10月4日 おはよう日本
大きな望遠鏡を次々にのぞき込む子どもたち。
大人たちも夢中になる。
この日 観察したのは月と土星。
これまでに撮影された月の表面は
大気の影響でクレーターがゆらめくように見える。
地球から十数億キロ離れた土星もくっきりと見える。
「月は肉眼で見たら表面がつるつるそうだけど
でこぼこが多かったりしてびっくりしました。」
「土星のリングが見えたのが感動的でした。」
京都市山科区にある京都大学の火山天文台。
昭和4年に設立され
最近は天文教育の拠点として
一般の人たちに向けた観察会などを開いてきた。
この天文台がこれまでどうり存続できるか
危機に直面している。
京都大学火山天文台台長の柴田一成教授は
研究に特化した別の新しい天文台に大学の予算が移るなか
やりくりに頭を痛めている。
今後 観察会に必要な経費は2年前に始めた寄付で賄うことにしている。
しかし当初は年1,000万円あった寄付も
その後は減少。
今年は大幅に少なくなっている。
「半年で152面円の寄付しかない。
1年間で1,000万円ぐらい寄付を集めないとやっていけない。」
この事態を心配する人がいる。
地元の小学校で理科の教師をしている安達誠さんである。
かつては火星観測で最先端の研究が行われた火山天文台。
安達さんは中学生のころいつも自宅からドームを眺めていた。
(安達誠さん)
「天文に興味を持ち始めて望遠鏡を知って
山の上にドームがあって
ときどきドームのスリットがスーッと開く様子が見える。
開いて中に望遠鏡が見える。」
高校生になり天体観測を始めた安達さん。
思い切って当時の天文台長に手紙を出したことがところ
火星の観測について情報交換が始まった。
(安達誠さん)
「ときどき連絡をくださいと書かれていて嬉しかった。」
このやり取りをきっかけに宇宙の魅力に取りつかれていった安達さん。
その後 大津市の自宅に観測用のドームを設けるまでになった。
火星の観測がライフワークとなり
アマチュア天文家として情報を発信してきた。
次の世代の天文家を育てるためにも
観察会を続けてもらいたいとしている。
(安達誠さん)
「天文にのめり込めたのは火山天文台の先生のおかげ。
できれば残してもらいたい。」
宇宙飛行士の土井隆雄さんも火山天文台に強い思い入れがある。
高校時代を大阪で過ごした土井さん。
火山天文台で作られた詳細なスケッチを参考に火星の観測をしてきた。
(宇宙飛行士 土井隆雄さん)
「そのスケッチを見ながら
火星のいろんな模様の名前や場所を覚えて
観測して
スケッチをとる。
夏休みの間中行っていた。」
ここから天文へのあこがれが広がり
宇宙にかかわる仕事を目指すようになったという。
土井さんは今年4月から京都大学の特定教授を務めている。
火山天文台の魅力を伝えるために
自らが講師を務める観察会を開くなどして
寄付の呼び掛けに協力することにしている。
(宇宙飛行士 土井隆雄さん)
「いま 運営のピンチを迎えている。
なんとかその問題をクリアできるように
火山天文台でしかできないもの
そういうものを私たちが作り出して提供したい。」
天文台では訪れた人たちにチラシを配って
観察会が続けられるよう協力を求めている。
(京都大学火山天文台 柴田一成台長)
「多くの市民の方に火山天文台を知っていただけたら
1人の寄付額は少なくても
寄付は集まると思う。」
長く京都から宇宙を見つめ続けてきた天文台。
未知の世界の魅力を
これからも多くの人たちに伝えていきたいという模索が続く。