術が必要な内燃機関やトランスミッションから単純なモーターに置き換わるからモジュールを購入できれば後は組み立て工場があればいい、したがってカーメーカー以外でも車を作ることができる、という内容だ。
しかし、それは車という製品のほんの一部しか見ていない。操縦安定製、静粛性、走行フィーリング、乗り心地、ブレーキ制御、衝突安全性といった部分に自動車メーカーは相当な年月を費やして改善してきた。そしてそれらはモノコックボディ設計の時点から綿密に考慮されている。これはモジュール組み立て工場には真似ができない。長い経験の蓄積が必要だからだ。これは家電とはレベルが違う。
実際Googleは自社生産を諦めた。新興のテスラは自動車エンジニアの引き抜きで時間を買った自動車メーカーであり、単なる組み立て工場ではない。
したがっていくらEVになったところで、自動車メーカーが消滅するという考え方には同意できない。本当にそうなるのであればドイツは猛反対するはずで、ドイツの自動車産業はEV化にも自信があるということだろう。

しかし、EV化だけではなく自動運転、ひいてはシェアリングとなると話はまったく変わってくる。
自動運転車には操縦安定性、走行フィーリング、衝突安全性等の先に述べた自動車メーカーが蓄積してきたノウハウが不要になる。
なぜかと言えば、自動運転車は最高速度をまもり、カーブでは十分減速し、安全余地をもってブレーキをかける。また人間が運転しないから走行フィーリングとか乗り味も無縁だ。自動車メーカーは速度超過時の急なレーンチェンジとか、オーバースピードでカーブに侵入したときの挙動なども研究し最善のセッティングをしているが、こうしたノウハウは全く不要となる。
さらにアクセルを踏んだときの加速のリニア感とか、ハンドルを切ったときの運転者の意思と車の挙動とかを運転者が評価しなくなる、ということだ。また、自動運転車は原則として衝突しない。衝突安全への研究も無意味になる。

さらにシェアリングが進めば、ユーザーの車に対する愛着はなくなる。停めたタクシーの車種なんかだれも気にしない、ということだ。

以上の状況から、異業種の参入は容易となりかつユーザーはブランドに無頓着になるわけで、生産メーカーはコスト競争力が有る中国の大手になるかもしれないし、あるいは日立やシーメンスという運送機器メーカーになるかもしれない。勿論上位数社のカーメーカーは生き残るだろうが、強烈なコスト競争に巻き込まれるため大手は相当な危機感をもっている。
シェアリング中心となると、そのオペレーターが車種選定権を持つようになる。端的な例で言えば、中国で何百万台も投入されたシェアリング自転車のメーカーはオペレーターであるMobikeやofoによって決められている。

カーメーカーが有利に試合を進める唯一の方法は自らがオペレーターになることであり、最近ドイツメーカーやトヨタがシェアリングに乗り出している理由はそこにあるのだ。

コネクテッドカーの現状と将来

2017年08月11日 | ITS
コネクテッド・カー、以前はテレマティクスと呼ばれていたものだが、要は車+通信のこと。テレマティクスとコネクテッドカーの間に何らか定義上の違いがあるのかは私もよくわからない。

テレマティクスに関してはかなり以前に「車業界最大のバブルになる」と書いた。実際は弾けるほどビジネスは膨らまなかったからバブルとは言えないが、当時の期待感まで含めて言えばそれは正しかったと思う。多くの業界関係者が誰しも車と通信が結びつけば今までに想像もできなかったビジネスが生まれるといっていたし、それは規定路線だと言っていた。ビジネスとしての期待の大きさもITSの「11兆円」のなかの重要な位置を占めていた。

しかし、結局トヨタ(G-Book)、日産(Carwings)が力を入れたテレマティクスは結局プロフィットモデルを描くことはできなかった。
その理由としては、当時のテレマティクスができることが車内でのインフォテイメント中心であり、それは言うほど需要がなく、さらに時代と共に同乗者の携帯端末が簡単にそれに取って代わってしまったことなどから、会費を払う価値をユーザーが見いだせなかったということだ。
テレマティクスが登場してからもう10年以上が経過し、多くの叡智がその普及に取り組んできたが未だに誰もが想像もできなかった新ビジネスが現れないということは、そもそもそんなものはなかったのだ、と考えるべきだろう。

しかしそのバブルは弾けず、コネクテッド・カーと名前が変わった。ではなにが変わったのか?

楽観的な人は未だに車内インフォテイメントをいうが、実際にはもっとビジネス寄りにしかその需要はない。
確実にニーズが有るのはカーシェアリング。これは車の地位情報を常時アップロードしないと成立しないし、施錠解錠管理も通信が必要。
将来的には民泊のように個人の車を他人に貸すというエンドユーザー向けアプリケーションも考えられるが(実際に海外では存在する)、当面はBtoBの話だろう。

エンドユーザー向けに最も現実味のある話は、走行状況を保険会社に提示し、使用状況と運転の安全性評価から割引を得るということ。
これはありうる話で、テレマティクスのころからずっと言われているが今のところまだ顕在化していない。
その他、車両の状態をモニターすることによるアフターセールスビジネスチャンスとか、盗難セキュリティ関連とか細かいことは色々あるが結局キラーとなるような大きなものは今まで出現しなかったし、その状況に変化はない。

コネクテッドカーと自動運転を結びつける考え方もある。というか、おそらく自動運転車両はいずれにしてもコネクテッドでないとならない。
自動運転車は無人でも移動しないと意味がない。自分で車庫に入る、車庫から出て来る。そのためには絶対に通信機器が搭載されていないとならない。
また、自動運転車には高精度地図情報が必要だが、それは常に最新状態でなければならないことからアップデートに通信は必要となる。

しかし、それ以上にエンドユーザーにとって車+通信の意味はない。運転から開放されるのだからビジネスチャンスが拡大するという見方はあまりに楽観的だ。簡単に言えば、運転から開放されれば人は皆スマホをいじるだろう。

車がコネクテッドになるのは自動運転をみすえれば規定路線だけど、コネクテッドでエンドユーザー向けビジネスが拡大するとは思えない。これはテレマティクスの頃から基本的に変わっていないと思う。

続 NEXCO中日本、駐車場でのETCカード決済を試行

2017年07月28日 | ITS
昨日の記事に関して、ちょっと調べてわかったこと。
2017年7月27日記事
NEXCO中日本、駐車場でのETCカード決済を試行

ETCの高速道路料金外利用については、2006年から「利用車番号サービス」が開始されている。これは車載器の固有番号(利用車番号)を使って利用情報を事業者に送る仕組みだ。この仕組であれば車載器と事業者の読取機、読取機とデータセンター間は利用車番号だけが送られ、クレカの決済情報は通信されないのでセキュリティは万全。データセンターで支払い情報とマッチングさせる。

しかし、いちいち登録しなくてはいけない、また車載器を手放した際に解約をわすれると他人に使われる、というようなデメリットが有り、ほとんど普及していない。

今回の駐車場ETCカード決済は、データセンターまでETCカードの決済情報をそのまま流す。そのままと言ってももちろん暗号化されいて、きっちりセキュリティが確保されたデータセンターで解読し決済につなぐことになる。事業者の読取機ではデータ解読は勿論、蓄積もせずスルーするだけにしてセキュリティを確保するようだ。

これを聞いて思ったのは、なんで最初からそうしなかったのか?ということ。
その説明として以下の文章がITS-TEA(旧ORSE)のサイトにあった。

「ETC開始当時と比べ、インターネットを始めとしたICT技術の進展によって、ネットワークの通信速度やシステムの処理能力及び自由度は大幅に向上しており、高速で大容量のネットワークが広範囲な地域で安価に利用できるようになってきた」

本当だろうか?少なくとも利用車番号サービスの2006年時点ならネットのスピード、容量は十分だったろうし、システム処理能力も十分だったと思う。144モデムでネットをやってた時代のことを言っているのか??

2006年当時に利用車番号を使ったのは過剰なセキュリティ対策だったんだろう。
それに無理があり普及しなかったからカード情報を通信に乗せることにした、というだけのことに思える。

やっぱり最初からそうしておけばよかったという感想しかでてこない。

しかし、それでもこれが普及するとは思えない。
事前登録もなく利用できるので利用者側には制約がなくなったが、はたしてどれほどの事業者が設備投資するだろうか?

余談だが、ETC2.0の説明にいろいろな場面で決済に使える、というのがあるが、このサービスはETC2.0である必要はない。

NEXCO中日本、駐車場でのETCカード決済を試行

2017年07月27日 | ITS
NEXCO中日本WEBページ
駐車場におけるETCカード決済のモニター募集

かなり昔から、このブログではETCの高速道路外利用(駐車場、ドライブスルー、ガソリンスタンド等)には無理があると言い続けてきた。
その中で、唯一可能性があるのは駐車場だが、それも課題があると言ってきた。

駐車場にノンストップで出入りできカードで決済されるなら私も使う。利用者側に障害はない。
課題は設備業者側にあると考えている。
まず、その設備投資。これを備えたから収益が上がる保証はない。駐車場は立地で選ぶもので、料金支払い方法で選ぶものではない。一方で100%ETC決済になるまでは係員をなくすわけにも行かず、コスト低減にもならない。
次に、商業施設との提携割引処理。利用割引をするためにはETCカードを抜き取って精算時に処理をする必要がある。またそのネットワークにも費用がかかる。専用事前精算機を作る方法もあるが、ノンストップでなくなる。

しかし、ETC2.0普及促進研究会という企業研究会が未だに諦めずに高速道路外利用を進めているようだ。

ETC2.0普及促進研究会という名前だが、今回の実験は通常ETCも対象。なぜならすでに10年前から「利用車番号サービス」(者ではない)という仕組みが出来上がっていて、ETC車載器の固有番号とクレカの紐付け、決済を可能にしてETCの商業利用を促進しようとしていたからだ。
7月27日追記:レスポンスによれば、今回の実験は利用者番号を使わず、ETCカードのクレカ情報を直接読み込むとのこと。
しかし、このサービスに乗り出す企業はなく、事実上お蔵入りになっていた。
ETC2.0でなくてはできないサービスではないのだ。

ETCの駐車場利用はかつて三菱商事系のITS事業企画(IBA)という会社が手がけていたが、会社は消滅(タイムズの一部として引き継がれている)、事業もフェリーのチェックインと箱根ターンパイク料金収受程度しか残っていない。

IBAの駐車場事業がなぜうまく行かなかったかきちんと分析できているのだろうか?今回の実験は運用面だけのように見えるが、果たしてビジネスの将来性に関する目処はついているのだろうか?

自動運転とカーシェアリング

2017年07月15日 | ITS
今までのエントリーで、将来完全自動運転の世界になったらだれも自分で車を保有しなくなるだろうと書いた。

しかし、これには解決しなければならない問題がある。
朝晩の通勤や週末の行楽はトラフィックが一方通行になる。このピーク対応が可能な台数をカーシェアが確保できるのか、もしくは確保してビジネス的に割に合うのか、ということ。オフピークでは相当数の車両が稼働しないことになる。特に大半の人が車で通勤、通学する北米ではそれが顕著になるだろう。

しかし、全てが個人所有の場合に比べれば車の稼働率は(地域差は有るにせよ)間違いなく高くなる。
保有を放棄するか否かについては、通勤時に車を呼んでもなかなか来ないというような状況ではもちろん無理がある。すべての需要を満足した上で個人所有とシェアの負担費用差がどの程度になるのか、ということがポイントになるだろう。
それに加え、もう一つ考えられる要素はたとえ個人所有であっても使わないときはシェアリングに貸し出せる、ということ。オーナーには何ら手間がかからないので広く普及する可能性がある。これで車両保有費用のいくらかを回収できるのであれば、個人所有は無くならないかもしれない。

おそらく通勤通学に関してはライドシェアがなければ対応できない。
車両にある程度のプライバシーを確保できる工夫を行う必要があるが、ビッグデータ管理で最適な同乗者、経路が選択されることで途中の寄り道についてはさほどストレスない運用ができるのではないかと思う。通勤用ライドシェア専用車両もでてくるかもしれない、

いずれにしてもこうした世界の実現には相当の年月が必要。テクノロジー的にはもう実現可能だが、社会インフラが変わるのには時間がかかる。私が目にすることはない未来だろう。

官民 ITS 構想・ロードマップ 2017 消えたETC2.0

2017年07月05日 | ITS
5月末、国交省は官民 ITS 構想・ロードマップ 2017を公表した。かなりボリュームのあるPDF。

ITSと銘うっているものの、サブタイトルも「多様な高度自動運転システムの社会実装に向けて」となっており現時点における国の自動運転に関する考え方が書いてある書類だと思えばいい。
以前に宣言した「2020年までに世界一安全な道路交通社会を構築」という旗印はおろしていないものの、当時のITS政策の目玉であったETC2.0による安全運転支援はほぼ影も形もなくなっている。ETC2.0はこのロードマップにも(この膨大な資料中)数か所登場するが、あくまで交通関連データ収集方法の一つとしての位置づけでしかない。

交通関連データとは、車から位置、挙動情報を収集しビッグデータとして処理を行うことで事故防止、渋滞緩和、自動運転支援につなげることだが、道路上に高額なポストを設置し、そこを通過したときしかデータのやり取りができないETC2.0と移動体通信でリアルタイムにデータのやり取りができる民間のシステムを比較すれば、どちらが優れているかなんて考えるまでもない。

しかしロードマップでは「ETC2.0の普及促進」は依然として謳われており、釈然としないものがある。推進している部署への配慮なのかもしれないが、もう税金の無駄使いでしかないのだから本当にやめたらどうかと思う。

自動運転に関しては、このロードマップの立ち位置はなかなか微妙なものがある。
自動運転は精密3Dマップと自動車に装備された各種センサー、制御機器が中心となり、インフラに頼る部分は実はあまり多くない。ロードマップでもその辺はわかっているようで、多くはカーメーカーを始めとする民間に委ねられ官はそれを補助していくような記載になっている。それはそれで正しい方向だと私は思う。官は自動運転過渡期に必要となる専用レーンとか、センサー判定がしやすいような車線、交差点表示などでのインフラ整備とそれに加えて法整備で協力していくべきだろう。

いずれにしてもETC2.0による安全運転支援は完全に国のロードマップから消滅した。
これはこのブログで10年以上前からそんなものに実効はないと散々指摘してきたことだが、首都高速道路でインチキ実証実験をやったり、なりふり構わず250億円の税金をつかって高速道路にポストを設置した責任は結局誰も取らないのだろうか。

自動運転 カーメーカーの生き残り戦略

2017年06月25日 | ITS
以前のエントリーで、この先完全自動運転が実現する世界では自動車メーカーのビジネスは大変革を余儀なくされると書いた。簡単にポイントだけ繰り返すと以下の通り。
・完全自動運転の世界では車は呼べば来る、降りれば勝手にいなくなる。
・そうなると車の所有に意味はなくなる。
・全部がカーシェアになると、ブランド選択権はカーシェア業者のものとなる。
・ユーザーが自分で選ばない(タクシーの車種を気にしないと同じ)になれば、カーメーカーはブランドによる差別化ができず価格勝負となる。
・カーメーカーの重要な収益源であるアフターセールスがそっくり消滅する。

こうした状況に対して欧米、特にドイツのカーメーカーは相当な危機感をもって取り組んでいる。自動運転に対して、ここまで将来の状況を想定しているのだ。一方、日本のカーメーカーはどうか?ここまでの危機感は感じられない。

来るべき自動運転に対して、カーメーカーが出来ることは二つ。

一つは車載のハードウェアで圧倒的に優位にたつこと。これはグーグル等のIT系にはできない。
車載ハードウェアでの自動運転は、精密3D地図データとレーダーやカメラ等のセンサー技術による自動運転。もちろんこれらに通信やインフラを組み合わせていくわけだが、インフラ協調による自動運転はカーメーカー主導ではなく行政主導になる。カーメーカーはその辺をよく理解していてあくまでメインは個々の車両に装備されたデバイスによる自動運転を徹底的に進めている。そして、来るべき完全自動運転時に最善の選択肢となる車両を提供出来るように準備を進めている。

もう一つは、カーシェア業者になること。自動運転の中央制御オペレーションとカーシェアのシステム全般をカーメーカーサイドで運営できれば、車種選択権を他人に渡さずに済む。ダイムラーが早い時点でCAR2GOのフリーフローカーシェアを始めたことや、カーメーカーがUBER等との提携を模索するのもこの辺の事情だ。

さて、では日本の政府とカーメーカーはどう考えているのだろうか?
上記の通り、自動運転とシェアリングは切っても切り離せないが、残念ながらシェアリングに関して日本は後進国になりつつある。中国ではシェア自転車が大流行し、先日国家戦略としてシェアリングビジネス推進ガイドライン策定を発表した。
一方で日本はといえば、ITSは未だにETC2.0。この時代、路側にポストを設置して通過車両から情報をやり取りするなんてアイデアには全く将来性がない。

カーメーカーにしても、本気で将来的にシェアリングビジネスや自動運転オペレーターになろうという動きは今のところ見えてこない。センサー技術による自律型自動運転車の開発は進めているし、各社シリコンバレーに事務所を設けてIT系との連携も気にしているようだが、私には欧米、特にドイツメーカーほど大きな絵をトップマネジメントが描けているとは思えない。

「ETC2.0」、何ができる? 乗り物ニュースの今更な記事

2017年06月05日 | ITS
乗り物ニュースに今更感のあるETC2.0関連記事が乗っている。
「ETC2.0」、何ができる?導入には数万円、料金支払だけでないメリットは?
ETC2.0自体新しいものではなく乗り物ニュースとしてこの時点で取り上げる意味があるとは思えないから、これはITS-TEA(旧ORSE)による広告出稿的なものだとみるべきだろう。

しかし、記載されている内容には問題が多い。
まず「駐車場や、飲食店のドライブスルー、ガソリンスタンドなどでの料金を、「ETC2.0」で決済できるサービスなども登場すると、国土交通省ウェブサイトで公表されています。」という部分。ウェブサイトで公表されています、という書き方に若干の良心があるのかもしれないが、これは絶対に無理。というか、すでにIBAという会社が手を出して失敗している。
私はこのブログを始めた2004年頃からドライブスルーもガソリンスタンドも駐車場もうまくいくはずがないと繰り返し書いてきた。そして10年以上が経過し、実際に何も起きていない。

そして、さらに問題なのがこの部分。
「VICSセンター(道路交通情報通信システムセンター)によると、「2022年4月以降、高速道路上では『ETC2.0』非対応のカーナビでは、VICSによる渋滞情報が表示されなくなる」といいます。」
これを読むと誰だって、近い将来2.0でないと渋滞情報がナビに出なくなる、と思う。しかし、これはビーコンをつかったVICSが廃止になるということ。実際ビーコンをつけている人はナビ装着車の10%程度で、ほとんどの人は関係ない。
通常VICSと呼ばれているFM音声多重VICSは今まで通り運用される。というか、VICSワイドになり今までより情報量が増える。

さらに、これは問題というよりも呆れてしまったのだが、ETC2.0の圏央道割引に関する国交省高速道路課のこのコメント
「都心を避けた圏央道への迂回を政策として促進していることと、『ETC2.0』の普及促進というふたつの観点から実施しています。」
普及促進のために割り引いている、と明言している。しかし、「なぜ役所はETC2.0を普及促進しなくてはいけないのか」の説明がない。これは国が走行データを取りたいからなのだろうが、それが明確に説明されていない。

民間の持っている走行データは移動体通信で収集する。高額な費用がかかるポストを設置する必要があり、さらにそこを通過しないと受送信できない仕組みとどちらが優れているかなんて考えるまでもない。
本当に、もうやめたらどうか。

中国での免許取得と運転事情

2017年05月31日 | ITS
2週間前に中国運転免許の試験に合格し、以降自動車通勤をしている。
昨日(中国の祝日「端午節」)は100キロほど高速道路をつかって遠出した。
中国で免許を取って運転する人は多くないと思うが、ここまでの経緯や感想を記しておく。

前職のカーメーカーはアジア各国での運転を禁止していた。日本企業の駐在員の場合、多くはそうしたルールになっていると思うし、またそうでなくても交通事故の多い中国で自分で運転するという人は多くないと思う。

3月から中国ローカル企業に就職し、広東省佛山市順徳という地方都市で暮らしている。自宅から会社までは7-8キロ。今までは会社のドライバーさんに送迎してもらっていたが、帰り道にゴルフ練習や買い物にふらっと行きたい、休日に出かけたいと思い、自分で運転することにさせてもらった。

まず、免許取得だが、これは結構大変だった。日本の免許があれば実技は免除、筆記だけ。筆記も日本語で受験できる。
しかし、試験を受けるまでの前段階が大変。外国人の多い都市は比較的便宜が図られているようだが、ここでの手続きは面倒だった。
まず、役所もしくは役所指定の写真館で写真撮影。次に漢字表記しか無い日本の免許とアルファベット表記しか無いパスポートの同一証明を役所で作ってもらう。これは中国人の証人と宣誓書が必要。それから役所指定の病院で身体検査(とはいっても視力関係だけ)。
以上の手続きは、上海や深センなどではもう少し簡略化されているようだ。

これらを揃えて免許試験場で申請。受理されると試験日が確定。
試験勉強は日本語のテキストをネットで探す。有料でダウンロードできる民間サイトがある。しかし教本ではなく問題集なので、理由はわからないが答えを暗記する、という非常に気持ち悪い勉強をすることになる。

そして実際の試験だが、テキストになかった問題や、テキストと訳文が違う問題がでて戸惑った。日本語を選択すると日本語しか出ない。翻訳が変でも中文を確認することができない。
「安全に気をつけて運転する」的な間違いようがない問題だけで80点は取れるが、合格ラインは90点。なんとか合格できた。

実際の運転だが、このあたりは信号のある交差点は矢印信号で運転しやすい。しかし田舎なので信号のない交差点も多く、それは気を使う。
運転マナーは日欧米よりは悪いが想像していたよりは良く、危険な場面にはあまり出くわさない。また、運転が未熟な初心者の割合が多いように感じる。
ただし狭い交差点などで渋滞すると頭の突っ込みあいになり、ここで紳士的にしてるといつまでたっても進めないと言うのはある。また、危ないと感じたら躊躇せずにクラクションをならした方がいい。それを前提に後ろを気にしないで走っている自転車、バイクも多い。

中国は監視カメラがいたるところに有り、信号無視は一年に二回やると免許停止なので信号や速度はよく守られている。
高速道路もまあ運転し易い。入り口で厚いカード状のチケットをもらい、それで有人窓口で精算。通行料は1キロあたり日本円で10円程度。
車線によって最高速度が違うのが日本と違う。
違うと言えば、交差点では左折(日本で言う右折)が対向の右折(日本で言う左折)に優先する。左折車が結構突っ込んでくるので気をつける必要がある。

こちらで運転するといったら知人友人から正気か、と随分言われたがここらは想像していたよりは交通事情はまともだった。
しかし内陸部にいくとまったく状況は変わり、ちょっと外国人が運転するのは厳しいかもしれない。

高崎玉村スマートIC 「道の駅」に“途中下車”実験

2017年05月20日 | ITS
前々からアナウンスされていた高速道路から道の駅への退出社会実験が5月27日から関越道で始まる。
上毛新聞WEBサイト 高崎玉村スマートIC 「道の駅」に“途中下車”実験
対象はやはりETC2.0搭載車のみ。インターに隣接する道の駅「玉村宿」への立寄り退出、再入場を追加料金無しとする、というのが内容。
記事中に、「車と情報をやりとりできる次世代型の自動料金収受システム「ETC2.0」」と書いてあるけど、ETCはそもそも情報をやり取りできるようにできている。特に2.0でなければこの実験ができないということはない。

途中下車扱いとする条件は「(1)玉村宿に必ず立ち寄る(2)同スマートIC退出後、1時間以内に同スマートICから高速道に乗る」ということになっている。(1)の判定をどうやっているのかが興味深いところだ。道の駅の出入り口にわざわざ費用をかけて路側機を設けるのだろうか。ETC2.0装着車なら一時間以内だけを判定条件にしているのではないかと邪推してしまう。日本にいれば見に行きたいところだ。

言いたいポイントは以下の通り。
-ドライバーの疲労回復のためにSA・PAがない区間を補完するのが目的なら、すべての車両を対象にするべき。非ETC車だって道の駅でクーポン券を発行するなどの方法もある。
-そうした発券・精算処理が煩雑だというならETCに限定してもいいが2.0に限定する理由はない。2.0でなくとも路側機で立ち寄り記録は取れる。
-それ以前に、立ち寄りのエビデンスなんて不要にしてしまったらどうか。一時間ですむその他の用事が玉村ICのそばにある人がそんなにいるとも思えない。そんなのは例外として目をつぶったっていいだろう。だれも文句は言わない。
常設施策にしたらそれを当て込んで配送基地を作る業者も出てくるかもしれないが、今の仕組でもETC2.0を付けて道の駅に一瞬でも立ち寄ればいいのだから、どちらにしても防げない。

ということで、運転者の疲労防止のようなきれいなことを言っているが、この施策の狙いはETC2.0の普及促進策でしか無いことは明白だ。
利用者は馬鹿にされているのだ。

ETCポータルサイトの特設ページが酷い

2017年04月06日 | ITS
ETC総合情報サイト Go!ETCに「セカンドカーにもETC、ちょい乗りがメインのママの車にもETCをつけた理由」という特設ページがあったので見てみたら酷いものだったのでたまらずアップ。

理由その1 パパの車がパンクしちゃった!そんな時のためにママの軽にもETC
理由その2 お友達と郊外アウトレットへ、だからETC
理由その3 軽は燃費がいいから高速で遠くまでいこう。だからETC

これ、一つでも説得力あります?

理由その1は論外として、2と3は軽でもちょい乗りばっかりに使うな、奥さんは旦那のいない隙に遠出しろ、と言っているだけでETCをつける理由じゃないよね。

そして、下の方。今後予定されているサービスに「ドライブスルー」「駐車場」「ガソリンスタンド」のキャッシュレス決済があるけど、いい加減嘘つくのやめろと言いたい。大昔からやると言っていて一つもできていないじゃないか。というか、IBAという会社(三菱商事系)がやったが、ドライブスルー、GSは実現せず、駐車場サービスは幾つか展開したが結局すべて撤退している。
できないことを知りつつ、将来はこんなに便利という嘘で宣伝するのは倫理的にもどうなのか。