10月21日 編集手帳
ラガーマンを見つめて、
松任谷由実さんの『ノーサイド』は歌う。
♪ 何をゴールに決めて
何を犠牲にしたの
誰も知らず…
全国高校ラグビーの決勝戦に想を得たと伝えられるが、
歌が世に出た1984年(昭和59年)はその人が同志社大学で大学選手権史上初の3連覇を果たした時期でもある。
華麗なステップと甘いマスクを歌詞に重ねた聴き手も多かったにちがいない。
誰も知らず…歌のとおりだろう。
選手として、
指導者として、
戦いにつぐ戦いのなかで人知れず、
みずからの健康を犠牲にしていたのかも知れない。
「ミスター・ラグビー」平尾誠二さんの訃報を聞く。
男盛りの、
まだ53歳である、
「スクラムがなんぼうまくてもトライは取れない」。
神戸製鋼では次々とパスをつなぐ独自の“神鋼ラグビー”を作り上げた。
平尾さんの名前を聞くたびに浮かんでくる歌がある。
〈ジャージーの汗滲(にじ)むボール横抱きに吾(われ)駆けぬけよ吾の男よ〉(佐佐木幸綱)。
それにしても、
駆けぬけるのがあまりに早すぎた。
楕円(だえん)形のボールは転がる方向の予測がつかない。
人生に似ている。
とは知りながら、
さりながら。