新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

対前年同月比プラス報道に思う

2014-01-29 08:11:20 | コラム
対前年同月比プラスへの疑問:

昨28日に紙パルプ専門商社の旧友と語り合った。その話題の一つに「紙板紙の出荷量が5ヶ月連続で対前年同月比プラス」報道があった。この報道を見た専門家は怪訝な顔をしていたのだった。そういう実感がなかったのだが、実態はその比較対象の「前年同月」は対前年比マイナス成長だった昨年のことで、それと対比して成長したという数字になっても、実際には数年前の水準には達していなかったということだった。

この対前年同月比プラスは百貨店の売り上げでも報じられていたが、そこには「昨年以前から低迷が続いており過去の水準に達したことではない」との注釈が付けられていた。そこで彼と語り合ったことは「景気が回復しつつあるとの印象を与えるためには『対前年同月比』報道も結構だろうが、実態と乖離している点には疑問を感じざるを得ない」という点だった。

これは「紙の需要の面では長引く不調から脱却出来ておらず、価格水準も低迷が続き、アベノミクスの効果で回復しつつあるかの如き景気の恩恵は未だに紙板紙には及んでいない」ということになる。彼は「香港等の東南アジア市場での価格水準も依然として低く、何処の国から見ても売り込みにいける状況にはない」と指摘していた。

彼が次ぎに深刻な問題として採り上げたことは、私も先頃述べたコンテイナーを引っ張る車を運転する運転手の不足だった。これは最早笑い事ではない事態にあり、たった1本の輸入品のコンテイナーを輸送するために何軒もの業者に依頼しても運転手不足で拒否されてしまう。従って、結果的には運賃の上昇=コスト上昇にも繋がっている由だ。

毎月彼と某商社マンとも語り合っているのだが、そこに出てくる問題点は「依然として紙パルプ業界は不調から脱していない。これが紙パだけの問題のなのか、または一般経済の景気回復が未だに跛行的で紙パの需要を回復させるまでに至っていないのか」なのである。

簡単に纏めれば「悩みは尽きないのであって、本日のように天気だけが暖かいのだ」となって終わった。