ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

飲酒運転防止装置

2007年01月04日 | 雑記
昨年、自動車関連で最も話題となったことのひとつに飲酒運転がある。

これに関連して、飲酒運転防止装置についても年末年始のメディアでも結構取り上げられていたが、その見方があまりに単純なのには驚いた。

いわく、飲酒運転防止装置を装備しないのはカーメーカーの怠慢であるとか、新コンポの導入に対して保守的過ぎるとか、儲けているのに社会的責任を果たしていないとか。

当然、カーメーカーも研究は進めている。
しかし、昨年のエントリーでも書いたが飲酒運転防止装置はエアバッグやABSなどの安全装備とは根本的に性質が異なるのだ。

これは大多数の健全なドライバーにとっては不要な装置である。
それが装備されていてもまったく価値を感じないから、購買動機につながらない。

したがって、この装備が有償オプションで設定されても業務用車両以外に需要はないだろう。

売価ゼロで標準装備するのかカーメーカーの責務だ、という意見もある。
しかしこれはあまりに感情論だ。
たとえば排気ガスは100%カーメーカーの責任であり、売価反映無しに改善するべき物だろう。しかし飲酒運転は違法行為であり、かつ過失ではなく故意の犯罪なのだ。
これをカーメーカーの責任とするのはちょっと違うと思う。

そして、仮にあるメーカーが社会的責務を感じて全車に標準装備をしたとしても、一般消費者がそれを評価してそのメーカーの車を購入する保証はまったくない。
繰り返しになるが、大多数の健全な消費者にとってはなんら価値のない装備だからである。むしろ、エンジン始動時の儀式などが嫌われるだけだ。
(トヨタは視線や発汗で感知する方式を検討中とのこと)
カーメーカーにとっては他社に先駆けて採用するインセンティブがない。
法制化等の外力がない限り実現しない話なのだ。

飲酒運転防止装置を全車に装備するべきだと主張している人たちは、自分にとってはまったく意味がなく逆に面倒が増える装備のために数万円の追加出費をするのだろうか?

交通事故死減少の理由

2007年01月03日 | 雑記
3日付けの日経新聞に「交通事故死7.6%減」「51年ぶり6000人台前半」という記事が掲載されている。
その理由について警察庁は「シートベルト着用率が向上しているほか、飲酒運転取締りの効果もあったのではないか」としている。

ちょっとまって欲しい。これは「~ではないか」などというあいまいなコメントで済ませて良い問題ではないだろう。

51年前といったら、「3丁目の夕日」の世界だ。ミゼットがまばらに走っていた頃と同じ事故死者ということは、大変なことなのだ。その理由をきっちり分析し、それをもとにさらに改善していくことが必要じゃないのか?

統計をみると、事故死者は1990年から減少に転じているが、ここ5年の減少率はさらに大きい。
一方、シートベルト着用規制が強化されてから随分たつ。それ以降の装着率(高速道路90%以上、一般道80%以上、後席10%程度)は毎年若干上昇を続けているが概ね高止まり状態であり、特に直近5年間に関して言えば毎年対前年を下回って減少する理由としては弱い。

飲酒運転規制強化は最近のことだ。
事故死減少はそれ以前からのトレンドであり、これも説明になっていない。


私が考える交通事故死減少の理由は以下の通りだ。

1)車の安全性能が上がっている
図表を見ればわかるとおり、事故件数は1980年以降、増えている。事故が増えているにもかかわらず死者が減るということは「事故があっても死に至らない」ということに他ならない。これは、車の安全性能が上がったか、個々の事故の大きさが小さくなったかのどちらかだろう。

事故の大きさに傾向的変化がおきる理由も見当たらないので、これは車の安全性能が上がったと見るべきだろう。(ABS装備が進めば衝突時の速度が減少する、ということもある)
大雑把に言えば、1995年以降の車には運転席・助手席エアバッグとABSが標準装備されている。また、衝突安全性能は年々向上している。
保有台数がだんだんとこれらの安全性能が高い車に入れ替わっているのだ。
「年々」事故死者が減少する理由はこれ以外に説明がつかない。

2)若者の車離れ
もうひとつ大きな理由は、若者の車離れだ。
実際に統計結果をみると、若者の事故死はこの10年でなんと1/3に減少しているのだ。
車に対する興味がなければ運転もしないし、レースまがいの運転もしない。
この傾向が全国的に拡大している。これが「走る棺おけ型」死亡事故を劇的に減少させている。
初日の出暴走はやはりまったく行われなかったようだ。
これは分散化したわけでも、取締りを怖れたからでもない。(警察は取り締まりの成果だと発表するだろうけど)
単にもう「そんなの時代遅れ」なのだ。
(若者の車離れについては、私の過去のエントリーを参照ください)

運転中のナビ操作:デルファイの新技術

2007年01月03日 | ITS
12月28日のエントリーで、運転中のナビ操作について「ハンドルにセンサーをつけ、運転者が両手でハンドルを握っている状態なら同乗者がナビを操作できるようにしたらどうか」と書いたが、1月2日にデルファイから関連するようなリリースがあった。

デルファイは2007のCES(米国最大のコンシューマーエレクトロニクスショー)にコントロール、ディスプレイ、セキュリティ、エンターテイメントなどを統合したモジュールを展示する。1月2日のプレスリリースはこちら
この記事中、運転者とパッセンジャーを見分けるセンサーを搭載し運転中でも助手席からナビなどを操作できる仕組みについて記載がある。赤外線センサーで見分ける、ということだが、パテント取得済みとのこと。

該当部分の抜粋
The touch screen system also features Delphi's patent-pending Driver/Passenger Discrimination sensing. This feature enables the driver and passenger to use the same controls to generate different responses from the vehicle ― for example permitting the passenger to use vehicle navigation features that are inaccessible to the driver while the vehicle is in motion. By applying active infrared sensors on the integrated center panel and an adaptive human machine interface design, Delphi's innovative technology can discriminate between driver and passenger control inputs, offering a "dual-zone control" capability.

Another unique patent-pending feature is detection of a driver attempting to lean over to view the passenger's display. This technology disables the display when this occurs.
ここまで

上記の私のアイデアもすでに誰かがパテントを出しているんでしょうね。

2007年のITSを予測する

2007年01月02日 | ITS
新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

さて、昨年同様、今年のITSがどのようになるのかを予測してみよう。

■好調
1.ETC
好調というより、今年あたりから普及は頭打ちになる可能性が高いと考える。
つける人は皆つけてしまって、装着台数の増加は鈍化するだろう。
ETC利用率は80%ぐらいで伸び悩むのではないだろうか。
頻繁に高速道路を利用しないユーザーに装着を無理強いすることは不可能だし、意味がない。

2.ワンセグTVチューナー付ナビ
ワンセグTVチューナーは、現在のアナログTVチューナーに取って代わるものになるだろう。アナログ停波まで5年を切り、アナログチューナー付ナビはユーザーの理解を得ることは出来ない。しかし12セグチューナーはまだ高い。
ワンセグが標準装備化し、12セグがオプション扱いとなるだろう。

3.USBオーディオ
これはITSとはいえないかもしれないが、メモリー価格の下落をうけてUSB接続対応カーオーディオが拡大する可能性が高いと思う。

■不調
1.テレマティクス
G-BOOK、CARWINGSともに中途半端な数の会員を抱えているため事業中止はないだろうが、大きな進展もないだろう。

2.ETC(DSRC)サービス利用
駐車場などでも局地的な展開はあるだろうが、マーケットを形成するまでには至らないだろう。
情報提供サービスは公共施設で実験的に行われる可能性があるが、それ以上の展開はないだろう。

3.PND(携帯ナビゲーション)
欧米ではさらに市場を拡大し、中近東やアジアといったカーナビが未発達な地域でPDNは新規マーケットを獲得するだろうが、国内市場の成長はないだろう。
個人的には現在位置がわかり、目的地が容易に設定可能で、かつ正確に目的地に誘導してくれれば、ナビの機能は99%満たしていると思うし、それだけであればPND程度のハードウェアで十分だと思っている。
しかし、既に様々な機能が満載された車載ナビを当たり前と思っている日本の消費者は、PNDでは満足しない。
さらに、実売価格10万円の車載ナビが存在するナビ激戦区の日本マーケットでは、PNDに市場獲得の余地はないだろう。

4.ビーコンVICS
ビーコンを活用した安全運転走行支援システムの実験が行われているが、肝心のビーコンはまったく普及しないだろう。
既に装着されているナビに大して、3-4万円するビーコンセンサーの後付は期待できない。
普及の可能性はナビに標準装備されることしかないが、価格アップに見合う消費者の評価がない以上は標準装備は進まない。
参宮橋実験で提供される程度の情報では消費者からの支持は得られないだろう。