Fish On The Boat

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『国際協力ってなんだろう』

2011-04-17 13:33:55 | 読書。
読書。
『国際協力ってなんだろう』 高橋和志 山形辰史編著
を読んだ。

発展途上国の問題。
貧困、感染症、教育、知的財産、環境etc...
さまざまな問題を紹介し、他に、より学術的な分析、
たとえば産業集積(一つの都市や地方に産業が集中して経済活動をなす)、
そして技術革新の例、たとえば農業においての東南アジアにおける
「緑の革命」(1960年代からつづく、生産拡大のための米の品種改良など)
の紹介などがなされている本です。

各章の一つの単元が7Pで区切られていて、よくまとまっていて、
集中して読む分には読みやすいです。
ただ、それでも法制度のところなどは、言葉がうまく頭に入ってこなかったので、
ちょっと苦労して読みましたし、理解度は低いです。

そういう、ちょっと難しいところがあります。
岩波ジュニア新書なのですが、たぶん、中学生が読むにはけっこう厳しいと思います。
現代文が得意でいろいろな言葉を知っていたり、辞書で調べる労をいとわない人には
いいかもしれません。

海外で国際協力をしようと思っているわけでもないのに、何故このような本を
読んだかと言えば、内容からいろいろ類推して役立つことがあるだろうと
思ったからです。その読み通り、格差社会が到来している今の日本においても、
上記の貧困や、それと保険の問題ですね、そういったことがらが、
まるで遠くの出来事ではなく、日常の問題だということに気づくことになります。
日本は豊かですから、そういう社会の暗部的な問題って、霧に隠れているような
感じだと思うんです。そこを、発展途上国の現実を眺めることで、
他人の振り見てわがふり直せじゃないですが、自国の状態を把握するのに
フィードバックがあったりします。

条件付き現金移転政策というものが、途上国向けにあります。
たとえば、85%以上の出席をする子どものいる家庭の母親に対して、
補助金を与えるだとかというものです。
これって、日本でいえば子供手当じゃないですか。
子供手当が条件付き移転政策の簡易版のように見えてくる。
そして、なぜ条件付きなのかというところが本書に書いてあります。
85%の出席によって、勉学に挑む時間が増えて、子供の教育レベルが上がるというものです。
そのためには、出席させたことに見合う、教育の質っていうものが必要になってきます。
さて、そのあたり、日本の子供手当はどうなのか。
どうも、教育レベルを上げるためじゃないことが推察されますね。
つまり、高齢化、出産率の低下をおさえるための、現金(所得)移転政策なのでしょう。

また、他の諸問題についても、ぶっ飛んだ類推を必要とせずに、
日本の現状を改めて考えるのに役立つかなという気がしました。
問題認識に適しています。

ということで、本書の結びにも書いてありますが、
国際開発の問題全体を広く見回すのに向いている本でした。
国際協力をやりたいなと漠然と考えている方は、
まず、この本を手に取ってみて、どういうものなのかを把握してみて、
それから、気になるカテゴリーを新たに深く掘り下げてみるのが
良いかと思います。

まぁ、いまは日本が大変な時期ですから、海外に目を向けていられない
人が多いかもしれないですが、それであっても、
さっき書いたように、日本の諸問題としても読めるものなので、
時間のある方はさらっと読んでみても損はないでしょう。
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