10月19日 編集手帳
客が手洗いに立つと、
幇間(ほうかん)<たいこ持ち>は一緒についていく。
外で待ちながら、
用を足す客に話しかける。
その道で名人といわれた悠玄亭玉介さんによれば、
客が我に返るのをじゃまするためだという。
じゃまをしないと、
客は「子供はもう寝たかな…」などと“里ごころ”を起こすらしい。
昔から、
「馬上」「枕上(ちんじょう)<寝床>」とともに
「厠上(しじょう)<トイレ>」が文章を練るのに最適の場所とされてきたのも、
人を冷静な心持ちにさせる空間だからだろう。
最近は外出の折など、
冷静になれない空間に出くわすことが少なくない。
衛生陶器メーカーのTOTOが募集した「トイレ川柳」入選作に同憂の友を見つけた。
〈斬新で流すところがわからない〉。
スイッチを片っ端から押しても水が流れない。
観賞に堪える物ではないから、
外で待つ次の人を呼び入れて聞くわけにもいかず、
困った覚えがある。
親切・便利を極めて不親切・不便に至る。
一事が万事、
機械オンチには生きにくいご時世ではある。
かつての「サラリーマン川柳」を思い出す。
〈このオレにあたたかいのは便座だけ〉。
最後の砦(とりで)も、
いまや危うし。
客が手洗いに立つと、
幇間(ほうかん)<たいこ持ち>は一緒についていく。
外で待ちながら、
用を足す客に話しかける。
その道で名人といわれた悠玄亭玉介さんによれば、
客が我に返るのをじゃまするためだという。
じゃまをしないと、
客は「子供はもう寝たかな…」などと“里ごころ”を起こすらしい。
昔から、
「馬上」「枕上(ちんじょう)<寝床>」とともに
「厠上(しじょう)<トイレ>」が文章を練るのに最適の場所とされてきたのも、
人を冷静な心持ちにさせる空間だからだろう。
最近は外出の折など、
冷静になれない空間に出くわすことが少なくない。
衛生陶器メーカーのTOTOが募集した「トイレ川柳」入選作に同憂の友を見つけた。
〈斬新で流すところがわからない〉。
スイッチを片っ端から押しても水が流れない。
観賞に堪える物ではないから、
外で待つ次の人を呼び入れて聞くわけにもいかず、
困った覚えがある。
親切・便利を極めて不親切・不便に至る。
一事が万事、
機械オンチには生きにくいご時世ではある。
かつての「サラリーマン川柳」を思い出す。
〈このオレにあたたかいのは便座だけ〉。
最後の砦(とりで)も、
いまや危うし。