読書。
『銃』 中村文則
を読んだ。
社会の中の自分というものは、
どちらかといえば「点」として存在しているもののように
僕なんかには感じられていて、
それは孤独とか孤立とかとも関係があると思うのだけれど、
まあ、人とは線でつながり、
周囲からの情報は「摂取する」つまり
「点」の中に受け入れ取り入れて消化するものだと思っている。
しかし『銃』の主人公は、
自分について考えるのを拒んできたのもあるし、
施設に預けられてから現在大学生になっても
ずっと良い子として生きてきて人並みにうまくやってる
一見典型的な若者という体なんだけど、
性欲はしっかりありながらも自分というものが薄く、
社会や環境と自分自身がグラデーションで結びつく存在のようだった。
昨日見たドラマの影響かもしれなかった、それは見た映画の影響かもしれなかった、
だとかそのときの感情の理由を描写している箇所があるのだけれど、
それが中村文則氏のこの文体だと、
確固とした点としての個が影響を受けてしまった感じというより、
そのドラマなり映画なりといったものが彼を染め上げてしまう、
つまり内部まで浸食しているような影響といった印象。
『銃』主人公は社会や周囲や環境と均質な色として存在していて、
外界を遮る自分の壁というか膜というかが薄いあるいは無い感じすらする。
そして、それは社会や周囲や環境の色をすぐに通してそれらの色になってしまう感じ。
作品内で主人公はヒロインに
「何考えてるかわからない」「ふわふわ」と言われている。
周囲から自分を区別する壁が薄いから、
というかあえて壁を作らないのだろうから、
そのために自分というものが育まれていない。
フィーリングだけが比較的強くある感じのタイプだ。
だから銃を手にして面白い素材。
ストーリーも面白かったけれど、
それはやっぱりそのストーリーを流れさせた
主人公の思考やフィーリングの流れが面白いわけで、
そうすると『銃』は人物造形が
はっきり作品の起点となっていることがわかる種類の小説だったなと思った。
そしてそんな人物と銃との組み合わせで起こった化学反応の記述ですよね。
併録の『火』も面白かったです。
『銃』より数年後に書かれた作品ですが、
心理分析や文体に著者の成長を十分に感じました。
書いたものに成長がドカンと反映されているのは相当なことだと思います。
僕も書きものをするし、いろいろ読んだりしてますが(まあまだ少ないでしょうけど)、
ここまでボンと飛び出る感じで成長を感じることってなかなかない。
才能を感じながらの読書でした。
純文学でも、すごくおもしろい。
『銃』 中村文則
を読んだ。
社会の中の自分というものは、
どちらかといえば「点」として存在しているもののように
僕なんかには感じられていて、
それは孤独とか孤立とかとも関係があると思うのだけれど、
まあ、人とは線でつながり、
周囲からの情報は「摂取する」つまり
「点」の中に受け入れ取り入れて消化するものだと思っている。
しかし『銃』の主人公は、
自分について考えるのを拒んできたのもあるし、
施設に預けられてから現在大学生になっても
ずっと良い子として生きてきて人並みにうまくやってる
一見典型的な若者という体なんだけど、
性欲はしっかりありながらも自分というものが薄く、
社会や環境と自分自身がグラデーションで結びつく存在のようだった。
昨日見たドラマの影響かもしれなかった、それは見た映画の影響かもしれなかった、
だとかそのときの感情の理由を描写している箇所があるのだけれど、
それが中村文則氏のこの文体だと、
確固とした点としての個が影響を受けてしまった感じというより、
そのドラマなり映画なりといったものが彼を染め上げてしまう、
つまり内部まで浸食しているような影響といった印象。
『銃』主人公は社会や周囲や環境と均質な色として存在していて、
外界を遮る自分の壁というか膜というかが薄いあるいは無い感じすらする。
そして、それは社会や周囲や環境の色をすぐに通してそれらの色になってしまう感じ。
作品内で主人公はヒロインに
「何考えてるかわからない」「ふわふわ」と言われている。
周囲から自分を区別する壁が薄いから、
というかあえて壁を作らないのだろうから、
そのために自分というものが育まれていない。
フィーリングだけが比較的強くある感じのタイプだ。
だから銃を手にして面白い素材。
ストーリーも面白かったけれど、
それはやっぱりそのストーリーを流れさせた
主人公の思考やフィーリングの流れが面白いわけで、
そうすると『銃』は人物造形が
はっきり作品の起点となっていることがわかる種類の小説だったなと思った。
そしてそんな人物と銃との組み合わせで起こった化学反応の記述ですよね。
併録の『火』も面白かったです。
『銃』より数年後に書かれた作品ですが、
心理分析や文体に著者の成長を十分に感じました。
書いたものに成長がドカンと反映されているのは相当なことだと思います。
僕も書きものをするし、いろいろ読んだりしてますが(まあまだ少ないでしょうけど)、
ここまでボンと飛び出る感じで成長を感じることってなかなかない。
才能を感じながらの読書でした。
純文学でも、すごくおもしろい。