Fish On The Boat

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『落語百選 春』

2011-12-12 19:44:06 | 読書。
読書。
『落語百選 春』 麻生芳伸 編
を読んだ。

普段、落語を聴く機会はまったくと言っていいほどありません。
でも、それなりに興味はあります。
去年かおととしには、どうにも落語を聞きたくて、
たまたま閃いて新聞のラジオ欄をめくってみて、NHKの寄席番組を
聞いたことがあった。名の知らぬ落語家さんが手慣れた調子で
しゃべる落語を聴いたのだが、耳慣れぬ言葉などが理解できなかった
印象がありました。

だったら、活字でよみゃあいいじゃねぇか。
そうあたしは考えた。
「おーい、八っつあん、落語の本なんてものは、そのへんの本屋に売っているんだろう?」
「へぇ、旦那、売っておりますよ」
「あれだろ、文庫だろ。単行本だと、かさばってよくねぇ」
「ちくま文庫から落語百選ってのがでてるんじゃなかったかなぁ」
「そうか、八っつあん、それならおめぇ、ちょっとひとっ走りして買ってきてくんねぇ、
どら、これには路銀と駄賃も含めてある、とっておけ」
「旦那、ありがとうございます。ただあれですよ、落語の本ですが、「春編」を買ってきます」
「どうしてだい?」
「旦那に春が訪れるところがみてえからでやす」
「こいつぅ、馬鹿にされてるんだか、有難いんだか、わかりゃしねぇや」


とね、下手くそな落語調の小話をやってみたりなんだり。

小学生の時分に、そのくらいの年の子供を対象にした落語の本を読んだことがありました。
「饅頭こわい」だとか「目黒のさんま」だとか、有名な話はそれで知った。
ただ、あまりに有名でベタなのか、テレビとかで落語家の口からその話を聞いたことはなかったなぁ。
今読んでみると、まぁどの話が集められているのかによって印象が全然違うでしょうけれど、
とにかく詐欺とか騙しの話が多いですね。
それで、色っぽい話、それも吉原の話だとか、大岡越前の名裁きの気持ちのいい話だとかがあります。
先日亡くなった、立川談志師匠は、「落語は人間の業の肯定である」と言われたそうです。
こうやって読んでみると、すんなりそう思えるのですが、きっと、談志師匠の言葉には、僕の感じる高みよりも
もっとスパイラルして高いところにある観点で物を言ってそうにも思えてきます。

この本収録の25編の中での好きな話ベスト3は、「こんにゃく問答」「明烏」「湯屋番」でした。

教育ママさんなんかは、「落語なんか読んじゃいけません!」って言うでしょうね。
でも、落語を受け止める豊かさっていうのは人にはすごく必要なんだけれど、
落語を高尚なものとしすぎずに、その泥臭い部分をしっかり見据えて許容することって
大事なんじゃないかなぁと思いました。
悪いことをする人なんかわんさかでてきますが、それを嫌悪しすぎることなく、
逆に愛せたら、人間の深みが増しますね。
…お、ちょっと、強気になって言ってしまったよ。

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