Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『夜のかくれんぼ』

2017-01-21 00:00:14 | 読書。
読書。
『夜のかくれんぼ』 星新一
を読んだ。

いま読んでも面白い、
言わずとも知れた名手によるショートショート作品集。

多作なのに、パターン化しないと言われているだけあって、
どの作品も真っ白なところからはじまって
それぞれの個性を持ってできあがっているような、
大粒感のあるショートショートばかりでした。

昭和の時代に活躍したひとには、
たとえば手塚治虫さんのようなやっぱり多作の人がいる。
そういう時代だったのかなあ。
現代は作りこむことに時間をかけている。
つまり、深さや広大さ、緻密さに時間をかけている。
ゆえに、手塚さんや星さんのように多作のひとってでてこない。
今読んでみてもとてもおもしろいのだから、
これら昭和の時代の多作のなかで生まれたものが、
現代の凝ったものと比べて劣っているものだということはないでしょう。
ファーストフードがはじまった時代のものでもあるから、
インスタントなもののように、
表面的にしか知らないひとは考えるかもしれませんが、
さきほども書いたとおり、そうではなく、
しっかりした醍醐味を感じさせてくれるんですよ、それぞれの作品が。

方法論なんかを再勉強して、
こういうテイストのものを今の世にやってみるのも、
それはそれで「攻め」なのかもしれないし、
読者を再開拓するようなことにもなる可能性ってありますよねえ。
……、いや、そこはライトノベルが後を引き継いでいるのかもしれないね。
ラノベって読んだことがないので、想像で言うのだけれども。

まあ、それはいいとして、
ショートショートを書くひとはとても話し上手なんだろうな、
という気がしました。
殊に、星新一さんなんかはモテそうだし。
知性でモテるんだから、かなわないですね。

また、
星新一さんに限るのかもしれないけれど、
ショートショートって、
現実性を写し取ろうとする気持ちが強いと
上手には作れないんじゃないか、という気がする。
ユニークな発想は、地に足をつけずに生まれていて、
作品にする時、すなわち執筆時にだけ
足を片方地につけながらやっている感じがしました。

それと、
主人公がとっぴな状況におちいってばかりですから、
精神科医がでてくる話が多いです。
そこは、星さんの作品はパターン化していないといっても、
ちょっとパターンを感じるところです。
話を進める上でしょうがないですけどね。

また、彼の違う本をそのうち読もうと思います。
手軽なエンタメとして、
僕としては最高の部類の作家のひとりです。


Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする