べたつく肌と朝霞。
響く足音が耳にも胸にも心地よい。
わたしは歩いている。
道の端から生の謳歌そのものといったたくさんの虫の声。
わたしの気配にびくつきもしない。
するどく高い鳴き声がして、鹿がいる、と見回す。
でもその姿を確かめることはできない。
わたしを悩ませるものがまた、これから始まる。
区切られ、区別された世界の肩を持たなくてはいけない。
色味さえメリハリばかりが褒められるこの世界の肩を。
規律で仕切られるものを守り、
小さなものも大きなものも、
順序だてて仕訳ていくよう身体も気持ちも規定される。
わたしは、省いたり、取り去ったりする行いにいつまでもなじめない。
零れ落とさせたあれやこれやにわたしは親しみを感じるのだし。
なのに、そうであっても、誰かに決定された時間の「意味」によって、
甘みも旨みも感じられない営みへと押し出されていくのだ。
取り巻く乳白色が薄まっていく。
わたしの胸は自然と切なく詰まってしまう。
先取りしてしまうのだ、
目覚めきった世界を。
引き裂かれそうな想いが甦ってしまうのだ、
混じり気を嫌う世界が到来する予感に。
もっと呼吸をしなければ。
この朝を、もっと吸い込まなければ。
世界がこんな朝だけだったなら、
わたしは探しものなんかしなくていいのに。
響く足音が耳にも胸にも心地よい。
わたしは歩いている。
道の端から生の謳歌そのものといったたくさんの虫の声。
わたしの気配にびくつきもしない。
するどく高い鳴き声がして、鹿がいる、と見回す。
でもその姿を確かめることはできない。
わたしを悩ませるものがまた、これから始まる。
区切られ、区別された世界の肩を持たなくてはいけない。
色味さえメリハリばかりが褒められるこの世界の肩を。
規律で仕切られるものを守り、
小さなものも大きなものも、
順序だてて仕訳ていくよう身体も気持ちも規定される。
わたしは、省いたり、取り去ったりする行いにいつまでもなじめない。
零れ落とさせたあれやこれやにわたしは親しみを感じるのだし。
なのに、そうであっても、誰かに決定された時間の「意味」によって、
甘みも旨みも感じられない営みへと押し出されていくのだ。
取り巻く乳白色が薄まっていく。
わたしの胸は自然と切なく詰まってしまう。
先取りしてしまうのだ、
目覚めきった世界を。
引き裂かれそうな想いが甦ってしまうのだ、
混じり気を嫌う世界が到来する予感に。
もっと呼吸をしなければ。
この朝を、もっと吸い込まなければ。
世界がこんな朝だけだったなら、
わたしは探しものなんかしなくていいのに。