Fish On The Boat

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『君が降る日』

2016-02-02 22:32:22 | 読書。
読書。
『君が降る日』 島本理生
を読んだ。

作者の島本さんって高校生のときにデビューしていた人ですよね。
早熟の人なんだろうと思いながらも、
その早熟さから成長して今があるのだろう、
だからこそ、早熟のまま消えていかずに、
名のある作家になったのだろうと想像して、
興味を持っていたのですが、今回はじめてその作品を読みました。

表題作を含めて3作品収録されています。

『君が降る日』は恋人の死から始まる物語で、
ちょっと「喪の仕事」なんて言葉を知っていると、
どうやって癒されていくのか、
その過程を綴る話かなという気がしてきます。
しかし、この作品には、そういう面がありながらも、
それだけに終わらない、ある種めずらしい展開が待ち受けています。
そして、そこにこの物語の醍醐味がある。

二作目の『冬の動物園』はラブコメディで、
ぼくは三作の中でもっとも好きだった。
気のきいた、笑いの取れる男女の心理上のかけあい、
言葉でのかけあいが、
読んでいて実にセンスがいいと感じられた。
きっと、でこぼこの男女二人ではあっても、
深いところでの相性は抜群なのではないかと思えるほどです。
そして、そう考えてしまうほどこの物語には引き込まれてしまいました。

三作目の『野ばら』は、
ラストできゅっと締まって、その味わいが文学的だなあと感じられた。
そういえば、自分が中高生時代に味わっていた気持ちって、
このラストにあるようなものだったなあと思い出したりもして。
中盤はなんとなく、前二作にくらべて流れが遅いというか、
あまり核心を突いた心理描写ではないような気がしたのだけれど、
最後にはつじつまが合うような話でした。

島本理生さんはまだまだ代表作があるので、
そのうちに、そっちにも食指を伸ばすでしょう。

おもしろかったです。


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