H11・6月
今年は空梅雨なのか連日真夏日が続いている。今日も気温の高い一日になりそうだ。戦場ヶ原に差し掛かると丁度ズミの開花期で、その量の多さたるや半端じゃない。
入山口を探していた雄さんが「入山禁止だそうだ」と言って戻ってきた。 1台、車が停まっているところを見ると警告を無視した様だ。朝食をとっていると夫婦連れも入山者カードを見たりしながら暫く躊躇っていたがロープを潜って入山して行った。身支度をし私達も6時45分出発
矢島市郎氏の句碑「白樺は月が夜来てさらすらし」
初めはカラマツ林の中、宙を舞うシロバンバやズミの花を愛でながらの緩やかな登りだった。やがて荒れた沢を紅いペンキ印に導かれて進んで行くと、いよいよ危険地帯ハガタテ薙のガレ場となる。
左斜面を見上げると、辛うじて落石を免れたが落ちるのも時間の問題と思える大石が幾つか目に留まり鳥肌が立ち緊張が走る。私達はV字谷をなるべく右寄りに沿って歩いた。それが終わると今度は砂礫の混じった斜面。これも崩落の置き土産なのだろう。
振り返ると登って来た谷が遥か下方に沈み戦場ヶ原の広がりのその上に日光白根山が覗いている。
実は今日、青ちゃんに丸山スキー場から日光白根山へ行くルートが開設されたので行かないかと誘いを受けていたのだが、あまり気乗りせず返事もしないまま今日、太郎山に来てしまったのだ。彼らは今どの辺りを歩いているのだろう。今、私達は踏ん張りのきかないザレた傾斜地と格闘中でーす。
下を見ると谷底はかなり下方に沈んだが上を眺めても稜線は姿を見せず体力的にも少しずつ余裕がなくなってきている。帰りに辿る山王帽子山の斜面には白骨の様なコメツガの樹木が飄々と侘しい。 “一歩一歩、足を前に出していればその内、着くさ”
「シャクナゲが咲いてる!」思わず声を張り上げた。まるで「お疲れ様!」と言っている様に・・・そこは太郎山と山王帽子山の分岐点だった。分岐を右に取り先ずは小太郎山を目指す。見事な巨木が立ち並ぶ静寂な風景が広がる中、ミヤマカタバミの白い五弁が浮き立っていた。
背後に人の声がする。雄さんがあまり派手で無い山桜にカメラを向けていると、それから間もなくして60歳は越えていると見える男性が一人、追いつき入山ルートを聞かれたので応えると「いけない人!」と優しく言って通り過ぎた。きっと山王帽子山を経てやって来たのだろう。・・・独り言を言いながら登って来た小父さんこそ変な人(笑)
分岐から45分、体力を駆使して樹林帯を抜けると広角の展望が広がる小太郎山に着いた。先ず目を奪われたのは、やはり大きく動じない男体山だ。一度登った山なので親しみを持って眺められる。
↑(男体山、その奥に中禅寺湖)
その右下に目を凝らすと鉛色の中禅寺湖も確認できる。一息入れ改めて遮るもののない展望に目を凝らすと一つ一つ同定してみると、その中には百名山が5山。展望のみならず標高2328mのこの山が300名山の一つと言う事はちょっと寂しい。私だったら絶対、太郎山を百名山に加えたい。
うっかり見逃すところだったが峰の脇に咲くミヤマキンバイの美しさに近づいてみると陽光いっぱいの南側斜面はミヤマキンバイは勿論、タテヤマリンドウやコイワカガミが、それこそあっちにこっちに。 ついつい興奮してしまった私はカメラを持って斜面をウロウロ。
気が付くと25分も時間がたってしまっていた。大展望と花を満喫した私達は大満足でザックを背負い太郎山へと歩をすすめた。(左奥に座っている人が先ほどの変な小父さん) 続きます(コメント欄はお休み)
日光連山を家族に例えれば、お父さん格である男体山とは対面済み、今回は長男の太郎山ですね。
まだまだ、続きが有りそうなのでお楽しみにして措きます。
表日光から奥日光に向かう車上から、男体山を眺めても「明らかに砂防堰が累々として築かれている」のが見て取れ、今尚 土砂崩れに直面しているのが分かります。
*立山連峰の裏側 (富山県側) には、カルデラ地形が存在して、近代に入り大災害もたらしている土砂崩落のリスクと今尚 向き合っているそうです。
☆「いけない人」の件、
『赤色でハイライト』されているからには、理解されていると認識して居ります。
私は300名山の一つ太郎山の方が好きです。
最近、男体山をマジマジと見ておりませんので解りませんが
そんな事になっているのですか?
そう言えば私が登った時(30年も前)も
一部、崩れていた場所が有りました。
人間が入りすぎなのでしょうね。
男体山から大真名子山・女峰山を経て、霧降高原のニッコウキスゲを見たんでした。
中禅寺湖から男体山を経て、太郎山にするか、大真名子山にするか、計画段階で迷って、男体山からの登り返しが楽そうな大真名子山にしたんでした。
もう記憶の彼方、三十数年前で、当時の地図もなくしてしまいました。志津避難小屋の水場がチョロチョロで枯れ葉をどけて上澄みを掬って食事にありつけました。
記憶が戻りました。ありがとうございます。
小屋で一泊して大真名子へ向かったのですが小真名子の山頂で断念。
とにかく吹き溜まりは未だ腰まで雪に埋まる状態でしたから
それで、かなり体力を消耗し先に進めなかったのです。
あの時、稜線上でみた巨大なエビの尻尾が忘れられません。