Fish On The Boat

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『つくし世代』

2018-09-12 13:28:31 | 読書。
読書。
『つくし世代』 藤本耕平
を読んだ。

若者分析の本です。
とくにマーケティングに活かすべく研究された内容から若者を解説しています。
2015年に30歳を迎えるよりも若い世代、
そして、さらに若い2015年に23歳を迎えるより若い世代の二段階に若者を分け、
分析しています。

「ゆとり世代」「さとり世代」と呼ばる彼らですが、
著者は「つくし(尽くし)世代」という視点からも彼らを眺めることができる、と
新たな光の当て方をしています。
押し付けを嫌い自分で選ぶ感覚、ノット・ハングリー(脱根性論と言えると僕は思う)、
せつな主義など、まず2015年に30歳を迎えるより若い世代の特徴から僕なりに見えたことは、
他律性を嫌うところに幸せがあることを知っているということをとっかかりに、
彼らにはロック以降の音楽の影響ひいてはミュージシャンたちの影響が
多大なのではないかということです。
押し付けを嫌うのも、ノット・ハングリーも、せつな主義も、
70年代以降に浸透してきたロックなどをやるミュージシャンの歌詞や生きざま
(生きざまはあくまでイメージ戦略だけの場合もあるでしょうけれど)に
感化された親たちや、混ざり合った社会の空気を幼少時から吸って育ってきたがために、
こういう人間になってきた、と言えるような気がしてなりません。
「ゆとり」「さとり」そして指示待ちだとか批判もされる彼らですが、
そんな価値観や考え方をもった彼らが世代として出てきたのは、
わかりやすいところでさきほどは音楽だけに絞りましたが、
もっと考えてみれば、彼らの存在は、
音楽や映画、漫画などのサブカルチャーの勝利としての発現なのかもしれない。
そう考えてみると、
彼らへのイメージから悲観性が消えていきます。
おもしろいじゃない、と思えてくる。

2015年に23歳を迎えるより若い世代の特徴を読んでいくと、
さらにおもしろいです。
大体の若者が、ぬるヲタで、
シェアが当たり前のような感覚、
そして自分だけの得というより、
友だちの得や友だちといっしょの得を考え、GIVEする。
まるで、上の世代ではきれいごととされがちだった価値観が現実と混淆し、
現実離れしないひとつの新しいスタイルとしてできあがっている。

ただ、コスパを追求するだとか、ケチ美学だとかという点においては、
経済学の面から考えてみると、
市場が縮小して賃金も安いままになってしまう起点になると思われるので、
そこは若者にもいろいろ考えてみてほしいかなあと思いました。

おもしろかったです。
もう一度言いますが、やはりロックの勝利の権化のような世代でしょうか。
柔らかなかたちで結実したロックやサブカルの精神の根付き、と
僕には感じられます。


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