ETCの高速道路料金支払い以外の利用、いわゆるETCの多目的利用については、もうずいぶんまえにITS事業企画という会社がチャレンジし見事玉砕している。これは当ブログで散々無理だろ、と指摘してきた結末です。
その後もこの話は出ては消えていたわけで、当ブログではETCは高速道路料金支払いに特化するべきだといってきてるのですが、まだぞろ商業利用を推進する事業体がでてきました。
昨年の今頃、中日本高速道路がケンタッキー・フライド・チキンのドライブスルーで実験を開始したETC多目的利用(一年前の当ブログ記事)がサービスにブランド名をつけ、立派なWEBページをつくり本格事業展開のようです。
その名もETCX。
事業母体はETCソリューションズ。ソニー、名鉄、沖電気、三菱プレシジョン系からの出資会社。
今使っているETCでそのままキャッシュレスにはならず、指定クレカでの登録が必要。
かつ、現時点で使える施設は、伊豆半島の有料道路数か所と、鈴鹿PA内のスナック屋台、愛知県新城市のガソリンスタンド。以上。
これからどんどん増えるといってるけど、ここで明確に予言しておきます。この事業はとん挫します。実験で参加してたKFCがいなくなってることからもまあ、明らかでしょう。
その理由は過去記事で何回も説明していますが、もう一度簡単に説明しておきます。
1.キャッシュレスというだけで集客はできない。さらにいえば、この数年スマホキャッシュレスが拡大し、スマホがお財布になってきているのであえて車のETCで払う意味はほとんどない。
2.高速道路料金支払いのETCの最大のメリットはノンストップだけど、多目的利用にノンストップ対応サービスは駐車場以外存在しない。どうせ止まって商品の受け渡しがあるのなら車の機器で払う意味はさほどない。
3.ガソリンスタンドはセルフになってきており、どっちみち降りて機械で操作が必要。
4.これが最大の理由。店側の設備機器の価格が高い。ETCで支払いができるというメリットだけでは客数は増えないから投資回収できない。
駐車場はノンストップということでのユーザーメリットが比較的高いが、それでも普及しなかったということはいかに設備投資に見合うリターンがないかということの証明になってると思います。
(なお、駐車場に関しては商業施設利用割引対応が難しいことがノンストップ決済の妨げになっているという側面もあります)
投資をする小売り施設が増えなければ会員も増えない、会員がいなけりゃだれも設備投資しない。これを乗り越えるのが大変なんだけど、この事業に関してはどう贔屓目にみてもそれを超えることができるとは思えません。自分の行動範囲で月数回以上つかうような状況にならなければだれも会員登録なんてしない。そのためには加盟施設は相当数にならないとだめでしょ。
この「にわとりたまご」を打破するためには無料に近い形で決済機器を配るか、相当なインセンティブをつけて会員を募るしかないけど多分資金的に持たない。
でも、株主4社という船頭の多さが投資や撤退といった大きな経営判断を鈍らせる、というありがちなパターンになりそうです。
早めに見切りつけたほうが良いとおもいますよ。
IBAからETCXに変わって一つだけ進化していると思ったのは、車載器への紐付けが無くなり、ETCカードへの紐付けとなったことですね。
IBAは車載器に紐付いていた為、借りた車では使えませんでしたし、車検証コピーの提出や複数台登録、車両乗り換え等で面倒でしたが、これが解消されました。
しかし、ただそれだけです。
相変わらず会員登録が必要だし、コスト的にも普及しないでしょう。
IBAを知っている者としては、ETCXのホームページに「画期的なサービス」とか書かれてるのが笑っちゃいます。