ドラマには出て来ませんでしたが、花子の生涯に大きくかかわった人がもう一人います。
花子を語るにはなくてはならない人ですが、ドラマには片山さんらしき人は出て来ませんでした。腹心の友の蓮子さんより強い影響力の有った人です。(写真:片山廣子さん)
・・・・・・・
“片山廣子”
白蓮(柳原燁子)の紹介で入門した佐佐木信綱の竹伯会で、花子は15歳年上の片山廣子と出会います。廣子は信綱門下を代表する歌人であり、アイルランド文学の翻訳者としても知られています。
花子は大森の片山邸をたびたび訪れ、ショー、ワイルド、メーテルリンク、イプセンなどの作品を借り、新たな文学的な刺激を受けます。片山廣子によって近代文学の世界へと導かれました。
結婚後花子は東京大森に住んでいましたが、これは片山廣子の近くに住みたいという希望からだったのです。関東大震災後、花子が夫と共に自宅で出版兼印刷会社を起ち上げる際にも、廣子は金銭的支援を申し出ています。
最愛の息子、道雄を失った時、花子が立ち直るきっかけとなったのは、廣子から贈られたマーク・トウェインの“The Prince and the Pauper”でした。昭和2年「王子と乞食」として翻訳出版されたこの本は、花子の人生の記念碑的な作品となりました。
「もしも片山さんの近くに住んでいなかったら私の上に強く吹き荒れた生活の転変は、私をして、ただ生活の現実のために心を砕くことのみに忙しく、かって持っていた文学への夢も、失われてしまったかもしれないと思っている」と語っているように、廣子は花子にとって人生の曲がり角で、常に歩むべき道を示してくれた友でした。
・・・・・・・・
非常に大きな存在だったのですが、なぜ描かれなかったのかは謎です。
因みに、修和女学校時代からずっと花子の友人として蔭になり日向になり寄り添ってくれていた醍醐亜矢子さんは架空の人物です。醍醐さんが片山廣子さんだったのかな…。