9月17日 経済フロントライン
去年4月 下不正会計問題が発覚した東芝。
利益のかさ上げ額は2,200億円余にのぼった。
東京証券取引所は東芝の株式を
「特設注意市場銘柄」に指定。
投資家に注意を呼び掛けるという不名誉な事態だった。
それから1年となる9月15日
東芝は再発防止策の進み具合を報告し
指定の解除を求めた。
東芝の歴代の3人の社長は高すぎる利益目標を掲げて
それを「チャレンジ」と称して
必ず達成するよう部下に要求していた。
目崎の利益にこだわった利益至上主義によって
社員たちは不正会計処理に走ることになったのである。
東芝の各部門の事業責任者を対象にした研修。
不正の原因は何だったのかを自分たちで洗い出し
議論した。
「高い予算は組めないのに
上司が『ばかを言っちゃいけません』と。
500億と言うと『1,000億円やらなきゃだめだ』と。
自分たちの実力以上のことをやっちゃう。」
「“東芝の常識が世の中の常識”となていたのは事実。」
大企業のおごり
トップと現場とのかい離
さらに上がったのが
ライバルメーカーとの行き過ぎた競争意識だった。
中でも東芝が最大の競争相手としてきたのが日立製作所である。
リーマンショックのあと両社の業績は共に大きく落ち込んだ。
しかし日立は不採算のテレビ事業から撤退するなどして
いち早く業績を回復。
これに対して東芝は構造改革が後手に回り
収益の差が開いていく。
さらに半導体事業などでライバルの海外メーカーとの競争が激化。
社内に焦りがまん延していったという。
研修に参加した1人 電池システム統括部 江草俊部長。
担当する事業では不正はなかったが
1歩間違えれば自分の部署も関わっていたかもしれないと感じている。
「不正を支持する上からの命令を拒否できたかは自信がない。
ふだんの行動のどこに問題があったのかをしっかり分析して
社員一人一人が認識すること。」
江草さんの部署が入る事業所。
これまで部下とのコミュニケーションは一方通行になりがちだったが
今はなるべく部下の言葉に耳を傾けるようにしている。
若手の社員からも率直な意見が出るようになった。
「過度な目標が与えられるときは
指示を出す人間は現場の状況を知らない。」
「それをやれと無理なことを言っているということだよね 僕が。
それが過度のプレッシャー
過度の目標になっている。」
いま必要なのは
経営と現場が同じビジョンを持って解決にあたることだという意見も出た。
「思い描くこれからの戦略をもう少し早めに共有できると
それに対してはこういう課題があって、と
僕らからも意見できる。」
(東芝 電池システム統括部 江草俊部長)
「うまく議論の雰囲気を作れば若い人たちもどんどん意見を出してくれる。
我々のどこに問題があったのか
今も検証しているし
今後の反省に生かしていきたい。」
社内の意識を変え
日本を代表する企業として信頼を取り戻せるか。
東芝の企業風土の改革は始まったばかりである。