Fish On The Boat

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『やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識』

2014-04-15 23:07:18 | 読書。
読書。
『やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識』 田崎晴明
を読んだ。

その名のとおりの本です。
「安全か危険かではなく、何がわかっていて何がわかっていないかを、
じっくりと、ていねいに。中学生以上のすべての人へ。」
と表紙に書かれているのですが、本当にそんな内容の本でした。

放射性物質とは何かということに迫るのに、
まずは原子や原子核の説明から入ります。
これは、以前紹介した『放射性物質の正体』という本
と同じような構成でした。
『放射性物質の正体』もわかりやすく放射性物質について説明してくれている本なので、
本書『やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識』と
併せて読んでみると、理解が深まるでしょう。

そして、この本で肝心なのが、
放射性物質による土壌汚染と食品汚染に関する考察と説明です。
これによって、安心する人もいるでしょうし、危ないと感じる人もいるでしょう。
そのあたり、危険かそうでないかに偏った見方で書かれてはいなくて、
フェアでニュートラルな視点で語ってくれるので、
読者としては信頼できそうに読めました。

また、本書を読んでやっと知ったことは、
土壌汚染で語られる、○○ベクレルという数値が、
はたしてどのくらい汚染されていて危険なのかということでした。
0.17μSv/hが空間線量の基準ラインなんですよね。
0.17まであると、4万ベクレルの土壌汚染が推測される。
4万ベクレルの土壌汚染といえば事故前では放射線管理区域に設定しないといけない値。
WEBで福島の空間線量をいろいろ見ると、
やっぱりすごい汚染だなぁと今もってわかったりします。

原発や放射性物質については、今後も何十年も議論したりつきあっていったり
しなければいけないシロモノです。
この国に住み続けるのであれば、
これらについて考えることをやめてはいけないよなぁと思ったりします。

震災から3年がたち、「放射線」や「原発」が以前よりも
ホットワードではなくなった感があります。
これまで放射性物質というものに対して、
トレンドとしての心理が働いていた部分もあるとは思うのです。
また、いろいろみんなが勉強したり教えてくれる人がいたりして、
それと急性の健康被害が無かったということで、
落ち着いた部分もあるのではないでしょうか。

でも、土壌に降り注いだ放射性物質は何十年も消えませんし、
福島第一原発の事故だって、収束なんかしていないでしょう。
だから、嫌なものだ、汚らわしいものだ、と忌避したい人も多いでしょうが、
そこは見つめていくべきことだとも思うのです。
ちゃんと伝えていくことが大事でしょうし、知識をちゃんと持つことも、
原発で電気を得てきた日本人の、ちょっと強い表現ですが、「義務」かもしれない。

僕のような、震災で被害のない地域に住んでいた人も、
東北や福島の事を忘れないでいることは大事なことではないでしょうか。
大変さが日常に同化していっているのかもしれない福島のことを、
想い、忘れずいること。
同じ人間で、しかも近しい、同じ日本人。
そうやって、思ったり考えたりすることで、
何か役に立つことを発見したり思いついたりするかもしれない。
そんな可能性をいろいろな人が持つことで、
何か好ましいことが生まれていくような気がします。

そういうわけで、本の話に戻ると、
本書の書籍版(つまり僕が読んだもの)と同内容か、バージョンアップされたものが、
WEBにアップされていて、ダウンロードできるようです。
以下のURLを参照ください。クリックで飛んでいきます。
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/radbookbasic/
著者の田崎さんは学習院大学の教授ということですが、
ありがたい仕事をしてくれたなぁと読みながら、感謝の気持ちになりました。
文体はなんとなく村上春樹さんに似ていた感じだったかもしれないですね。

「安全か危険かではなく、何がわかっていて何がわかっていないかを、じっくりと、ていねいに。中学生以上のすべての人へ。」と表紙に書かれているのですが、本当にそんな内容の本でした。

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