ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

昭和16年夏の敗戦

2011年09月06日 | 雑記
猪瀬直樹の昭和16年夏の敗戦を読んだ。
昭和16年夏、官製シンクタンク「総力戦研究所」の若きエリートは、日米開戦必敗のシミュレーション結論を内閣に報告する。一方で、報告を受ける側の東條英機も、昭和天皇の意を受け実は開戦回避を模索していた。
多くの人々が懐疑的であった日米開戦に、しかし日本は突入する。
開戦を主張する軍部、一旦は開戦を天皇に上奏済みという事情、米による石油禁輸処置、ハル・ノート、そして米英への屈服よりも戦うべし、という世論が「開戦への場の流れ」を作ってしまった。

これに似た状況は、現在の企業活動の中でもしばしば見ることが出来る。

例えば、3Dテレビは映画アバターのヒットに端を発したアメリカ市場における期待感が実際の市場ニーズとはかけ離れた熱狂を呼び、さらに韓国勢に先をこされるという脅迫観念から国内電機メーカー各社は全力で商品を市場投入した。しかし、実際には惨敗に終わっている。
おそらく、「家庭で3Dが本当に必要なのか?」と疑問視していた人は家電メーカー内にもかなりいたはずだ。

アナログテレビ空き地を使って来年事業化される携帯マルチメディア放送「モバキャス」も、すでにその事業性に対する多くの「疑問」が投げかけられている。
しかし、アナログ空き地有効利用という「大義」の圧力と、争奪戦を経て獲得したという経緯から、後戻りは出来ない。勝ち目は殆どない戦いに、ドコモは突入することになる。

ITS(特にDSRC関連)にしたって、同じようなもの。
もはやこれに関わる多くの人が実は「勝ち目はない」と感じているんじゃないの?