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シリアの希望“ホワイト・ヘルメット”

2016-10-01 07:15:00 | 報道/ニュース

9月12日 キャッチ!


シリア北部アレッポの空爆で破壊された建物から救出された男の子の映像。
頭に大きな傷を負い
呆然とした表情を浮かべるその姿は世界中に衝撃を与えた。
この男の子をがれきの山から助け出したのは
“ホワイト・ヘルメット”と呼ばれる
シリアの人たちで構成されたボランティアの救助隊である。
激しい内戦のため警察や消防が機能していないシリア各地で
命の危険を顧みず市民の救助を続けている。
国が分断状態になっても
敵・味方の隔てなく
すべての人を救助するというホワイト・ヘルメット。
反政府勢力の支配地域で活動しているシリア市民防衛隊の勇敢な彼らは
かつて薬剤師やパン屋だった男女約3,000人のごく普通の市民たちである。
23歳のラディさんはアレッポの学生だったが
内戦によって人生が一変。
今はトルコに住み
シリアとトルコの間を行き来している。
(ホワイト・ヘルメット ラディ・ヘザードさん)
「救助隊員になるなんて考えたこともなかったです。
 でも空爆の中で人々が救助に集まっているのを見て
 自分は何もできないとは言えません。」
彼らはがれきの中を這うという困難な作業を強いられる。
建物の破壊はシリア政府軍が落とす釘が仕込まれた爆弾によるものである。
ヘリコプターから無差別に市民に落とされる爆弾は
次の大きな破壊の前兆である。
(ホワイト・ヘルメット ラディ・ヘザードさん)
「大変なのはがれきから人を引っ張り出すことです。
 専用器具はないので使うのは簡単な道具だけです。
 ときには捜索が30~40時間もかかります。
 疲れますが
 誰かを救えるかもと思って作業を続けてしまうのです。」
救助隊の仕事が世界で最も危険な仕事と言われるのは
一度爆弾を落とした爆撃機が
救助隊を攻撃するために戻ってくるからである。
去年10月 救助中だった隊員のイサムさんは
戻ってきたロシア軍機の爆撃で命を落とした。
(ホワイト・ヘルメット ラディ・ヘザードさん)
「僕が現場に到着すると仲間はがれきの下でした。
 戻った爆撃機の仕業です。
 イサムの死は大変なショックでした。
 彼は私の兄弟のような存在だったのです。」
イサムさんのいとこで救助隊のラエドさんは
人の救助をするとは思っていなかったという。
(ホワイト・ヘルメット ラエド・サレハさん)
「成り行きで隊員になりました。
 最初は救助のことは何も知らなかったので
 我々はイスタンブールで訓練を受けたのです。
 母や兄弟ががれきの下敷きになっているかもしれない。
 それを発見しなければ死んでしまうのです。」
ホワイト・ヘルメットはこれまでシリア全域で約6万人の命を救ってきた。
彼らの活動は過激なグループでさえ許可したという。
(ホワイト・ヘルメット ラエド・サレハさん)
「武装グループが支配する地域で活動するには
 シリアのどこであれ彼らの合意が必要です。
 彼らには我々がいかなる政治集団や武装組織とも無関係だとはっきりと伝えます。
 ISからも許可は求めます。
 拒否されれば立ち去るだけです。
 運営母体を持って救助活動を行う組織は他にはありません。
 我々だけです。」
ラエドさんは世界中で暴力の停止を求めている。
去年 国連でも演説しノーベル平和賞の候補にもなったが
成果は出ていない。
(ホワイト・ヘルメット ラエド・サレハさん)
「以前からそうだったが
 今でも鉄の壁を相手にしています。 
 変化が起きなくても活動を続けます。 
 人命が救えるのですから。
 人々が我々に希望を託してくれますし。」
希望あふれる瞬間は2年前の夏に訪れた。
隊員のカレットさんは9時間もがれきを撮り続けていたとき
かすかな鳴き声が聞こえた。
生後2週間の赤ちゃんが下敷きになっていたのである。
救助隊はさらに数時間掘り続け
赤ちゃんの救出に成功した。
この映像は瞬く間に世界中に広がった。
しかしシリアでは絶えず悲劇と隣り合わせである。
カレットさんはこの8月 空爆で命を落とし
亡くなった134人の隊員に加わった。
多くの犠牲と国際社会の沈黙があっても組織の活動は続いている。
(ホワイト・ヘルメット責任者 ラエド・サレハさん)
「隊員たちと連絡を取ることも難しく
 解決できない問題とばかりです。
 でも人を救える仕事をきっと神様は報いてくれるでしょう。
 コーランには
 “もっとも慈悲深い行いは1人の命を救うことだ
 それは全人類を救うことである”とあります。
 がれきの中から人を救うことは全人類を救うことにつながるのです。」
ホワイト・ヘルメットの制服はラディさんの誇りである。
この若者にとってシリアは
仲間とともに再建を目指す祖国となった。
(ホワイト・ヘルメット ラディ・ヘザードさん)
「革命以前は祖国だという意識はありませんでした。
 しかしいまは
 自分たちで再建しなければと思います。」

 

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