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米で存在感増す中国マネー

2013-07-08 08:01:51 | 報道/ニュース
7月7日 NHK海外ネットワーク


米中戦略経済対話において注目されているのは両国の結びつきが強まっている経済面での課題である。
いまアメリカ国内では中国企業によるアメリカ企業の買収が急増していて
投資総額はこの4年間で約8倍になっている。

6月に開かれたアメリカ人と中国人ビジネスマンの交流会。
アメリカに進出した中国企業の団体がアメリカ企業との新たなビジネスチャンスをつかもうと開いた。
(中国人ビジネスマン)
「企業の吸収合併や買収などを専門に手掛けています。
 事務所にも来てください。」
「次の商談につなげるためにみんな売り込みに必死です。」
アメリカでは今こうした交流会が各地で開かれている。
アメリカの基幹産業でもある自動車産業の中心地 中西部デトロイト。
デトロイトでいま目立つのが中国企業の進出。
これまでに100社以上にのぼる。
その多くが地元の自動車部品メーカーを買収している。
アメリカ企業の買収を重ね急成長を遂げている中国企業の1つ ワンシャングループ。
ワンシャン・アメリカの社長は約20年前に中国の本社から派遣され
数人の従業員とともに自動車部品の販売から始めた。
(ワンシャン・アメリカ社長)
「何もない状態から始めたので最初はとても大変だった。」
アメリカ全土で業績が低迷する企業を中心に買収を続けてきた。
ワンシャングループが買収した部品会社は全米で26社。
今や傘下の企業で働く従業員は1万2千人以上。
年間の売上高は3,000億円にまで成長した。
アメリカで生産さえる自動車3台に1台にグループ企業の製品が使われている。
米ミシガン州の自動車部品メーカーもワンシャングループに買収された企業のひとつ。
創業90年の老舗である。
大手自動車メーカーと長年取引を続けてきたが業績は伸び悩み
2006年にワンシャングループの傘下に入った。
中国企業の一員となることには不安もあったと言う。
(自動車部品メーカー社長)
「中国人に買収された会社で働くことはもちろん抵抗もあった。」
そこでワンシャン・アメリカの社長が大切にしたのがアメリカ人に経営を任せることだった。
雇用も維持し社員との信頼関係を築いていったのである。
(ワンシャン・アメリカ社長)
「われわれはアメリカ側の経営陣とチームを組む。
 中国から人を送り込んだりしない。
 彼らの会社だから。」
原材料は価格の安い中国本社からの製品に切り替え大幅なコストダウンを果たした。
グループの豊富な資金力を活用しメキシコに新たな工場を建設するなど事業の拡大にも成功した。
(自動車部品メーカー社長)
「彼らは支援を惜しまないし我々も支援を惜しまない。
 彼らに感謝している。」

一方で中国企業によるこうした積極的な買収はアメリカ社会に議論を巻き起こしている。
(米ABC 去年10月)
クリーンエネルギーのベンチャー企業がまた一つ経営破たんした

去年経営破たんしたリチウムイオン電池メーカーは
アメリカ政府から200億円以上の補助金を受け電気自動車に使われる最新技術を保有していた。
このメーカーもワンシャングループが買収したが議会の一部からは強い懸念が示された。
“税金で開発された技術が中国企業に流出するのではないか”
企業の買収を通じ最先端の技術が中国に流出することを警戒したのである。
さらに食品の分野でも今年5月に発表された
中国企業による食肉加工メーカーのスミスフィールド・フーズの買収。
買収額は約4,700億円で中國企業の買収では過去最大規模である。
これについてもアメリカの議会で“食品の供給が中国企業に抑えられてしまう”
という不安が広がった。
このため関係者に意見を聞く公聴会を開き議論することになっている。

流入する中国マネーにどう向き合っていくべきか。
(ブルッキングス研究所 バリー・ボスワース氏)
「中国企業による買収に国民の抵抗感があるのも確かだ。
 しかし結びつきが強まれば対立は起きにくくなる。
 安全保障上の問題や技術流出などが起きなければ
 関係強化はアメリカにとって良いことだ。」

中国企業の投資は今さまざまな業種に及んでいて
アメリカのものづくりの現場や雇用の一部が中国によって支えられているという実態がある。
エネルギーや軍事関連、重要技術など国の根幹にかかわる部分への投資には
アメリカは極めて慎重だがそれを除けば基本的に中国側の投資を歓迎すると言うのが今の立場。
アメリカ企業にとって巨大な中国市場とつながって輸出が増えることは
輸出倍増を目指すオバマ政権にとっても大きなプラスである。
しかしアメリカ企業が逆に中国に進出しようという場合には
中国国内の外国企業の投資に対する認可の仕組みが複雑だったり時間がかかるうえ
規制や税制で差別的な扱いを受けるなど一筋縄ではいかないという根強い不満がある。
このため今回の戦略対話でアメリカ側としては
公平な競争ができるよう中国側に対応を迫る考えである。
さらにアメリカは中国の知的財産の保護が依然不十分なことを問題にしている。
ソフトウェアの違法コピーといった著作権の侵害などで
アメリカの企業が多大な損害を被っているとして是正を急ぐよう求めることにしているとみられる。

中国もアメリカからの投資の拡大はのどから手が出るほど欲しいところである。
6月 成都で開かれた国際フォーラムでも最高指導部の1人張高麗筆頭副首相が
各国から集まったビジネスマンに呼びかけた。
「我々は海外企業の中国への投資を歓迎する。
 外国企業の権益は確実に守る。」
ただ中国政府が中国の国有企業と外国企業が対等な条件で競争できる関係を築くことには限界がある。
中国国内で銀行から有利に資金を借りられるなど国有企業が享受してきた既得権益にメスを入れれば
反発が避けられないことや
国有企業が外国企業との競争にさらされれば国内の雇用が脅かされかねない。
発足したばかりの習近平政権にとっては
こうした改革を一気に進めて社会不安を招くのも避けたいところである。
こういったことからも今回の戦略経済対話で
アメリカ側からの注文にどこまで具体的な改善策を示すことができるのか1つの注目点である。
中国では6月 銀行間で資金をやり取りする短期金融市場の金利が急激に上昇し株価の急落を招いた。 
背景にはアメリカが大規模な量的緩和を年内にも縮小する考えを見せたことで
各国の投資家が中国などの新興国に投資した資金を引き揚げようという動きが広まったことがある。
このため中国はアメリカの金融政策に対し
新興国経済への影響も配慮して進めるよう注文を付けるとみられる。
先月の米中首脳会談で中国側は双方が協調しながらお互いの間の問題や
国際社会の問題を解決していく新しい形の大国同士の関係を提唱した。
今回の対話はその関係を具体的に形作っていくことができるか
最初の試金石となる。
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