ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

ITS大規模実証実験の前に冷や水をかけておく

2009年02月14日 | ITS
今月の下旬にお台場でITSの大規模実証実験が行われる。
路車間、車車間の世界初の実用化に向けてITSジャパンとしても重要な実験と位置づけており、ITSジャパン専務理事は「官民一体となった日本の取り組みを世界に発信する機会でもあり、そういう意味で真剣さの度合いが違う」と述べている。

この実験に先立って行われたのが首都高の、いわゆる「参宮橋地区社会実験」であり、ここでVICSを使ったカーブ先渋滞情報の提供により事故が8割減った、といううたい文句が今回の大規模実験につながっている。

以下に述べることは、このブログで再三述べていることであるが、大規模実験を前にもう一度釘を刺しておきたい。

添付の図は日経コンストラクションが発行した「ITS新時代」からの抜粋である。

この本は慶大の川嶋教授が監修しているだけのことはあり、まさにITS翼賛的な内容になっているのだが、ここに示した図は参宮橋実験で実施された各種施策と事故減少の関係を示している。

VICSと書かれているところが、路車間通信を行った期間である。

小学生でもわかると思うが、皮肉にもVICSによる情報提供期間と事故減少には相関がないのだ。明らかに効果があったと考えられるのは、舗装の打ち直しだろう。

しかし、ITSジャパンは「世界で初めての実用化」を「我が国の先進性を世界に示す」ためにVICSの効果を過剰に宣伝し、「路車間通信で首都高の事故が8割減った」と公言している。

ハッキリ言っておきたい。
本当に事故が減った理由である舗装の打ち直しについて意図的に隠ぺいする、(この言い方が過激だとしても、少なくとも積極的な評価を避けている)のはどうなのか?事故を減らすためには、こちらをまず第一優先で進めるべきなのではないのか?

私には、ITSジャパンは「不幸な交通事故を減らす」ことよりも「世界で初めて(実効の証明されていない)路車間通信をやること」を優先しているとしか思えない。

ゴールは事故死者を減らすことじゃないのか?