解禁

誰しも一度はあたふたした人（主に中年女性）を見たことあると思う。

かく言うわたしは毎日見ている。

レジで財布を忘れたと騒ぐ人、小銭をばらまいて慌てる人。

お客さんの年齢層が高いので、こんな人ばっかりだ。

わたしは、子供の頃ひどく間抜けだったので、そんな自分が嫌で

頑張って、てきぱきして（してるふり）しっかり者に（見えるように）なったのだ。

職場ではわたしが失敗すると

「珍しいね、そんなミス」とか

「そんな間違いするなんてホッとするわ」

なんて言われたもんだ。

いつも緊張してピリピリして自分の失敗にも他人の失敗にも厳しく、敬遠される始末。

これじゃいかん、と思って最近は肩の力を抜くようにしている、と言いたいところだが

抜けてしまった・・・というべきかも知れない。

やっぱり、しんどいんだわ、緊張感を持ち続けるってのは。

今日だって・・・。

免許の更新に行ったのさ。

取得以来のペーパーなんで当然ゴールド。

更新も五年振りなんで手順なんて忘れてる。

で、適正検査を待ちながら眼鏡出しとかなくっちゃ、と思いまして。

名前呼ばれてから探したら慌てるもんね。

金額を言われてからお財布出すような真似はしないのよ、ふふ。

普段かけていない眼鏡を取り出してびっくり。

なにこれ、レンズ外れてる！

なんで、なんで？　ああ、ネジが外れてる。精密ドライバーないと直らない・・・

「ＸＸさ～ん」

呼ばれちゃったよ。

「あの、レンズ外れちゃって。あ、持ってれば大丈夫かな」

手でレンズを押さえるさまはコントのようであったろう。

なんとか視力検査もクリアし、待てと言われた椅子で待つ。

やれやれ、あせったな。さて、次は何かな。講習聞くのかな。

コーヒー飲みたいけど始まっちゃうかな。

講習の時間割を見るとまだ時間がある。

うん、大丈夫。飲んじゃおうっと。

買ったコーヒーを飲み始めた途端に

「ＸＸさ～ん」

写真である。うわ、次は写真だったのか。コーヒーどうしよ。

持ったまま撮影する所に行くと、テーブルがあったのでホッとしつつ厚着に気付き

「脱ぎます、脱ぎます！」

誰も脱ぐなとも早くしろとも言ってないのに焦ってしまう。

で、写真を撮り終えると、ここで着ては邪魔だろうからと

片手にコーヒー、片手にダウンジャケットなどを持って出てくると

ズルズルと洋服が滑り落ちる。

親切なおじさんが「落ちましたよ」。

分かってるって。

「えへへ、いっぱい着てるから」・・・誰と喋ってんだ。

席に戻って再びやれやれ。でも講習聞いたら終わりだもんね。

ところが、講習の始まる時間になっても前の講習の人が出て来ない。

ひょっとして、これは前の講習ではなくてわたしが聞くはずの講習では？

うっかり呼ばれたのに気付かなかったのでは？

「あの、写真撮ってもらったんですけど講習はいつからでしょう」

「あ、お名前呼びますから座って待ってて下さいね」

え～ん。

流れを妨げまいと頑張るほど妨げているわたしである。

そんな自分を、最近ちょっと可愛いと思う。

いかん。