トランプ大統領は何故乱暴な言葉遣いで支持層に語りかけるのか:
私はこれまでに繰り返して「トランプ大統領が“swearword”(汚い言葉)まで使って支配階級では使わない表現で、その支持層に語りかけておられる」と指摘して来た。だが、何故そのような語り口になるかの理由を詳細に述べてこなかった。そこで、今回はその辺りを分析して、アメリカという国の社会を構成している階層がどのようになっているのかを、私の22年半に及んだアメリカの大手製造業に勤務して知り得た実態を述べていこうと思う。恐らく、アメリカの会社に勤務された同胞で、私と同じような経験を積まれた方は極めて少ないか、あるいはおられないかと思っている。
第一に、これも繰り返しになるが、1994年7月に当時のUSTRの代表だった(俗に我がマスコミが「猛女」と呼んだ記憶がある)カーラ・ヒルズ大使の名言「対日輸出を増やそうと思えば、アメリカは識字率を向上させ、初等教育を充実させる必要がある」を挙げておきたい。当時でも今でも「まさか世界最大の経済大国で、先進国の先頭を走るアメリカでそのようなことがあるまい」と言われる方は多いと思う。だが、遺憾ながらこれは紛れもない事実なのである。私は経験上からも敢えてそのように断言する。
ヒルズ大使が名指しておられたのは、トランプ大統領が“working class”という表現で表された、彼の岩盤の支持層の主体である工場の労働者(即ち、職能別労働組合員)のことなのである。そこにはヒルズ大使が指摘されたような、初等教育も行き届いていない白人もいれば、少数民族も混じっているし、英語など解らない移民の集団も入っているのだ。このような実態である事は、我が国の方々には容易に理解できないだろうが、これは紛れもない事実なのである。
私はこれまでに「彼等労働組合員たちは法律で保護された存在で、会社側とは別個な組織であり、そこから会社側に移籍することは先ずあり得ないのだ」という点も繰り返して述べてきた。我が国のように新卒で入社して、先ずは組合員として工場勤務で経験を積むという文化はアメリカにな存在しないのだ。それだからこそ、アメリカの生産現場には初等教育も十分に受けていない者たちの為に仕事のマニュアルが常備されていて、彼等はそれに従って仕事の手順等を覚えていく建前だ。しかしながら、識字率に問題があってはマニュアルも役に立たない場合が屡々生じるのだ。
しかも、彼等は時間給制度であり、その時間給も年功序列で仕事の難易度が上がっていくのに伴って、自動的に近い仕組みで昇給していくのだ。即ち、極論をいえば「努力しなくとも、時が経てば昇給もするし、良い仕事を任されるようになる」のである。より解りやすく言えば、兎に角製品の質について十分な注意を払わずとも何とか製品を作り出していれば、生活が成り立っていくようになっているのだ。しかも、身分は恐らく一生涯労働組合員のままであるから、我が国の社員のような向上心などはかなり希薄であると言えると思う。
ここまでで何が言いたかったのかといえば、「こういう仕組みの中で言われた通り(マニュアル通り)の仕事さえしていれば良いというのが、極端に言った場合の労働組合員たちの物の考え方である。だが、こういう姿勢で製品を生み出されては、極めて品質に対して厳格で細かい点まで揺るがせにしない、アメリカの市場とは比較にならない難しい日本市場には、アメリカ製品は容易に通用しないのである。日本の市場に対しては「そんなことまで」と驚かされるほど細かい点に細心の注意を払った製品を送り込まないことには、受け入れては貰えないのだ。
これも何度も回顧したことで、私と技術サービスマネージャーのL氏は日本市場の品質と価格に対する厳格で細かい要求に合わせる為に、大いに苦労したものだった。そして、先ずは副社長の司令もあって、先ず私から先に組合員たちに「君等は非常に良く努力して貰っているが、もう一段品質改善の為の努力と技術の向上を図って貰えば、我が社の日本市場における占有率も高まる。それ即ち、我が社の我が事業部と君等の“job security”に大いなる貢献をして、将来を安定させるのだ」と説き聞かせた。
私の英語力というか表現力は会社側の中にあっては十分にnative speakerたちと遜色無しと認められていた。そこで、私も自信を持って組合員たちに語りかけたのだが、介添え役で付いてきてくれていた本部から工場に管理職に派遣されてきていた技術者が「今、彼が言ったことの要点は此れ此れ然々である」と、一々組合員たちに噛んで含めるように補足説明していたのだった。即ち、本部ではものの役に立っている外国人である私の表現力では難しすぎて、組合員たちには十分に通じていなかったということだ。これには驚かされたし、落胆もした。
更に知り得たことは、組合員の中にいたベトナム難民の者の質問は、私には一度聞いただけでは理解できなかったのだった。介添え役の通訳を待って答えられた。また、白人の組合員たちの言葉遣いはかなり乱暴で、一般論としていえば“swearword”などは当たり前のように出てくると思っていたら良いだろう。だが、何回も彼等との語り合いというかスピーチと質疑応答を繰り返せば、そういう言葉遣いには慣れてくるものだ。要するに、彼等向けの語り方があるということだ。
私は資本家であり経営者だったはずのトランプ大統領が、このような労働組合員たちどどれほど交流されたかなどは知る由もない。だが、あの明らかにプーアホワイト以下の少数民族までを含めた支持層に語りかけておられる際には、意図的に決して上品とは言えない言葉遣いになっているのは仕方がないことだと思って見ている。彼等に難しい理論だの政策だのを説いて聞かせて理解するかと言えば疑問だと思う。だからと言って、バイデン氏を罵り合いに持ち込まれることが上策かとも思えないのだ。だが、支持層を惹き付けておく手法として仕方があるまいと見ている。
私は工場で何人かの管理職から聞かされた嘆きは「確かに我々は組合員の為にマニュアルを作成してある。だが、彼等の中には読めない者もいるのまた事実だ。だが、もっと困ることは読んだふりをする者がいることだ」だった。この辺りが1994年にヒルズ大使が指摘された問題点と符合している。では、あれから26年も経った21世紀では事情が変わっているかだが、トランプ大統領が支持層に向かって語りかけられる言葉は決して品格があるとは言えないのだ。現に、トランプ大統領があれほど忌避される不法移民は増えているではないか。これがアメリカの現状だと思うのだ。
私はこれまでに繰り返して「トランプ大統領が“swearword”(汚い言葉)まで使って支配階級では使わない表現で、その支持層に語りかけておられる」と指摘して来た。だが、何故そのような語り口になるかの理由を詳細に述べてこなかった。そこで、今回はその辺りを分析して、アメリカという国の社会を構成している階層がどのようになっているのかを、私の22年半に及んだアメリカの大手製造業に勤務して知り得た実態を述べていこうと思う。恐らく、アメリカの会社に勤務された同胞で、私と同じような経験を積まれた方は極めて少ないか、あるいはおられないかと思っている。
第一に、これも繰り返しになるが、1994年7月に当時のUSTRの代表だった(俗に我がマスコミが「猛女」と呼んだ記憶がある)カーラ・ヒルズ大使の名言「対日輸出を増やそうと思えば、アメリカは識字率を向上させ、初等教育を充実させる必要がある」を挙げておきたい。当時でも今でも「まさか世界最大の経済大国で、先進国の先頭を走るアメリカでそのようなことがあるまい」と言われる方は多いと思う。だが、遺憾ながらこれは紛れもない事実なのである。私は経験上からも敢えてそのように断言する。
ヒルズ大使が名指しておられたのは、トランプ大統領が“working class”という表現で表された、彼の岩盤の支持層の主体である工場の労働者(即ち、職能別労働組合員)のことなのである。そこにはヒルズ大使が指摘されたような、初等教育も行き届いていない白人もいれば、少数民族も混じっているし、英語など解らない移民の集団も入っているのだ。このような実態である事は、我が国の方々には容易に理解できないだろうが、これは紛れもない事実なのである。
私はこれまでに「彼等労働組合員たちは法律で保護された存在で、会社側とは別個な組織であり、そこから会社側に移籍することは先ずあり得ないのだ」という点も繰り返して述べてきた。我が国のように新卒で入社して、先ずは組合員として工場勤務で経験を積むという文化はアメリカにな存在しないのだ。それだからこそ、アメリカの生産現場には初等教育も十分に受けていない者たちの為に仕事のマニュアルが常備されていて、彼等はそれに従って仕事の手順等を覚えていく建前だ。しかしながら、識字率に問題があってはマニュアルも役に立たない場合が屡々生じるのだ。
しかも、彼等は時間給制度であり、その時間給も年功序列で仕事の難易度が上がっていくのに伴って、自動的に近い仕組みで昇給していくのだ。即ち、極論をいえば「努力しなくとも、時が経てば昇給もするし、良い仕事を任されるようになる」のである。より解りやすく言えば、兎に角製品の質について十分な注意を払わずとも何とか製品を作り出していれば、生活が成り立っていくようになっているのだ。しかも、身分は恐らく一生涯労働組合員のままであるから、我が国の社員のような向上心などはかなり希薄であると言えると思う。
ここまでで何が言いたかったのかといえば、「こういう仕組みの中で言われた通り(マニュアル通り)の仕事さえしていれば良いというのが、極端に言った場合の労働組合員たちの物の考え方である。だが、こういう姿勢で製品を生み出されては、極めて品質に対して厳格で細かい点まで揺るがせにしない、アメリカの市場とは比較にならない難しい日本市場には、アメリカ製品は容易に通用しないのである。日本の市場に対しては「そんなことまで」と驚かされるほど細かい点に細心の注意を払った製品を送り込まないことには、受け入れては貰えないのだ。
これも何度も回顧したことで、私と技術サービスマネージャーのL氏は日本市場の品質と価格に対する厳格で細かい要求に合わせる為に、大いに苦労したものだった。そして、先ずは副社長の司令もあって、先ず私から先に組合員たちに「君等は非常に良く努力して貰っているが、もう一段品質改善の為の努力と技術の向上を図って貰えば、我が社の日本市場における占有率も高まる。それ即ち、我が社の我が事業部と君等の“job security”に大いなる貢献をして、将来を安定させるのだ」と説き聞かせた。
私の英語力というか表現力は会社側の中にあっては十分にnative speakerたちと遜色無しと認められていた。そこで、私も自信を持って組合員たちに語りかけたのだが、介添え役で付いてきてくれていた本部から工場に管理職に派遣されてきていた技術者が「今、彼が言ったことの要点は此れ此れ然々である」と、一々組合員たちに噛んで含めるように補足説明していたのだった。即ち、本部ではものの役に立っている外国人である私の表現力では難しすぎて、組合員たちには十分に通じていなかったということだ。これには驚かされたし、落胆もした。
更に知り得たことは、組合員の中にいたベトナム難民の者の質問は、私には一度聞いただけでは理解できなかったのだった。介添え役の通訳を待って答えられた。また、白人の組合員たちの言葉遣いはかなり乱暴で、一般論としていえば“swearword”などは当たり前のように出てくると思っていたら良いだろう。だが、何回も彼等との語り合いというかスピーチと質疑応答を繰り返せば、そういう言葉遣いには慣れてくるものだ。要するに、彼等向けの語り方があるということだ。
私は資本家であり経営者だったはずのトランプ大統領が、このような労働組合員たちどどれほど交流されたかなどは知る由もない。だが、あの明らかにプーアホワイト以下の少数民族までを含めた支持層に語りかけておられる際には、意図的に決して上品とは言えない言葉遣いになっているのは仕方がないことだと思って見ている。彼等に難しい理論だの政策だのを説いて聞かせて理解するかと言えば疑問だと思う。だからと言って、バイデン氏を罵り合いに持ち込まれることが上策かとも思えないのだ。だが、支持層を惹き付けておく手法として仕方があるまいと見ている。
私は工場で何人かの管理職から聞かされた嘆きは「確かに我々は組合員の為にマニュアルを作成してある。だが、彼等の中には読めない者もいるのまた事実だ。だが、もっと困ることは読んだふりをする者がいることだ」だった。この辺りが1994年にヒルズ大使が指摘された問題点と符合している。では、あれから26年も経った21世紀では事情が変わっているかだが、トランプ大統領が支持層に向かって語りかけられる言葉は決して品格があるとは言えないのだ。現に、トランプ大統領があれほど忌避される不法移民は増えているではないか。これがアメリカの現状だと思うのだ。