NOKIAが売却先を探していた傘下のデジタル地図メーカーhereはおおかたの予想通りドイツのプレミアム系カーメーカー、メルセデス、BMW及びアウディの3社連合により31億ドルで買収が決まった。
なぜドイツの3社がデジタル地図メーカーを必死になって買収したのか、ということについてはIT系メディアが色々と解説している。GoogleやAppleが自動車関連に進出するなかでの防御策である、という論調が多い。確かにそれもあるのだがちょっと違う。
なかでもピントはずれなのは、車内のOSがCarplayやAndroidAutoに牛耳られてしまうことへの対抗というもの。これは全く違う。車内エンタメなんてどうでもいいのだ。というか、スマホ連携はユーザーニーズで、スマホをカーメーカーが作れない以上はCarplayやAndroidAutoに任せるしかない。スマホの画面を車のディスプレイで表示するかしないか程度の差でしかなく、あくまで車内エンタメであり車両制御とは全くの別物なのだ。
hereを買収した理由は同社がもつ3Dマップ。これがあれば自社位置をセンチメートルレベルで把握できるため自動走行に不可欠なのだが、だからといってカーメーカーが保有する必要はない。しかし、いま世界で3D地図を作れるのはTOMTOMとGoogleしかない。Googleはいわずもがな、自動運転のライバルだ。
自動運転が実現したときに一番ビジネスが危ぶまれるのは走り系のプレミアムブランド。まさにこの3社だ。
だから数年前まで彼らは自動運転には否定的だった。しかしGoogleが参入し、交通事故死ゼロという社会的要請について世の中の認識が拡大してきたことから、将来は最終的に自動運転の世界になることは避けられないと判断したのだろう。昨年くらいから一転してモータショーなどでも積極的に自動運転を言うようになった。
運転車が運転しない車に走る喜び系の走行性能は無用になり、コスト競争になる。このまま放置すると彼らに全く未来はなくなる。であれば、そこに至るまでにアドバンテージを取ってしまおうというのが独3社の読みだろう。つまり、IT系会社に対する対抗策というよりは他のカーメーカー、特に日系等の大衆カーメーカーに対する対抗策だと私は思う。