Fish On The Boat

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『時生』

2010-09-11 19:58:39 | 読書。
読書。
『時生』 東野圭吾
を読んだ。

僕は小説よりも論説もの・エッセイを読むことの方が多いです。
小説を読み終わったときには、良い小説であればすごく気持ちよくて
楽しんだなぁっていう気分になります。
それと同時に、自分に足りない何かがあることが脳裏に浮かんできて、
それに対して飢餓感をもつようになります。
だから、そういった飢餓感、多くの場合は知識欲なのですが、
それを満たすために論説ものを多く読むことになる。
若い頃に勉強が足りなかったこともあるけれど、
世の中には知らないことが山ほどありますよね。
せめて、物書きさんが語る世界とちょっとは張りあえるように、
物語に出てくる場面、状況、トリック、知識に新奇な気持ちにばかりならないように
なりたいなぁと思ったりもします。
また、読者に対して、新奇なものばかりを与えることで成り立つような作品よりも、
その内容の練り込み具合、展開、リアリティとフィクションのバランス、キャラクターなどで
読ませてくれる作品のほうが、価値は高いように思います。

今回読んだ『時生』は、すいすい読める種類の小説でしたし、
前述の分類の仕方でいえば、新奇なもので読者を打ち負かすというよりは、
どちらかというと、内容やキャラ、発想で楽しませてくれる作品でした。

どうしようもねぇなと思いながらも親近感を持ってしまう主人公。
そしてその主人公を取り巻く「陽」な感じのキャラクターたち。

伏線の、ちょっと軽い、上澄みをすくうように解釈したところでいうと、
死に瀕した者の最後の願いというのがあると思う。
ネタバレになるので、詳しくは書きませんが。

また、短い人生というものがどうしてもありますが、
それらを憐れむわけではないのでしょうが、
脚光を浴びせて、夢みたいなものを与えていますねぇ。

そういった意味も含めて、この小説は弱者の視点をでーんと中心に据えて
語られた物語だということもいえるでしょう。
死にゆくもの、そして社会的に弱い立場にある人々が中心人物です。

そして、勇気、無鉄砲、元気、馬鹿、感動、和解なんてものがあります。
どうです、この6つの言葉の集合をイメージすると、悪くない小説かな
っていう気がしませんか。
さらに、さっきも言ったように、読みやすいですから。

東野圭吾さんの本を読むのは、3冊目か4冊目。
その中では一番面白かったです。
感動するけれど、明るい小説ですね。
それにくらべて、たまに読む重松清さんの小説ときたら、
僕の選び方が悪そうだけれど、暗いのが多いもんなぁ…。
いやいや、重松さんの作品が嫌いなわけじゃないですよ。
じっくり読みたくなりますからね、彼の本は。
『きみの友だち』とか『流星ワゴン』は最高っすよ。

というわけで、今回東野さんの本が面白かったので、
そのうちまた彼の本を読んでみます。
シリーズものは苦手だから、単発系を狙いましょうか。
『容疑者Xの献身』はテレビで見たなぁ。
ドラマ化・映画化されている作品も多いですよね。
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