ITSを疑う

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東京オリンピックまでに自動運転車が東京を走り回る?

2015年10月07日 | 自動運転
安倍総理大臣は10月4日、京都で行われた科学技術に関する国際会議で参加者に「2020年の東京には、自動運転車がきっと走り回っています。皆さんは自動運転車で動き回ることができるでしょう」と発言した。
そして10月6日にはトヨタが2020年までに自動運転を実現する、という方針を明らかにした。

この2つのニュースタイトルをみて、オリンピックまでには自動運転が相当なレベルで実現されるのだろうと思った人は多いと思う。総理大臣と世界のトヨタがほぼ時を同じくして2020年までに自動運転を実現するといったのだから当然だ。

しかしきちんと中身をみると、両者の言っていることは天と地の差があるのだ。

トヨタの発表は「高速道路限定」となっている。
実は高速道路限定であれば自動運転は決してむずかしくない。なぜなら自動車専用道路だからだ。
言及はされてないが、専用レーンであればなおさら簡単だ。追尾式のクルーズコントロール、車線キープ装置、自動ブレーキがあればそれで良い。
専用レーンでない場合は追い越しや割り込みで入ってくる車への対応があるので難易度は上がる。今回の発表では追い越しもできるとあるので専用レーン限定ではないのだろう。
非自動運転車との混流は結構難しい。自動運転車はヒューマンエラーがない分、有人運転よりはるかに安全なのだが、例えば故意に直前に割り込んで急ブレーキをかけられたらどうなるか。追突を防げるかどうかはブレーキ性能だけが頼りになる。

完全自動車運転(レベル5,乗車する人に運転の責任がない)の場合、事故の対応はすべてカーメーカーが行わなければならない。果たしてメーカーとしてそのリスクを負えるかといえば、多分負えない。したがってトヨタのいう2020年の高速道路限定の自動運転もレベル3~4(事故に対しては運転者が責任を負う)相当のものになる。
自動運転は技術的には相当なレベルに達しているが、ごくわずかでも事故のおそれがあり、それを運転者に転嫁(言い方が悪いが、実際はそうだ)できないのであればメーカーは手を出さない。

一方、安倍総理大臣の発言、「東京を走り回る」はどう考えても高速道路限定ではない。また、「皆さんは自動運転車で動き回る」はレベル5のロボットタクシーのことだ。
これはどう考えてもありえない。トヨタですら高速限定のレベル3~4だと言っているのに。
だれが安倍氏にレクチャーしたのかわからないが、タクシーという意味では多分できたとしても特定のオリンピック会場と最寄りの駅あたりを結ぶ専用レーン走行の「地上版ゆりかもめ」のようなものになるだろう。


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