Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『三越伊勢丹 ブランド力の神髄』

2018-01-27 15:50:30 | 読書。
読書。
『三越伊勢丹 ブランド力の神髄』 大西洋
を読んだ。

世界一の営業利益を上げる、
三越伊勢丹グループの社長(当時)・大西氏自らが語る、
百貨店にとってもっとも大事なことと、
取り組んでいることについての話。

百貨店という商業形態そのものが、
衰退の一途を辿っているそうです。
売り上げ規模がずっと減少している。
そんな中、百貨店としてトップの地位にいる
三越伊勢丹ですが、
そうえいば、なにか良からぬニュースになっていたな、と
関係するニュースを過去へと追っていくと、
大西氏はクーデターでその座を追われたなんて記事も出てくる。
本書にはあまり書かれていませんが、
三越伊勢丹ホールディングスには、
ドロドロしていて保守的でどうにもならない体質が強くあるように見えてきます。
そんなわけで、頓挫してしまったのですが、
百貨店業界に革新を起こすその青写真はどうだったのかが
本書で語られているので、
それを読んでいくことになりました。

もっとも大事なことは、現場力だと言います。
スタイリスト(接客をする店員)こそが、
百貨店の顔であり、モノを売る最前線で活躍する社員であり、
彼、彼女らのモチベーションがちょっとでも上がれば、
顕著にそれが数字になって表れるそうです。
だから、スタイリストたちをどう大事にし、
働きやすくし、勉強してもらうか、なんですね。
三越伊勢丹では、営業開始時間を遅らせて営業時間を短くし、
スタイリストの負担を減らすことで、
逆にその接客の質をあげていく戦術をとりました。
長く働かせればいいってものじゃないのは、
他の業種でも一緒で、昨今よく言われていることです。
短い労働時間で効率よく仕事をするドイツ人と
比較されたりもしてますよね。

本書では、
これからの三越伊勢丹ホールディングスの戦略を簡便な形で述べてもいて、
その考えの道筋をたどっていくと、
なかなか勉強になるというか、面白いのです。
三越日本橋のコンセプトはカルチャーにあんるだとか、
伊勢丹新宿本店のコンセプトは、ファッションミュージアムだとか、
そういうのだけでも、へえ、と興味深くてイマジンーションをそそられますし、
脱・デパ地下という考え方も、それで足を運ぶのに抵抗を感じないのであれば、
いいんじゃないかなあと思えもしました。

百貨店の同質化が、衰退の主たる原因だと大西氏は喝破しています。
それ解消する策をいろいろと打ちながらも、
志半ばで社長を退任せざるを得なくなったのですから、
残念だったろうなあと思います。

僕は子どものころから何年か毎年、用事で一週間とか十日間とか、
東京の池袋に滞在することがあったのですが、
その頃は、西武デパートや東武デパートをぶらぶらしたりしてました。
まあ、ほとんど、夕食を食べに行って帰りに本屋さんに寄るような感じで、
子ども服売り場だとかいかなかったですけど、
一フロアが広大で何階もあるビルを歩いているのは楽しかったですね。
地下の惣菜売り場で弁当なんかを買って食べるっていうこともあって、
たとえば京樽の巻き寿司なんか、おいしかったなあと覚えています。

ただ、やっぱり、庶民としては、
デパートって高級で、背伸びしないといけないような、
上客になんてなれない異世界でもあるわけです。
シャツ一枚二万円、ネクタイに三万円、靴に十万円。
なかなか手が伸びないですよ。
でも、そういう場所があるのは、なんだか楽しいことは楽しい。
と、最近、買い物はずっとアウトレットで済ませている僕は思うのでした。

こういう業界の話ってなかなか知ることができないので、
おもしろく読みました。
そういえば、某百貨店に勤めていて、
今はどうかわからないですが、
酒類のフロアマネージャーをやっている友人がいました。
最近は連絡を取っていないからどうなっているかわかりませんが、
その世界の空気をちょっと感じられて、よかった気がしました。


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