Fish On The Boat

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『人とのつながりとこころ』

2016-02-07 23:02:38 | 読書。
読書。
『人とのつながりとこころ』 今川民雄 山口司 渡辺舞 編著
を読んだ。

人とのつながりにおいてのこころの動きの研究・考察を、
わりあい平易な文章で紹介する本です。
編著者は3名、執筆者は15名。

まず本書の序盤にある、
ブログをやるようになった動機としての調査で、
まだウェブ日記と呼ばれていたころには
「自己表現の為」と答える人が過半数くらいいたのに対して、
それから10年後くらいの調査では「自己表現」派は10%強くらいになっている。
そして前者で2位だった「他人もやってるから」派が後者で1位に。

自覚をもってこそ自己表現に臨むような時代から、
それから10年くらいで無自覚に自己表現をする時代になったっていうことなんだろう。
意外に気付けていない変化。
しらーっとそういうふうに変わっていっている。
ツイッターやライン、FBなんかもそういうのに拍車をかけていますよね。

ぼくは古めかしく、「自己表現」派であるかな。
というか、表現力を鍛えたかったし、文章力も鍛えたかったし、
自己研鑽の意味合いが強かったです、はじめた当初から、今でもそうかなと思う。
同時に、楽しもう楽しませようともしているんだけれど。
なにかしら自分が世の中に波紋を広げられるかも、という思いもすこし。

変わって、おひとりさまと呼ばれる、ひとりきりの状態の調査。
おひとりさまには、「能動的なひとり(ポジティブ)」
「受動的なひとり(ネガティブ)」の2種類があるのはわかっているけれども、
あえてひとりになって自由を味わうような「能動的なひとり」よりも、
ぼっちの「受動的なひとり」のほうにみんな目が行き勝ちじゃないか。

ポジティブなひとりに対しても、
ネガティブさや落ち付かなさを感じるのが青年期らしい。
その感情的基準をいつまでもひきずったオトナだとか、
それこそ青年期真最中のひとだとかが
「おひとりさま」にぼっち的な意味付けをしてしまって、
どっちつかずのひともネガティブな「ぼっち」の意味合いに
引き寄せられるというのがありそう。

要は、「おひとりさま」って、
ネガティブなイメージがつきやすいということでしょうかね。
みんな、孤立だとか「受動的なひとり」に対する恐怖が強いんだと思った。

恋愛をしている人にはポジティブな特性があるとみなす「恋愛ポジティブ幻想」、
世の中の恋人がいる人の割合を実際よりも多く見積もる「恋愛普及幻想」。
これらによって、恋愛をしていないと、
自分はポジティブじゃない、自分は少数派だと勘違いして
自尊心を傷つけてしまうそうです。

昨今、おひとりさまが増えていることから、
そういった「幻想」によって傷ついた人も以前よりも多くなっていそうに思えます。
それで、そういった自尊心を傷つけて劣等感を持つようなことになると、
がんばれなくなるという精神状態になり悪循環を生む。
世の中の元気のなさの一つの理由がここにあるかも。

そしておひとりさまをひとりぼっちととらえて
ネガティブなイメージと恐怖心を持つ人が多い。
それでいて価値観の多様化などによって未婚者や恋人のいないひとり者が増えている。
そういうことが意味するのは、やはり劣等感の強まりなんじゃないか、
そしてそこから影響していく頑張れない精神状態を思うのです。

価値観の多様化によって、
人はひとりになりがちな状況に急に放りこまれた、
と言えるかもしれない。
あまりに急だったものだから、
あっぷあっぷしているのが現代なのかなあ、と思いもしました。

さてさて、編著者のひとり、山口司さんは、
ぼくの昔のバイト仲間です。
それで、新しい本書いたら買うよ、なんてメールで話していたら、
この新刊をプレゼントしてくれたのでした。

この場を借りてお礼を言います、ありがとう。
興味深いことばかりで、ひきこまれて読みました。
おもしろかった。


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