新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

6月26日 その2 「闇営業」と「直」を考える

2019-06-26 13:47:19 | コラム
国内に存在する異文化圏内の出来事:

吉本興業所属の芸人たちが反社会的勢力の宴会に、会社というか事務所に届け出ることなく出演して料金まで貰っていたことを、各テレビ局は恰も天下の一大事の如くに採り上げて、所謂専門家を呼んで色々と解説させたり論評させたりしているのを、私はどちらかと言えば「奇観」であると思って見ている。

当方はもう半世紀ほど「NHKを始めとしてあらゆる報道機関が相撲をスポーツ扱いしているのは誤りである。あれは一般人が住む世界とは異なる文化(ある特定の集団の言語・風俗・習慣・思考体系を指す)の下に暮らしている人たちである。故に、一般社会の常識に照らして何らかの批判や論評をするのは不当である」と主張し続けてきた。ご記憶の方がおられれば幸甚だが、私のこの持論は嘗ては某局の運動部長だった方から教え諭されて唱え始めたことだったのである。解りやすく言えば、「一般社会の物差しで相撲界を測るな」ということ。

今回は13人もの芸人たちが5年も前にとった非常識とも言える行動が写真週刊誌が暴いたことによって、各テレビ局が一斉に報じ出したのである。そういう報道とというかニュースショーのような番組を全部見た訳でもないが、司会の役を務めている者どもの発言と言い、その道の専門家たちの論評と言い、一聴芸人たちに「同情の余地無し」的な批判的な表現を採っている。だが、私が聞く限りでは、底流を流れているものは飽くまでも同業者に理解を示し、残念なことをした「相談してくれれば阻止してやったのに」と言いたげだった。

テレビ局とて同じ事で、彼らも具体的にそう表現しないだけで、お仲間の不慮の過ちを悔やんでいるとしか聞こえない優しさがあったと聞こえた。テレビ局の番組制作の狙うところは、既に彼ら自身が認めているように「知識階級を対象にして番組を創っていない」そうだから、仲間内の重大事として懸命に報じているのだと解釈している。その辺りはNHKが相撲をあれほど大事にして中継放送しているのと同じ感覚なのだと、私は看做している。即ち、芸人たちはテレビ局にとってはお目当ての層を目指す番組作りには重要な要因たちなのだ。

即ち、テレビ局が今日のように蔓延ってしまう世の中にあっては、芸人というかタレントたちは何時の間にやら彼らの仲間内だけの独特の文化圏を、言うなれば江戸時代からの歴史と伝統に輝く相撲界のように、形成してしまったのだと私は見ている。そこにはその階層独特の倫理観というか道徳までもが確立されているようなのである。バイキングとやらを司会する坂上忍は宮迫博之が加わっていたことを捉えて「(彼ほどの主演の番組を抱えていながら、高収入がありながら)直(闇営業と同義語)をやったのか」と嘆いて見せた。

私が言いたいことは「芸人とテレビタレントという集団が既に独自の文化圏を成立させてしまった以上、一般社会の常識を以て今回暴かれてしまった事務所の許可を得ていなかった『闇営業』を何のかのと言って批判したり非難することの意義は極めて薄い」という点だ。即ち、テレビという媒体が何時の間にか、こういう独自の文化圏を創り上げる手助けをしてしまったのだと考えれば、解りやすいと思う。私はこの件に関して論評する意義は余りないとは思ってきたが、「異文化圏内の出来事と論じることには多少意味があるか」と考えた次第。

換言すれば、そういう文化圏の他に一般の社会人が暮らす文化の世界があり、我々と言うか私はそこに永年居住しているのだと言えば良いのだと考えている。

トランプ大統領式交渉術か

2019-06-26 07:49:21 | コラム
日米安保条約破棄に言及したとか:

私はこのBloombergのニュースを見た瞬間に極めて単純に考えて、彼一流の交渉術というか駆け引きかと受け止めた。即ち、大統領は「片務契約でアメリカ国にとっては不利益だ」と決めつけられたようだが、かの第九条を含む現行憲法を我が国に押しつけたアメリカ側からしたら、先刻ご承知であったはずのことで、今更不利だ損だの得だのと言う視点からアメリカの大統領が言い出すのはおかしいのではないかと、私は言いたいのだ。「片務」と言われるが、私は我が国は集団的自衛権を発動すると言っていたのではなかったのかと、ふと思い出していた。

そこで考えたのだが、専門家やマスコミが何かと言えば「ビジネスマン」と形容したがるトランプ大統領は、私の22年余りのアメリカの大手製造会社に勤務した経験の範囲内では出会ったことがない種類の「ビジネスマン」だということだった。私はこれまでに何人かのアメリカの不動産業界の方とも接触があった。現に、W社第9代のCEO・ジャック・クレイトン氏は別会社になっていた不動産部門から昇格した人物だが、所謂「不動産業界人」の臭いは極めて希薄だった。いや、回りくどいことを避ければ、トランプ大統領のような駆け引きが強い経営者ではなかった。

そこで、この「日米安保条約破棄」は何の「デイール」を引き出す為の圧迫の材料だったのかという辺りを考えて見た。現実問題としては、数多の公約の中で積み残しになっている対日本の貿易赤字問題があるし、間もなく安倍総理との3ヶ月連続の首脳会談が予定されていれば「シンゾーよ、赤字削減策に重要な部分である対アメリカの数百万台もの(?)自動車輸出を手控えないようであれば・・・」と切り出す材料になるだろうかと見えなくもない。また、ライトハイザー代表が懸命に突っ張ってもTAG交渉が進んでいなければ・・・、とも考えられるかなとも思える。

上記は私独自の単純な考え方だが、真剣に我が国とアメリカの関係を考えて見れば、同盟関係をここでアメリカ側から断ってしまおうという方針を打ち出されるのであれば、問題は極めて深刻である。私には虎視眈々と我が国を狙っている隣国・中国があり、何かにつけて我が国に不当な問題というか案件を押しつけてくる韓国もある。北方領土問題もそのままであるロシアも近い。そういう立場にある同盟国である我が国を保護するのが安全保障条約である。それを破棄して貴重な同盟国を失うとすれば、我が国とアメリカにとって何らの利益にもならないと思うのだ。

トランプ大統領は如何なる損得勘定に基づいて側近だか誰だか不詳だが、そういう外部に漏れてしまうようなことに(本当に本気で)言及されたのだろうか。安倍総理は来たるべき首脳会談で可能な限りトランプ大統領の真意を確認して頂きたいものである。アメリカ人の思考体系(物の考え方)には「自分が大事であり、最優先だ」と「二進法的に割り切って決断する」という、我が国とは大いに違う太い柱があることを、再確認しておくべき時かなとも考えている。