平成8年6月
大弛峠(8:20)→夢の庭園(8:50~~5)→前国師(9:25)→三繋平(9:30~35)→北奥千丈(9:40~50)→奥千丈岳(10:36~46)
→北奥千丈(11:40~45)→国師岳(11:54~12:45)→大弛峠(13:30)
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(小川山か瑞牆山か、廻り目平を過ぎた地点より)
5時20分、間もなく着いた大弛峠は既に車でイッパイだった
雄さんは昨晩、急な仕事が入り帰宅が12時を回っていた
休む時間も無く出て来てしまったので、ここで初めて睡眠を取る事になった
早いパーティはもうすっかり身支度を整えて金峰山方面、国師ヶ岳方面
へと出発するところだった
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(略)
8時20分出発
標高は既に2360m 後方は大弛小屋
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夢の庭園より金峰山
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夢の庭園を抜け再び針葉樹林の中、黙々と高度を稼いで行くと
前方が急に明るくなり岩にガッチリ固められた前国師に出た
ここへ来るまでの急登の途中の事だ
「昨夜の酒が未だ抜けない、寝不足も祟ってきつい」とふとそんな事を洩らした
昨晩、仕事が終わってからI本部長と一杯やってkた」と言うのです
と言う事は酔っ払い運転で来たと言う事ではないか、冗談じゃない!
前国師までの急登を私は文句たれたれだった
略
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(後方、北奥千丈岳)
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前国師からほんの僅かで三繋平に出た、そこは樹林に囲まれた小平地で
国師と北奥千丈の分岐点である どちらも10分ほどで山頂だ
どちらを先に登ろうか・・・私達はジャンケンで決めた
私の勝ちで北奥千丈が先になった
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ハイマツが出て来ると山頂はもう目の前
あまりに簡単に立ててしまった事に拍子抜けの感が無くはなかったが
それでも奥秩父最高峰、それなりの貫録を漂わせていた
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北奥仙丈の奥千丈への道標が有り、それを見つけた雄さんは
「此処まで来たんだから行こう」と言う
私が家で調べたガイドによれば確か石楠花新道はキツイ上に
見返りが無いような事が書かれていた気がする
気が進まないまま岩をすり抜け石楠花新道に入った
その名の通り道の両側は未だ花を付けていない石楠花で埋まっている
直ぐに道は急坂に転じた これでもかこれでもかと容赦ない下降だ
一体どこまで下るのか 「これは帰りが大変」と私はブツブツ
雄さんの口から「引き返そう」と言う言葉は出ない
急下降を過ぎると平坦に成るが展望は木々に隠され林床は苔むした倒木ばかり
まるで深い森を彷徨っている感じで、なお気は晴れない
ジメッとした大気が体の熱を奪った だんだん無口になる
その時、単独男性が軽快な歩調でやってきた
奥千丈までの時間を聞くと「行き1:00 帰り1:30]と教えてくれた
そして再び足取りも軽く、瞬く間に引き離されみるみる姿を消した
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そしてまた急下降が始まった 全く先が読めない
唯一の頼りは男性が教えてくれたコースタイムだけだ
「此処まで来たら後戻りできないか」と覚悟を決めたら緑一色の
幽玄な世界に目を移すゆとりが出てきた
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下降も終わり再び平坦になった道をだらだら行くと先ほどの男性が
リュックを下ろして休んでいた
「ここが・・・山頂!」 キツネに摘ままれた様だった
(略)
苦労の割に見返りが無いとは、この事かと苦笑するしかない山頂を後に
一つ目、二つ目と辛い登りをクリア・・・
北奥千丈に戻り、そこで休んでいた登山者と一言、二言 言葉を交わし
国師ヶ岳へと歩を進めます
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南方が開けているので本来ならば富士山が見えるはずなのに今日は
ガスの中に身を隠し唯一西側にドッカリ坐す北奥千丈が望めるだけだった
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登り始めて休憩らしい休憩を取らずに来てしまったので
ここで初めて長い休憩をとった 何気なく雄さんの靴に目をやると
100座を迎える前に足首の部分が綻び始めている
楽しい事や辛い事がイッパイ詰まった靴だ
近くに居た登山者が靴を撮ってどうするのだろうかと
怪訝そうな目を向けている
さてと帰り支度をし、もう一度周囲に目を向けると左側の谷から吹き出す様に
濃霧が押し寄せ、みるみる北奥千丈を飲み込み全ての視界を閉ざしてしまった
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夢の庭園を過ぎ大弛小屋で一息
コーヒーを片手に今日の行程を振り返った
奥仙丈はただ苦しんだだけの頂だったが足を延ばした事により
奥秩父らしい雰囲雰気を味わう事のできた価値あるものだった
(略)
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二泊三日で甲武信~国師~金峰を廻るという単独の女性
世の中には凄い女性が居るものだ
感心して話を聞いている内に小粒の雨が落ちてきた
暫くは本降りになる気配はみられなかったが身支度をして車に戻った
今日の日帰り入浴は川上村の居倉(500円)
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