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互いに手話を交わせたら

2013-10-20 07:00:01 | 編集手帳
10月14日 編集手帳

 昭和歌謡を彩る坂本九さんの楽曲でも『そして想い出』は異色だろう。
作曲の中村八大さん、
作詞の永六輔さんという名コンビに、
丸山浩路さんが加わる。手話通訳者である。

ふれあいを求める心を描いた詞章と
呼応する手指の所作と。
ふたつの「言葉」が溶け合って手話の歌が生まれた。
声と手で歌う坂本さんに、
観衆が手話でこたえたこともあるらしい。

歌の途中で〈会場に音のない静かな大合唱が起こりました〉と、
兄の坂本照明さんが自著で回想している。
1979年6月、全国のろう者が集った大会での一幕である。

手話をひとつの言葉と考え、
歌で広めた大歌手にやっと時代が追いついたのか。
手話を「独自の言語」と定義した初の条例を鳥取県が制定した。
自治体の責務として普及に努めるという。
偏見にさらされ、
ろう学校でも排斥された過去はそう遠くない。
社会全体で理解を深める契機になればいい。

〈誰かと話がしたい/楽しく話がしたい/めぐり逢あう誰かと〉。
先の歌はそう始まる。
役所でコンビニで、
互いに手話を交わせたら障壁はひとつ消える。
誰かとつながる回路も新しく開けよう。
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