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“祖国に平和を”シリア菓子職人

2013-07-15 09:25:33 | 報道/ニュース
7月6日 おはよう日本

アラブ諸国に伝わる伝統のお菓子の中で洗練された味で知られるシリアのお菓子。
激しい内戦が続くシリアを逃れた一人の菓子職人がいる。

シロップをたっぷりとかけて焼き上げるアラブのお菓子。
中東諸国では食後のデザートとして食卓に欠かせない。
なかでも人気なのが“小鳥の巣”と呼ばれるシリア伝統のお菓子。
ミルフィーユのような薄いパイ生地を何層も重ね
シリア名産のピスタチオをふんだんに使っているのが特徴である。
このお菓子を慣れた手つきで作るこの道20年のシリアのベテラン職人ジハード・クルブイサさん。
シリアは戦闘が激しさを増し死者は2年間の9万人超。
クルブイサさんも多くの友人をなくし故郷を去る決意をした。
去年11月に家族を連れて首都ダマスカスを後にした。
(シリア人菓子職人 ジハード・クルブイサさん)
「いまのシリアは誰もが突然銃撃されてもおかしくない。
 甥が生きているかどうかさえ分からないんだ。」
戦火を逃れて一家4人でやってきたのは妻の実家があるパレスチナのガザ地区。
長年イスラエルとの対立が続く紛争地で再出発となった。
ガザではイスラエルによる経済封鎖が続き物不足が深刻である。
店では老朽化した電気系統がトラブルを起こした。
修理しようとしたが部品が手に入らない。
なんとか電気は通ったが今度はオーブンが故障。
電源がついたり消えたりして温度が安定しない。
お菓子作りに欠かせない器具も不足。
ピスタチオを砕く機械がないため代わりに生地を伸ばす道具を使っている。
クルブイサさんを苦しめているのは物不足だけではない。
ガザに移り住んできた去年11月 イスラエル軍は大規模な空爆を実施。
今も断続的に攻撃が続いている。
(ジハード・クルブイサさん)
「ガザに来てから毎日のように砲撃があって子どもたちがおびえているよ。」
厳しい環境のなかでアラブ世界で洗練された味で知られるシリア伝統のお菓子を作り上げてきた。
クルブイサさんのお菓子はガザの人にも大好評。
「シリアのお菓子が食べられるなんて夢みたいだ。」
ガザに移り住んで半年あまり収入は3分の1に減った。
しかし祖国シリアでは内戦が激しさを増していて帰るめどは立っていない。
(クルブイサさんの妻)
「シリアは良いところでした。
 それがメチャクチャになってしまった。」
(次男)
「シリアにはもう戻れないの?
 ここでも戦争しているもの。」
戦乱の祖国を逃れ避難先でも厳しい現実に向き合う家族。
父親の作ったお菓子が心の支えになっている。
(クルブイサさんの長男)
「おいしい。
 楽しかったあのころを思い出すよ。」
(ジハード・クルブイサさん)
「いつかシリアに平和が訪れ家族と帰れる日が来ると信じています。」
シリアとガザ。
2つの戦火に翻弄される菓子職人のクルブイサさん。
平和を願う思いを胸に今日も故郷のお菓子を作り続ける。

シリアからの難民の多くは隣国のレバノンやヨルダン、トルコに逃れている。
その数は国連難民高等弁務官事務所によると
先月までに160万人にのぼっているということである。
化学兵器の使用も疑われるなど内戦はおさまる兆しがないということで
クルブイサさんのような難民は日々増え続けている。
コメント

マレーシアに見るTPPめぐる議論

2013-07-15 09:00:38 | 海外ネットワーク
7月14日 NHK海外ネットワーク

TPP環太平洋パートナーシップ協定。
日本も初めて加わることになる各国による交渉が15日~25日の日程でマレーシアで始まる。
TPPは太平洋を囲む国々が
関税を撤廃するなどしてより自由な貿易や投資を進めていこうという枠組み。
交渉に参加しているのはアメリカやシンガポールなど11か国。
日本は今回の交渉から新たに加わる。
参加している国のGDP国内総生産を合わせると世界全体の約3分の1。
実現すれば太平洋地域を中心に巨大な経済圏が出来上がる。
TPP最大の特徴は関税の撤廃だけではなく
国内企業と外国企業が公平な競争を行なえるための環境整備や著作権や特許の保護など
21もの幅広い分野について細かくルール作りを行うという点。
年内の決着を目指しているが
ここにきて各国のビジネスや市民生活に大きな影響を与える分野については
経済力を背景に交渉の主導権を握ろうとするアメリカとそれ以外の国の間で意見の隔たりが一段と目立つ。
今回の舞台となるマレーシアでは
特許の保護の在り方や企業同士の公平な競争をどう確保していくかをめぐって
国民の間で議論となっている。

企業が申請した特許はどこまで保護すべきなのか。
TPP交渉での論点の1つがマレーシアでのデモの原因となっている。
声をあげているのはエイズウィルスの感染者たち。
エイズの治療にジェネリック医薬品を使っているが
TPP交渉の行方によってはこの薬が手に入らなくなってしまうと懸念している。
(デモの参加者)
「このままでは買える薬がなくなって生活ができなくなる。」
ジェネリック医薬品は
薬を開発した際の特許が切れるなどした後
特許を持たない別のメーカーが同じ有効成分を使って製造する薬である。
研究開発の費用がはぶけ安いのが特徴。
ところがTPP交渉でアメリカは
製薬会社の利益を守るため薬の特許が有効な期間を長くするべきと主張。
この主張が交渉で認められればジェネリック医薬品が出回りにくくなる可能性がある。
エイズウィルスの感染者を支援しているNGOの事務所には
ジェネリック医薬品を受け取ろうと毎日のように人々が訪れる。
NGOで働くエリシャ・クリシュナンさん。
自らもエイズウィルスに感染しジェネリック医薬品を服用している。
1か月の薬代は日本円で約1万2,000円。
月収の4割に相当するが現在はマレーシア政府から全額補助が出ている。
しかしTPP交渉でアメリカの主張が通りジェネリック医薬品が出回りにくくなると
補助金では賄いきれず薬が手に入らなくなってしまうとクリシュナンさんは懸念している。
(クリシュナンさん)
「薬代が払えなくなるのは明らか。
 私たちのことをちゃんと考えてほしい。」

TPPでのもう1つの論点である公平な競争の確保をめぐる交渉の行方も
マレーシア経済の行方に少なからぬ影響を及ぼすものと見られている。
マレーシアでは国民の6割を占める多数派のマレー系住民を優遇する政策が長年取られてきた。
マレー系住民を雇う企業に政府は優先的に仕事を発注してきた。
優遇措置を受けてきたジュースのメーカー。
40人の従業員全員がマレー系の人たち。
年間の売り上げの3分の1余はマレーシア政府から受注したものである。
TPP交渉の結果で 
外国企業の参入を促すために国内企業への優遇措置が撤廃されるようなことになれば
マレーシアの各企業は経営戦略の見直しを迫られる可能性がある。
(ジュースメーカー社長)
「先進国からどっと入ってくる企業との競争になるので
 マレーシアの企業にとって脅威となるだろう。」
TPPは本当にマレーシアに利益をもたらすのか。
民間の経済団体などが政府の考えを確かめようと交渉責任者を招き会合を開いた。
出席した市民からは現状ではTPPはマレーシアの国民の生活に悪影響を及ぼすとの意見が相次いだ。
「TPPを安易に受け入れるな。」
「アメリカは自分たちのことしか考えていない。」
これに対し政府の交渉責任者は反論。
“課題はあるものの発展のためにはTPPに参加の必要”を訴えた。
(マレーシア政府 交渉責任者)
「交渉で自分の国を売り渡すわけはない。
 私たちはマレーシアの利益を確保するため交渉している。
 マレーシアは貿易国だ。
 扉を閉ざすと成長は望めない。」

交渉に参加している各国は
10月に大筋で合意し年内の交渉妥結を目指している。
しかしマレーシアの例のように他の国でも市民生活や国の制度の根幹にかかわる部分で
TPPの影響を懸念する声が高まっている。
どの国も抜き差しならない事情を抱え安易な妥協は許されない状況である。
前回5月の交渉まで各国は年内の交渉妥結を目指すと一致した態度をとってきたが
ここへきて一部の国から交渉の進展について悲観的な見方も出始めている。
(シンガポール 貿易産産業相)
「10月の合意を目指しているがそこが無理なら来年
 もしかしたら再来年にずれ込むかもしれない。」
厳しい見通しの背景には関税の撤廃や知的財産の保護、国有企業の規制の在り方などをめぐり
調整が難航していることがある。
今回のマレーシアでの交渉は
こうした各国の利害が対立する分野に絞って密度の濃い協議が展開されるものとみられている。
東南アジアの交渉担当者の間では実は日本の役割に期待を示す声も聞かれる。
アメリカ1国の経済規模がその他の10か国の規模を合わせたものより大きいため
現在の交渉ではアメリカが主導権を握っている。
薬の特許権の議論にみられるように
途上国の人たちにとっては時に極端に移るアメリカの主張でも通りやすい背景がある。
こうしたなか世界第3位の経済規模を持つ日本が加われば
アメリカと途上国との間に一定のバランスをもたらしてくれるのではないかと期待がある。
一方で関税の撤廃をめぐる議論では
日本がコメなどの農産品については例外扱いするよう求めていることから
一部の国の間では限りなく関税をなくそうという全体に向けて
日本が本気で取り組むつもりがあるのか疑問視する声も根強くある。
交渉が大詰めを迎えるなか途中から参加する日本が各国の事情をいかに汲み取り
自ら関心のある分野で主張を反映させていくことができるのか
その交渉力が問われている。



 
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