Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『知らないと恥をかく世界の大問題』

2011-04-23 17:28:18 | 読書。
読書。
『知らないと恥をかく世界の大問題』 池上彰
を読んだ。

物知りでわかりやすく物事を解説してくれる、テレビでおなじみの池上彰さんの本です。
世界情勢が浅く広くわかる本でした。
僕の感想としては、池上さんはやっぱりテレビの人で、いろいろ受け答えの中から、
説明する方が向いているんじゃないかなという気がしました。
とはいえ、僕はあまりテレビを見ない人なので、最近の番組で池上さんを見たのは
ほんの数回しかありません。

軽い不協和から協和へ、というか、
軽い不安定から安定へ、というか、
そういうふうな語り口、レトリックが多いなというふうに見受けられました。
読んでいて、最初の部分で「それはそうだけど、それだけとは限らないんじゃないか」だとか
思わせられるのですが、読み進めるうちに、それも早い段階で「あぁ、そう繋がるのか」だとか
と納得させられます。

ただ、ページ数の問題でしょうか、多角的に解釈することはちょっと足りないかなと思いました。
そこが、広くて浅い、と僕が評した所以です。
なので、一つの章で、その情報を読者が吟味する楽しみといいますか、情報を吟味する労力でしょうかね、
そういうのはすごく省かれる種類の本でした。
ということは、そこに書かれている情報については、そのまま、比較検討などの材料も無いままに、
著者の物言いをそのまま信じてしまわないといけなくなるきらいがありました。
そういうのはできれば避けたく思ってしまいます。
そりゃ、他の本でも、書かれていることを「信じる」という行為は必要になってきますよね。
だけれど、池上さんのこの本に関しては、あまりにスマートすぎて、整然すぎて、
もっと現実は入り組んで複雑なはずなのに、その複雑さを省いてしまってこちらに見せているな
という気がするのです。納得がいきやすいことの裏返しです。
つまり、自身の論説に都合の悪い情報などもご存じのはずなのに、それは見せないようにしながら
論理的に情報の解説を構築していっている気がする。
さりとて、省いた情報には、省いたなりの考証がちゃんと著者の中にあって、
もし、ページ数にゆとりがあるなあらば、
そこのところもきちんと説明してくれるのかもしれない。

と考えてくると、やっぱり、意図的に軽くて、浅くて広い本を作ったんだなぁとわかってきたりします。
そして、そういう、全体を見渡して、主要なところだけを網羅した、世界情勢の本に
ニーズがあるだろうと踏んでの製作だったのかなという気もしてきます。

ここで気をつけたいのは、こういう本を読んで、なんでも知った気にならないようにすることでしょうか。
やっぱり、それなりに自分の頭をひねってこそ得られる知識や解釈ってあると思うんです。
数多く端折られて論じられたものは、全体的に軽くイメージを持つためというような目的で
手に取る、あるいは向かい合うべきじゃないでしょうか。

そういう僕は、こういった入門書的なものはまぁまぁ読むけれど、そこから専門的な本に挑戦することが
本当に少ない気がしますね。僕にしても、みなさんにしても、いろいろな種類の事柄に触れて、
そこからどれが自分の興味に合うのかがわかれば、
その分野の深い所に足を踏み入れてみるべきなのではと思うところです。
どうなんだろねぇ、ずーっと浅くて広いままでいることと、少し的を絞って、
それなりに深いものを身につけることって。


Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする