ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

ECT2.0 欺瞞の構造

2018年01月19日 | ITS
ETC2.0の不透明さ加減については散々書いてきたが、ETCの販売にしめる2.0の割合も15%程度まで拡大したようだ。
国交省、道路会社のプッシュに加え、メーカーも小売店も高額商品を売りたいだろうからこれは当然のことかもしれない。
しかし、価格差に見合うメリットは殆ど無いにも関わらず半ば騙しのように高額商品が販売されているのはなんとも言えないやるせなさを感じる。

メリットとして宣伝されているものの中で実際消費者にメリットが有るのは高速道路の割引だけだと言っていい。
その割引は「圏央道(茅ヶ崎JCT~海老名JCT、海老名~木更津JCT)、新湘南バイパス(藤沢~茅ヶ崎JCT) 」だけ。ここを使わない人には全くメリットがない。

宣伝文句では「渋滞を回避するために一旦退出して先の入り口から入場する場合にも割引が検討されている」とあるが、いまのところそれはない。
そもそも、この割引は2.0だからできるということではなく、技術的には通常のETCで可能。
事実、昨年の夏に土砂崩れで中央道が通行止めになった時、すべてのETCに対して瑞浪ICと恵那IC間で同様なことが行われた。

それは実はそれは圏央道でも同じことで、通常ETCでも技術的には割引ができる。2.0ならそれができるのではなく、2.0にその割引を限定しているだけなのだ。
圏央道への誘導で首都圏の渋滞を緩和することが目的であれば、すべてのETCを対象にするべきだろう。
ETC2.0に限定する理由は高い2.0を販売するためでしかない。

そもそもETC2.0はITS(高度交通システム)として事故防止とか、高速道路以外での決済(駐車場、ガソリンスタンド、ドライブスルー等)という高い目標があり、それに向けて官民で普及を進めてきた。
しかし、事故防止は殆ど実効がなく、高速道路以外での決済利用も全く進展がない。したがって消費者にとっては高いだけのものになってしまい、そんなものが売れるわけがない。
官としてもメーカーに製品を作らせた以上はその責任を取る必要がある。それがETC2.0に限定した高速道路割引や道の駅への一時無料退出施策なのだ。

なぜそこまでして2.0を普及させなくてはいけないのか?
これは実は私にもよくわからない。
ひとつにはETC2.0から走行データを取得し、それを渋滞回避や交通行政に活用しようというものがある。
しかし、走行データは民間にすでにありそれの活用のほうが早いし、さらに何か具体的にこれの活用が始まった、もしくは将来なにを良くするか、ということは公表されていない。
おそらくはメーカーを巻き込んでここまで来た以上はやめられない、ということなのではないかと思う。

一番の問題点は通常のETCよりも一万円以上高い金額を支払う消費者のことがまったく考えられていないということだ。
それどころか、メリットを誇張して売りつけているようにすら見える。

ETC装着。ETC2.0のこと、セットアップ料のこと。

2018年01月03日 | ITS
留守宅には義兄からもらったB15サニーがある。もう絵にかいたようなどうでもいい車。
とはいえ、ETCくらいはつけないとと思い一時帰国中に手配した。

ネットで、車検証と免許証の画像を送付すればセットアップして届けてくれる通販業者がある。
パナソニックの一番安いタイプで5000円強なのでそれにした。料金所を通過できれば何でもいい。
このブログでETC2.0をさんざんこき下ろしている以上、自分でも装着しレポートするのが本来なのだろうが、2.0は2万円強。圏央道を走ることもないのでやめておいた。

でも、実際のディーラーやカーショップの販売現場では様々なセールストークで2.0が販売されているのだろう。
メーカーとしても単価の高い2.0に商品ラインナップをシフトしているようで、最近は2.0のほうが多くなった。
しかしはっきり言って価格差のメリットはない。おそらくセールストークは将来の渋滞回避経路割引などを謳っているのだろうが今のところその価格差にみあうメリットがあるかはわからない。
また、その割引は2.0でなくともできるはずで、今後そうした割引が2.0だけに行われるとしたら「本末転倒」なのだ。

ということで、どれだけの人が本当のメリットを理解して2.0を装着しているのか。この状況は4Kテレビにちょっと似ている。
我が留守宅は55インチの非4Kテレビだけど、画面に不満なんて1ミリも感じない。でも、売り場で「大画面になると4Kでないとダメ」と販売員に言われれば、普通の人はそんなものかと思うし、10万以上の買い物であればあと数万円の差ならいいほうを買おうと思うだろう。
結果、いらないものを買わされているのだ。

ETCに戻る。

ETC本体は5000円強で買った。電装品の装着は自分でできる。しかし、セットアップ手数料3000円弱がどうしてもかかる。
この手数料くらいお客を馬鹿にしているものはない。

ETCは道路会社にお金を払う機械だ。その機械をユーザーが自分でお金を出して買うこと自体すでに間違ってると思うのだが、さらにそれが使えるように登録するための手数料をユーザーからとるってどういうこと?
例えば交通カード。スイカはカード代を負担しなけりゃならないってのはわかるけど、使用にあたってカードを登録するから手数料払えと言われたら怒るよね。

ETCはセットアップを代理店がやっているから手数料がかかるのだ、というのだろうが、そんなのは道路会社が負担するのが筋だろう。
今は知らないが、最初のころはセットアップは専用回線、専用端末でだったらしいけど、そんなのいまならネットでやれば経費なんて掛からない。
この手数料は本当に理解できない。代理店の利益の一部になってるからやめられない、という事情も透けて見えるけど、これははっきり言って一刻も早く廃止するべきだと思う。

2018年を迎えて

2018年01月01日 | ITS
新年明けましておめでとうございます。
昨年は日本企業を定年退職し広東省仏山の中国ローカル企業へ単身赴任という、この年になって初めての大きな生活の変化があった年となりました。仏山での生活は特に問題なく、また会社の仕事も日本の大企業と比べればいい加減であることは間違いないものの、無意味な会議や報告書が業務の大半を占めていた日本企業よりはストレスは少ないと感じています。

さて、本ブログ本題のITS系ですが、2017年は圏央道の割引、道の駅への一時退出割引などETC2.0の各種優遇策が始まりました。
また、ETC2.0車載機のバリエーションが拡大し、価格も有る程度安くなったことから装着率も上がってきているようです。

しかし、これはユーザーニーズというよりは無理やりETC2.0だけに特典を付与し、あたかも便利であるかのような宣伝を行って拡大をしているだけで、実際にはETC2.0のメリットは圏央道をよく使う人以外にはほとんどないといってもいいでしょう。
この状況は2018年も変わらないと思います。おそらく2.0車載機の装着率はユーザー満足度不在のまま上がっていくでしょう。

2017年は中国のシェアバイクが話題になりました。
このブログでは2016年から何回かレポートしていましたが、これほど日本でも話題になるとは思いませんでした。
そして、昨年「中国すごい」とやや過熱気味に報道されていたシェアバイクも年末には不法投棄問題や後発事業者が軒並み破綻したことなどからやや冷めた見方に変わってきているように感じます。

やっぱりシェアバイクは無理だったんだろう、という論調もありますが、私はそうは見ていません。
問題は中国特有の、企業が「はやりものに群がる」「敵が死ぬまで金をつぎ込む」体質が供給過剰を生み出し、破綻業者がでたり放置が社会問題になったりしただけでありそれが落ち着いて適切な行政指導が行われればこのシェアビジネスは成立します。
これだけ大規模、かつ短期間でビジネスを立ち上げた中国の起業家精神は日本には見られない物です。

しかし、私が気になるのはそうした先進的な取り組みに対してシニカルな見方をする人がとても多いことです。特に中国が相手の場合にそれが顕著です。
例えば中国ではこの数年スマホキャッシュレスが急激に拡大しましたが、それに対しても「中国は偽札が多いからだ」「お札が汚いからだ」「現金を持ち歩くのが危険だからだ」「だから日本では必要ない」という意見を非常に多く見ました。
実際に住んでスマホキャッシュレスを使っている私の感覚では、これらは全く当てはまりません。使う理由は生活すべてを網羅し、特典もあり便利だから。そして事業者側の負担が小さいからです。

それは、10年ほど前にあった日本にはiモードがあるからiPhoneなんていらないとか、もっと極論するとファックスがあるからメールはいらないとか、そんな議論にも思えます。

ポイントは、中国のスマホキャッシュレスプラットフォームは完全に生活全般のエコシステムと一体化しているということです。
日本に存在する数々のキャッシュレスはそこまでの便益を提供していないことが普及しない最大の理由でしょう。
その前では、FelicaのほうがQRコード読み込みより早いとかセキュリティが優れているとかいう議論はまるで意味を持ちません。

中国の急速なIT化ははっきり言って拙速です。
でも、面白そうだからやってみるという起業家精神と、便利そうだから使ってみる、そして多少の不具合には目くじら立てない大陸的消費者がこの急速な変化、発展を生む原動力となっていて、中央政権もそれを後押ししています。

日本はそもそも進んでいるから不要なのだとか、中国のものはいい加減だから日本では通用しないのだという反論はややもすると思考停止にしかなりません。そうやって安心している間に世界はどんどん変わっていきます。

まだ日本の物つくりは世界一だと思っています。でも事つくりではどうなのか?この10年、日本発の新しい事ってなにかあったのか?
アベノミクスで景気が上向いている、というけどどう見てもほとんどが円安による既存商品の輸出為替差益。スマホや家電等、本来得意だった分野で負け続けです。
すくなくとも、「日本はこれでいいのだ」という内向きな考え方は変えていきたいものだと思います。

準天頂衛星みちびきは活用できるのか?

2017年12月20日 | ITS
書きかけで公開してしまったのでその後追記完成させています。

今年10月に4号機の打ち上げが成功した準天頂衛星「みちびき」は来年18年度より本格運用が始まる。
この衛星については漠然と「国産GPS」「GPSの精度が良くなる」程度の認知しかないと思われるが、その実情をみてみると結構問題がある。
詳細は非常に技術的になるし私も専門分野ではないので、簡単に書く。

1.位置情報精度
そもそもGPSからの信号だけでは精密な位置情報は得られない。
複数の衛星との距離を信号到達速度から測定し、位置を割り出すのだが、単純な言い方をすれば衛星と地表にある大気の揺れで誤差が出る。その狂いは時に100m以上になることもある。
この誤差が現在どのくらいあるかを定点で測定し、その値を補正することでより正確な位置情報が得られる。これはかなり以前から行われている。
GPS受信器は衛星からの信号と補正信号の両方を受信し誤差数mレベルの正確な位置を表示する。
補正信号は、古くはFM多重、現在は海上保安庁のビーコンと気象衛星ひまわりから送られている。
みちびきは国内1300ヶ所の測定所で計測したより精度の高い補正情報を衛星から発信することで、その誤差を数cmレベルまで向上することができる。

但し現在の補正による誤差(数メートル)はカーナビレベルでは実用上まったく不都合はない。
カーナビは車両走行軌跡とマップデータをマッチングさせて補正する。

では、一体どのようなアプリケーションに誤差数cmが求められるのか?

一般には自動運転車と言われている。たしかに自動運転車は寸分の狂いもなく交差点を曲がらなければならない。
しかし、実際には自動運転車はGPS位置情報だけでは運行できない。地図、地形データの情報はリアルタイム情報ではない。そこが工事で規制されていたとしてもそれを回避できない。
昨日の情報をたよりに目隠しで道を歩くようなものだ。したがって自動運転車は必ずカメラやレーダーなどのセンサーを必要とする。
それらセンサーが最終判断をするのであれば、GPS位置情報はカーナビ同様概ねの現在位置を把握できれば良い。

2.衛星の補足
ビル街など周りに障害物が多いと衛星の信号は受信できない。みちびきは日本の近くだけを飛ぶので、3基あればどれかがほぼ真上にいてくれるため、そうした場所でも受信できるのが特徴。
しかし現在日本では米国のGPS、ロシアのグロナスを使えるので50基以上の衛星から信号を受信でき、必ずしも準天頂衛星が必要かというと疑問が残る。

3.規格
みちびきが発信する誤差情報は日本及びその周辺でしか受信できない。
しかも、現在のGPS信号とは違う規格の信号で発信されるためGPS機器側で対応していないとその情報は受信できない。
今使っているGPS機器の精度が向上するわけではないのだ。
現在すでにみちびき対応機器が存在するが非常に高価だ。これは普及に伴ってコストダウンできると言っているが、果たして普及するかが問題。まず、日本にしか需要がない。そして最大ボリュームゾーンであるカーナビやスマホに関しては数cmの誤差が求められていない。

強いて言えば繁華街でのスマホ歩行ナビに関して今以上の精度アップが望まれるが、これの誤差情報をわざわざ準天頂衛星から受信する必要があるのか、というのも疑問。スマホは通信機器なんだから。

我が国が自前でGPS衛星を飛ばすことについては必ずしも全否定するつもりはないが、みちびきが売り物にしている機能の有効性については疑問が残る。

引き続き首都高(株)のETCキャンペーンを考える

2017年12月10日 | ITS
昨日のエントリーで首都高(株)のETCキャンペーンについて批判した。
問題点を指摘するだけなら誰でも出来る訳なので、もう少し考察と提案をアップしよう。
非常に専門的な内容になってしまうがご勘弁を。

まず、なにが根本的におかしいかを考える。

すでに首都高速のETC決済比率は普通車で95%程度まで上がってきている。一方軽自動車は85%(ソース:首都高)
この状況で、ETC利用について「一般向け」にPRをする意味は殆どないことは誰にでもわかる。
ただし、ETC2.0の普及はまだこれからで拡大の余地はある。

この状況で、首都高は何がしないのか?ありうる二つの課題をあげよう。
A 利用率を限りなく100%にしたい
B ETC2.0を普及させたい

Aに関しては、ターゲットは使っていない乗用車5%、軽自動車15%のユーザーということになる。
まずは、なぜ使わないかの調査が必要だろうが、想像するに以下の4点だろう。
1.ETC割引額とETC導入費用を比較してメリットが有るほど利用しない
2.通常は高速道路を利用しない地域に在住しているユーザーが東京に出てきている。
3.与信が不十分でETCカードを作れない(なお、パーソナルカードという救済策はある)
4.その他(なんとなく面倒、どこでつければいいかわからない)

現在行われているETCキャンペーンは上記の4のケースにしか効果がない。ETCを付けるほど首都高を使わない人にいくら宣伝をしても全く意味がない。
私は軽自動車の比率が高いことからも、おそらく1番、2番に該当する人が最も多く4の人は決して多くないと思う。

私には首都高のETCキャンペーンは非常に魚の少ない場所に高額な投網(大掛かりなキャンペーン、TVCM等)を投げ入れているようにしか見えないのだ。それも、ゆるキャラ、アイドルといったおよそ似つかわしくなく金のかかる方法で。

Bに関しては、ではなぜ今までETCをつけていない新規ユーザーだけを対象にするのか、という疑問が生じる。
初めて車を買う人を除けば、対象は首都高利用者の5%しかいないのだ。ETC2.0を普及させたいのであればETCからの買い替え優遇策を取る必要がある。

では、首都高は何をすればよかったのか。

前にも書いたとおり、めったに高速道路を使わないユーザーにETCをつけさせるのは熱帯地方でストーブを売るようなもの。
どうしてもと言うなら、一番廉価なETC機器を保証金をとって原価でレンタルし、首都高速はETC専用にしてしまえばいい。
わたしは、最初からそうするべきだったと思っている。配布するETC機器の費用は収受コスト低減と相殺される。

なんとなくつけていないユーザーに対しては、装着することによる金銭的メリットを中心にした広告にすべきだろう。
こうした人達はそもそも興味が無いんだから首都高のWEBサイトなんか観るわけがないし、対象数も多くないからマスメディアを使うなんてアホなことはせず、対象者に確実に届く有人料金所を活用した広告(表示やチラシ配布)にするべきだ。これ以上確実なリーチはない。

ETC2.0を普及させたいのであれば、全く違うアプローチになる。これこそある程度マスをつかってアピールしなければならない。
しかし、なぜ費用をかけて2.0を宣伝するかをユーザーに説明する必要がある。もし補助金をつけてまでやるならなおさらだ。首都高の費用は通行料金から賄われているのだ。
2.0が増えればコスト低減や渋滞減少に効果があることをきっちり説明する必要がある。
(ただし私はETC2.0にそうした効果があるとは思っていない)

いずれにしてもキャラクターやアイドルを使ったキャンペーンはマーケティング的にはほとんど意味がない。そんなことは大手広告代理店ならわかってるはずだが、アイドルやキャラクターはお金が取れるおいしいビジネスだから提案するのだ。要はカモだよ。

首都高(株)ETC2.0くんキャンペーンは意味があるのか

2017年12月08日 | ITS
首都高速(株)のETCそろそろ付けとくキャンペーンについては10月27日のエントリーでご紹介したが、取り付け場所がサンシャインシティに加え埼玉、千葉が追加された。ここに持ち込めば取り付け、セットアップ込10000円で装着可能だからお得だけど、それに対する疑問はリンク先の10月のエントリーを参照ください。
さらにこれに加え、ETC2.0くんのキャラクターパーカー、バッグが当たるプレゼントキャンペーンや、ETC2.0大使の真野恵里菜さんと一緒にPRをする「つけとくETC2.0大使」募集なども実施中。

このETC2.0くんというキャラクターはETC2.0全体のキャラクターではなく、何故か首都高速(株)によるものらしい。ETC総合情報サイトG0 ETCには登場しない。
しかし、ゆるキャラを設定したりアイドルタレントつかってキャンペーンしたり、さらにはLINEスタンプ作ったりする必要があるのか?
これらはどう考えても趣味的な消費財、かつ競合社との競合があるような商品にしか向かないキャンペーンで、ユーザーが利便性のために装着する機器の普及促進にこんなものが必要だとはとても思えない。ETC2.0くんキャラクターグッズなんて、誰がほしいのか?アイドルが宣伝してるから、おぅ、ならETCつけよう!と思う人がいるとは到底思えない。

おそらく首都高(株)は予算がたくさんあって、大手広告代理店に良いようにやられているってことだろうね。

はっきり言う。
公共的サービスを提供している会社なんだからこんな担当の趣味みたいなことに経費をかけるのはやめた方がいいし、経営陣もこのキャンペーンの費用対効果をしっかり監督してもらいたい。

EV(電気自動車)に対する中国の本気度とその理由

2017年12月06日 | ITS
中国は2020年までにEVの充電設備を全土で480万ヶ所まで増設すると発表した。現在は19万ヶ所。
2020年までにということは、あと3年。その費用は2兆円を超えるという。中国は中央政府がやると決めたらなんでもできる国なので、これは本当なのだろう。
ちなみに日本のEV充電設備は通常と急速をあわせて2万ヶ所、アメリカでも6万ヶ所程度。

現在の中国におけるEVの状況は、売れている車の数はそこそこ(全世界のEVの約半分は中国国内向けの中国製)なのだが、その実態は決して芳しくない。
(なお、ここでいうEVとはPHEVを含み、HVを含まない)
中国で最も売れているEVはBYDのPHEVなのだが、実態として殆ど充電はされずガソリン走行が主体となっている。なぜそのようなことが起きているかというと、EVが欲しくて買っているというよりは各種補助政策によるものなのだ。
EV,PHEVは購入補助がある。が、それ以上に大きいのは車両増加規制でナンバープレートの発給を制限している大都市でもEV,PHEVは優先的に廉価でナンバーが貰えるのだ。
おそらくは、お金の問題よりもすぐにナンバーが貰えることのメリットのほうが大きい。

こうした大都市部ではほぼ100%の人がアパートやマンションに住んでおり、住居に隣接したガレージはない。自宅では充電したくてもできないのだ。
中国では実際のところ好きこのんでEVに乗っているユーザーは極めて少ないということができる。

そうした中で政府が充電設備の急激な拡充を行うということは、中国政府が本気でEVを推進しようとしているということにほかならない。
今後は公共的な充電設備拡充にあわせ、多分集合住宅等への充電ポスト義務付け等強引な政策を打ってくると考えられる。
その理由は2つある。

ひとつは大気汚染。ご存知PM2.5の半分近くは車から生成されていると言われており、今後更に車両の台数が増える中国では大気汚染対策としてのEV化はもっともなことだ。

もう一つは、自国の自動車産業の発展。このとても大きな目標のため戦略的に国内充電設備の拡充を行うのだ、と私は見ている。
それはどういうことか?

現在、世の中にある製品でおよそ中国製が先進国に輸出できていない(OEMを含め)ものは飛行機と自動車だけだろう。
自動車に関してはすでに日欧米企業との合弁などからローカルメーカーもかなり学んできており、品質レベルも上がってきているが心臓部であるエンジンを自分で作れない。
ローカルメーカーが自社で設計生産してるエンジンも良く言えば日欧米メーカーのエンジンのリバースエンジニアリング、普通の言い方では真似したものでしかなく、国際競争力はない。

EV化によりこの制約がなくなることで中国自動車メーカーのグローバル化が見えてくる。
まず自国市場で圧倒的な数のEVを普及させれば生産台数で日欧米メーカーを凌駕することができる。これは電池、インバーターと言ったEVの主要部品で非常に大きなコスト競争力を生む。
中国ローカルブランドで日欧米に輸出することは難しいかもしれないが、OEMであれば、あるいはすでに手に入れているボルボ等のブランドであれば輸出国になる事は可能だ。よく言われることだがiPhoneが中国製だからといって嫌がる人はいない。

中国政府がEVに関して大きな勝負に出ようとしている事は間違いない。

ライドシェア 日本の絶望的状況

2017年11月17日 | ITS
先月末から今月頭にかけて久しぶりにアメリカに出張していた。自動車用品業界では有名なラスベガスのSEMAショーに出展者として参加していたのだが、当社も含め中国企業が相当出店している。一方で日系企業は数えるほど。本当に日本はどんどん内向きになっているように感じる。これについては改めて。

ラスベガスではレンタカーを借りず、タクシーで移動した。到着してホテルまでタクシーに乗った所、チップ込みで60ドル。一方でライドシェアのUberやLyftだとせいぜい30ドル。以降、全てライドシェアをつかった。運転手は総じて礼儀正しく、とても気持ちよく使うことができたし領収書はすぐにメールで送られてくる。
上海で生活していたときももっぱらライドシェアの滴滴を使っていた。タクシーと比べて値段は変わらないが、上海では皆滴滴をつかうから流しのタクシーを捕まえるのが非常に難しくなっている、というのがその理由。また滴滴はUberやLyft同様運転手評価があるので、タクシーよりも安全運転だし礼儀正しい。

日本ではご承知の通りライドシェアは白タクとなり、一部地域を覗いて法的に認められていない。
タクシーを拾うのはさほど難しくなく、ドライバーのレベルも高い日本ではライドシェアは不要である、という意見もある。それはある程度同意できる。
しかし、日本でライドシェアが認められないのはニーズがないからというよりは業界の反発に配慮したものだろう。
国交省の見解は二種免許をもたいないドライバーによる客運は安全面の懸念が高いということだが、海外の殆どの地域で問題なく運用されているのに何が心配なのだろう。
確かにUberや滴滴運転手による暴行などが報道されたが、これはごく一部の話だ。

消費者側からのニーズがないのであれば別にそれはそれでいいということだと思うが、ライドシェアは将来の交通イノベーションにとって避けて通れない仕組みだということが気になる。
いずれ車は自動運転になる。自動運転になれば、車は使いたいときに自宅の前まで自分でやってくる。さらに、目的地についたら降りるだけ。駐車場に入れる必要がない。ドライバーの人件費がかからないから現在のタクシーよりもかなり安くなる。この状況であれば殆どの人は自分の車をもたずライドシェアを使うことになるだろう。
ライドシェアのプラットフォームは、単なるタクシーの代替という以上の意味があるのだ。
だからこそ、ソフトバンクは滴滴やUberに投資した。

一方で今話題の中国自転車シェア。これはGPSによる所在地管理をもとにしたフリーフローシステムで、課金まで行う。これもまた、将来の自動運転車のプラットフォームとなりうる。
ダイムラーの小型車シェアCar2GOも自動運転車シェアを見据えているし、国内で自転車シェアを進めているDOCOMOもそれは視野にいれていると思う。

日本でも民間はそれなりに動いているが、肝心の行政側がシェアリングに対して腰が重い。
政府はイノベーションにつながる新ビジネスに関してもっと開放的になって欲しい。

ETC2.0 そろそろ付けとくキャンペーン

2017年10月27日 | ITS
首都高速道路株式会社は9月末で終了した首都圏ETCキャンペーンに引き続き新たにETC2.0そろそろ付けとくキャンペーンを実施中。
指定場所(池袋サンシャインシティ)に出向けば、ETC2.0が本体(機種は発話型限定)、取付費、セットアップ手数料全部込みで10000円。
ETC2.0は最廉価機種でも1万円は超えているので、これはお買い得。

しかし、よくわからないの
1.ETC未装着ユーザー限定
2.装着するのはETC2.0
というあたり。

今に至るまでETCを付けていない人って(新規に車を買った人を除けば)殆ど高速道路を使わない人だと思う。

首都高速道路(株)の目的がETC通行比率の向上であるなら、むしろ最廉価の通常ETC(実売6000円以下)を無料で付けるキャンペーンでもしたら良い。おそらく費用的にはあまり変わらない。
もしくは、最廉価の通常ETCを5000円程度の保証金をとって貸与するでも良い。その上でETC装着車以外走行禁止にしてしまったほうが余程合理的だと思う。

このやり方でズルズルやってても有人収受ゲートを廃止することはできないし、今まで付けていない人にわざわざ高い2.0を付けさせる意味もわからない。

EVは誰にでも作れるという誤解

2017年10月12日 | ITS
いままで何回も書いてきたことだが、最近メディアで「車がEV化すると誰にでも作れるようになり、異業種が参入し既存の自動車メーカーは危機的状況をむかえる」という論調の記事を良く目にするので、その大きな誤解についてまとめておく。

こうした論調はIT系ライターの方などに多い。おそらくはパソコンやスマホなどのイメージでモジュール化されれば、作る気になれば誰にでも作れる、ということを念頭におっしゃっているのだと思う。
よく引き合いに出される数字として、エンジンからモーターに変われば車の部品は40%減る、というもの。エンジン自体沢山の部品から構成されているしトランスミッションも非常に多くの部品が使われているから部品点数で言えばそうなる。さらにエンジンの設計、開発、生産は長い経験と多大な費用、生産設備がいるが、電池、モーター、インバーターならば買ってくれば良い、なので新規参入のメーカーが既存の自動車メーカーに打ち勝つ製品を作ることだってできる、ということだろう。

スマホで例えれば、各部品はモジュール化しており、アップルのように自社生産設備を持たないメーカーがその設計、デザイン、ソフトウェア、ブランド力で市場を席巻した。同じことが自動車で起きるのだろうか?

ギャラクシーの電池問題は記憶に新しい。おそらくスマホでリコールを出すとしたら、こうした電池の爆発とか、感電とか、ある程度限られる。しかし車のリコール内容は多岐にわたる。たとえばなにか運転操作に支障があることが発生したら、もうリコールなのだ。これらは単なる生産不良で起きるわけではない。想定外の使用、想定外の環境で発生する不具合で発生する。そしてそれらを何十年も蓄積して改善してきている。このノウハウは簡単に盗めるものではない。

エンジンがなくなっても、車を作るためには剛性と十分な乗員安全を確保したモノコックボディを設計し、それに乗り心地と操縦安定性を両立させるサスペンションとステアリング機構を取り付け、重要保安部品であるブレーキ機構を装備する。その結果出来上がった車はドライバーの意思通りに曲がり止まるか、乗り心地や安定性はどうか、衝突時の安全性はどうかを評価しなければならない。
それらに加えて、シートや内装パネル、各種装備についてもすべてのマッチングが求められる。それらはすべて意匠デザインがあるため、出来合いのモジュール部品を買ってきて組み込めばいいという話ではない。さらに空調、電装、セーフティ装備といった、気が遠くなるような設計が求められる。これらの信頼性を確保するスペックをどこに設定するか、またそのスペックを満足していることを確認する試験にも膨大な時間と費用がかかる。
モジュール化された部品をケースに収納するだけの製品とは全く違うのだ。

ざっと設計関係だけ書いたが、これだけでもエンジンがなくなるから誰にでも車が作れる、なんて生易しいものではないことが理解いただけただろう。ゴルフカートに毛が生えたような電動車ならすぐできるかもしれないが、現在のカーメーカーの車に匹敵するようなものは簡単に作れるものではない。

だから私は異業種が簡単に参入するとは全く思っていないが(テスラのように多大の資金を投入し大規模な引き抜きでカーメーカーから人員を集めれば別だが)、中国のローカルカーメーカーは話が違う。彼らはすでに日欧カーメーカーから車作りのノウハウを吸収して来ているし、車を作り始めてから20年近くが経過し経験をつんで来ている。
日本の皆さんは中国のローカルブランド自動車というと衝突試験で★一つしか取れないとか、劣悪な品質とかを思い浮かべるかも知れないが、ここ5年ほどで大きな進歩を遂げている。

中国のカーメーカーは皆新興メーカーなので、自社でエンジンを最初から開発するノウハウはない。だから日系エンジン工場から購入したり、日独のエンジンをリバースエンジニアリングでコピーしたりしている。この制約から解かれるメリットは大きい。

中国は国をあげてEV産業を支援してくるだろう。自国の膨大な市場で生産台数が増えれば規模の経済により価格競争力がついてくる。
中国がOEMを含め日欧米に輸出できていない商品は車だけ。その念願の自動車輸出国になるためにはエンジン開発の束縛がないEVだ、と考えているのだ。優遇策や充電インフラと行った支援策は、中国では中央が決めればすぐに実行に移される。
また、中国は巧みに自国の非常に大きな自動車マーケットを餌に日欧企業を誘致し、その技術を活用することになるだろう。EV関連部品が現地化されれば、部品メーカーがそのノウハウを身につける。

EV化で我が国の自動車メーカーが危機的な状況になるかどうかは中国次第といえるかもしれない。

ブリスベンのレンタカーはETCに戸惑った

2017年10月06日 | ITS
中国国慶節の休暇は航空チケットが高い日本には帰らず、また殺人的混雑となる中国国内観光地もさけて海外へ脱出することにしてる。ことしはオーストラリアのブリスベン。
サンシャインコースト2泊、ゴールドコーストもみたい、ブリスベン市内にも泊まりたいということで、レンタカーを空港で借りることにした。トヨタ・カムリ、5泊6日で4万円ほどと割とリーズナブル。
車自体は何の問題もなく、またハーツの手続きは非常に簡単、車置き場も空港出口の目の前ととても便利だったのだが、高速道路で問題が発生した。

ブリスベン近郊を走行していると、この先有料区間(TOLL)との表示が出てきた。しかし、料金所はない。そのうちに、未払いの場合は3日以内にWEBサイトで支払え、それを超えるとペナルティ加算する、という表示が現れた。要するに全車ETC装備が原則で、ETC(電池式のタグプレート)未装着車はカメラでライセンスプレートを読み取り持ち主に請求が行くらしい。3日以内に支払えば追加料金は発生しない。
借りた車にはどこにもタグがついていないので、どうしたものかとホテルに帰ってからネットで検索したら後からペナルティ付きで請求された、さらにレンタカー会社の処理手数料もかかり、数百円の通行料に何千円もかかった、という経験談が出てきてびっくり。
さらにハーツのサイトでは「お客様がWEBで支払ってください」という記載が出てきて、(結果的にこれは古い情報だった)、慌ててVIAという交通局のサイトに行ってみたら、支払いはアカウント作る必要が有ることが判明。
さらに、このアカウントにはオーストラリアの住所、電話番号しかインプットできず、仕方なくホテルの住所で登録。

これでクレカから引き落とされるのだろうと思ったが、アカウント情報のページに行っても課金は発生していない。
そこでさらに調べたら、VIAのサイトのWhat’s New 欄に「ハーツと特別契約、ナンバー読み取りで利用者のクレカへ直接請求することになった」とある。

結論からいえば、これで問題なく支払いが済んでいた。返却時に高速料金はどうなってるときいたら、もうクレカから引き落とされてるから何もしなくていい、と言われた。
借りるときにデポジット用でクレジットカードを出してくれと言われ、それは単に車両のデポジットかと思いよく聞いていなかったのかもしれない。その時に説明されたのかもしれないが、少なくともよく分かるような説明はなかった。

なお、エイビスなどハーツ以外の会社の車はタグがついていて返却時に精算することになっているようだ。

ここまではブリスベンに行かれる方への情報提供。

ここからはITSを疑うとしての記事

日本ではハイスペックなETCが採用されたが、海外ではこのようなどちらかというとこうした簡易式のETCが多い。機器も貸出で装着にあたっての費用はないケースがほとんどだ。というか、料金支払い機なんだから日本のようにETCを車両用品として有料販売するというのがそもそもおかしかったのではないか。

それと、首都高はETC未装着車は一律高額料金を有人収受所で集金している。これを回避するため、いっときは首都高Xというコードネームの簡易ETCが考案されたが実現には至っていない。
今の首都高の仕組みはETCなし車は高額の一定料金を払わなくてはならず、またそのために有人集金をやめられない。
いっそブリスベンのように未装着車はナンバー読み取りで後日請求、支払い遅延は罰金制度にすればよかったのではないか?
今のままでは未来永劫有人料金ブースは廃止できない。

日本のETCはセキュリティーやエラー防止に完璧を求めるあまり複雑で高額なものになっているように感じる。さらに輪をかけて高額な、それでいてユーザーメリットがほとんどないETC2.0への転換を進めている。
日本は行政の効率化ということが本当に苦手な国だとおもう。

一時退出可能な道の駅、そのびっくりする実態

2017年09月27日 | ITS
国交省はPA.SAのない高速道路区間において道の駅で休憩、給油などをするために一時退出しても継続走行とみなす施策を実施している。
現在3箇所で実験中だが、この結果から17箇所に拡大するという。
レスポンス記事

この記事中で、石井啓一国土交通省は「安全を確保すると共に労働生産性の向上を図るため、休憩施設の確保を行うことが重要」と述べている。
確かに長い区間休憩所がないのは過労運転防止の観点から問題だし、一般道に設置されている道の駅の活性化にもつながるので大変結構なことだ。

しかし、この裏にはとんでもない話が隠れている。

現在の3箇所も、拡大する17箇所もETC2.0限定なのだ。

では、現在の3箇所ではどの程度利用されているのだろうか。
ここに国交省の資料PDFがあるが驚くべき数字が書かれている。(コメ欄で情報提供頂きました)

三箇所のETC2.0による一時退出利用者は、一箇所あたりわずか平日15台/日、休日20台/日程度。
さらに資料には通常ETCの利用者(これは割引になっていないのだと思うが)はその10倍程度来場していることが書かれている。
この程度の利用者しかいないのになぜ17箇所もETC2.0に利用を限定するのか?実施には費用のかかるポスト設置が必要であり、費用対効果も怪しい。全く理解に苦しむ。

石井国交省のコメントを再度確認してほしい。この施策は安全と生産性向上のために行っているのだ。
であれば一台でも多くの車にそのメリットを提供するべきだろう。それがなぜETC2.0限定なのか?

理由は技術的なものではないだろう。道の駅の入り口に通信ポストを設置し割引を行っているが、それは通常ETCでも可能なはずだ。
その証拠に通常ETCの入場台数が集計されている。

これは明らかにETC2.0普及のために無理やりETC2.0にメリットを付加しているとしか考えられない。
一部にETC2.0にする理由は利用者の道の駅利用までの走行データを把握するためだ、という話があったが、それならETC2.0のデータだけを分析すればいいだけのことで通常ETCを排除する理由にはならない。

つまり、国交相のコメントが本当なら国交省は「安全よりもETC2.0の普及を優先している」ということになる。
こんなことでいいのか。

日本はEVシェアを官主導で進めるべき

2017年09月21日 | ITS
前のエントリーで、海外ではEVもしくは小型車のシェアリングが進んでいる事を書いた。
一方で日本政府の取り組みはIT総合戦略室のしたにあるシェアリングエコノミー促進室がまとめているようだが、特にカーシェアリングに特化してはいない。
EVをつかったカーシェアは自治体や観光地主導での実験的導入をまずは進めていくというような感じであり、なんとなく色物的な展開しか起きないような感じ。海外で急速に広がる可能性がある都市内のコミューターというようなカーシェアについての積極的な動きはない。

カーシェアではTIMESが先行しており、TIMESの時間貸し駐車場を基点に相当多くのポートが設置されているが、残念ながら返却は借りたポートに限られるため今ひとつ使い勝手が良くない。数キロ先の友人宅にいき、数時間過ごして戻るというケースでは実際の利用時間は20分程度でも支払いは数時間分になる。
ポートを跨いで返却できるようになれば実際の利用時間だけの支払いでよくなり利便性は格段に上がる。
さらに海外のカーシェアの多くはフリーフローとなっており合法な場所であればどこに駐車しても返却扱いになる。
言うまでもなくこれは非常に便利だ。

日本ではこのフリーフロー方式は難しい。路肩を含めた公共駐車場があまりなく、またパーキングメーターエリア以外は路上駐車が禁止されている。こうした事業を展開するなら事業者が土地を手配しポートを沢山作らなければならないが、多分それでは事業性の成立は困難だろう。

EVをつかったフリーフローのカーシェアは確実に都市部のモビリティを改善する。公共交通をつかったほうが早くて便利な部分は公共交通をつかい、それから先でシェアリングEVをつかうという形になれば走行する車両の総数を減らすことができる。
それ以上に我が国のEV及びそのシェアリングオペレーションビジネスを発展させ国際競争力を付けなければ、この先欧米はおろか中国にも負けてしまう。タクシー業界などからの反対は有るだろうが、産業構造は時代とともに変わって当たり前。

ビジネス自体はもちろん民間企業が自由競争の中で進めるべきだが、前述の通り日本の都市事情から駐車スペースに関しての行政の協力が絶対に必要になる。しかし、これが絶望的なのだ。規制緩和どころか、規制の拡大解釈とリスク回避でむしろ消極的であるようにみえる。
札幌に引き続きシェアバイクが進出を計画していた福岡は市が反対して頓挫しているいう話を聞いた。中国では増えすぎや迷惑駐車が増えて問題になっているが、それ以上に交通量の減少や無認可三輪車タクシー撲滅のメリットが大きいため、行政は台数規制はするものの専用駐車スペースの認可などはむしろ素早い対応をしている。

EVに関しても、先日経産相が「いきなりEVになるわけではない」という発言をされたが、今時ステーキだっていきなりでOKなんだから良く海外の動きを見てほしい。ハイブリッドで先行する日本のアドバンテージを温存したいという考え方も背後には有るのかもしれないが、フューチャーフォンで先行し結局スマホで完敗した過去が頭をよぎる。
繰り返すが、日本の都市構造は過密で民間だけの努力ではシェアリングビジネスの展開は限界がある。
EVの推進とシェアリングに対するインフラ整備を官主導で進めなければこの先海外にどんどん引き離されているように感じる。

日本人があまり知らないEVカーシェアリング

2017年09月19日 | ITS
EV(電気自動車)のシェアリングに関しては日本でも地域的な取り組みが始まっている。カーシェアリング最大手のTIMESも専用車両Ha:moで東京で進めているし、その他地方限定のサービスは結構出て行きいる。しかしこれが一般に浸透しているとまでは言えない。

一方、海外に目を向けるとEVに限定せず、小型車両でのカーシェアリングは欧州ではかなり盛んになり、生活に溶け込んでいる。
ダイムラー主導のcar2goがスマートをつかい先行で始めたが、VW,BMWも追従しさらにはその他の業者も出現している。概ね1分0.25ユーロというような価格設定。
1分0.25ユーロということは、一時間15ユーロ、2000円。何時間も借りたらレンタカーより高い。しかし、これらのカーシェアの特徴はエリア内ならどこでも乗り捨て可能ということにある。目的地に着いたら返却し課金終了。帰りは近くの空車を探して、ということなので都市内移動ならせいぜい10~20分の利用となり、数百円の負担で済む。出典がわからなくなってしまったが、どこかの街では若者の自動車保有率がかなり低下した、という。
乗り捨てに関しては、欧州の都市は路上駐車が認められており、パーキングメーター等で料金がかかる場合もカーシェア業者の契約でユーザーは支払う必要がない。また公園のような場所には無料駐車場が多く有る。

この方式、現在の日本の都市では実現不可能であることは言うまでもない。今でこそパーキングメーターが増えてきたが、美濃部都政時代は都内は一切駐車禁止だった。路上で乗り捨て可能な場所は限定される。
しかし、まだよく探せば交通の邪魔にならない路上駐車スペースは有ると思う。行政がシェアEV専用で増設しシェアEV普及を政策として進めていることができるのではないか。完全乗り捨てが普及の鍵となるのだ。

私が危惧するのは日本が遅れを取ることだ。いまの日本では都市構造・インフラの違いからこのサービスがピンと来ないし、この状況では国内での大発展はないだろう。足元の市場がこんな状況なのでとても海外にまで出ていくような業者は現れそうもない。

イタリアには4-5社が展開しているが、その中でまだ規模は小さいもののShear'nGoという業者が中国製の二人乗りミニEVを展開している。イタリアのベンチャーが中国から車を仕入れて始めたものかと思っていたら、実はイタリアの会社は90%中国資本で、かつシェアリングのオペレーションシステムも中国開発だった。中国でEVカーシェアリングを営む会社がイタリアに進出しているのだ。その会社は中国市場ではすでに一万台を稼働させている。

これ以外にも、シェアリング自転車ほど話題にはなっていないがシェアリングEVは中国でじわじわと増え続けている。上海でも白地に緑のEVCardというシェアリングEVが登場し、空港には大きな駐車専用スペースもできている。

こうしたシティコミューター的EVのシェアリングは間違いなく今後拡大するが、今のところ日本でグローバルプレーヤーとなる企業が現れていない。大手自動車会社はその力はあるが本格的に事業として海外展開する計画は今のところ聞こえてこない。

一方で中国では中小企業ですら海外に出ていっているのだ。今後は大手の参入も見込まれており、気がついたらスマホはVIVO,OPPOやHuawaiにマーケットを席巻されてしまった、という悪夢を繰り返さないようにしてほしい。

もう止まらないEVシフトと日本の対応

2017年09月18日 | ITS
先日、EVに関するエントリーをしたが、日本の立ち位置について補足しておく。
2017年8月25日 EV化で自動車メーカーは消滅するのか?

欧州各国に引き続き、中国も近い将来の全面EV化を示唆している。
中国の自動車マーケットは年間3000万台規模。日本の5倍という非常に大きい数字であり、これは今後の経済成長により更に増える。
この巨大な市場がEVに切り替わるとすると、産業構造の大変革になる。また、中国のこの発言は自国のEV産業の今後についてかなりの自信があるとみるべきだろう。
いずれにしても世界的に自動車市場はEV化に大きく舵をきった。

それに対し日本は、世界で初めて量産市販EVを世に出し、世界市場に存在するEVの台数シェアではまだ依然一位だと思うが、今後の見通しについては不透明な部分が多い。今後日本のカーメーカーは欧米に加え中国とも戦っていかなければならない。
いままでいろいろな分野で「世界に先駆けて開発」し、「気がついたら負けてしまう」パターンを見てきたので非常に心配だ。

前回のエントリーで、EVだからといって誰にでも作れるわけではない、車両制御をはじめとする長年のノウハウが必要だ、と書いた。
そういう意味では中国のローカルカーメーカーの実力はまだ低い。しかし年々向上しているのも事実。
非常に感覚的な話だが、品質と商品力に関して以前は日本車100に対して40~50レベルだったのが、80くらいまでは来ている。もともと中国の消費者は品質に対する要求レベルが高くないので、少なくとも中国国内向けでは十分な商品となりつつある。

そもそも中国は電気自転車がものすごく普及し、シェアバイクも一気に広まるような下地があり、事実シェアEVもかなりの台数が走り始めている。さらに中国は中央が命令すればなんでもできる。充電設備を作れ、と言えばあっという間にインフラ整備は終わるだろう。中国でのEV普及のネックは集合住宅での充電だが、これが解決すれば今後急速にEV化が進んでも不思議ではない。
それに加え、自国のEV産業に対する様々な優遇策を講じることは間違いなく、この巨大市場に日本メーカーが食い込んでいくのはかなり難しい。
中国はEVの中国生産に対して自国の電池、モーター、インバーターの採用を強制している。(このうちどれか一つは中国企業からの調達が必要)
それは明らかに技術流出を意味することから日本のカーメーカーは中国現地生産に消極的だったが、もはやそんなことは言っていられなり大手日系各社は中国生産の意向を表明している。

日本国内マーケットの拡大も我が国のEV発展には重要な意味を持つが、日本政府は将来のEV化について宣言はしておらず、また現在のEV優遇策も際立っているとはいえない。
日本の主要輸出品がエンジン付き自動車であり、また国内の自動車メーカーのうち現時点で純EVを販売しているのが2社しかない状況では積極的になれないだろう。また、日本は電力供給という面で問題を抱えている。もし車が全部EVに置き換わったら電力は確実に逼迫する。
そもそも化石燃料を燃やして作った電気で車を走らせるよりも、化石燃料を燃やして車を走らせたほうが効率がいい。石油石炭で発電している限りEVは全然クリーンじゃない。
それに対する世界の回答は原発や再生可能エネルギーなのだが、その選択肢は日本にはない。原発はもう絶対作れないし、地理的にも再生可能エネルギーで多くを賄えるようにはならない。
とは言え、政府は認識を改めるべきだ。大きなパラダイムシフトが迫っている。

私自身、近未来に車が全部EVになることは無理で当面は小排気量ターボのような低燃費エンジンが主流になると考えていた。しかし最近の欧州、中国の発表をみるに、これは予想以上の大変革が起きると想定するほうが妥当ではないか。
それに対し、日本の自動車産業及び日本政府は相当な改革をしないと家電や携帯電話などの二の舞いになってしまう恐れがある。