9月26日 国際報道2016
アメリカの大手調査会社による銃に関する意識調査をみると
1993年と2004年では
銃を規制すべきとする人の割合が
所持する権利を守るべきだとする人を大きく上回っていた。
ところが2010年以降は拮抗するようになり
2016年は
権利擁護派が52%と規制派を上回っている。
テキサス州オースティン大学で50年前に起きた銃乱射事件は
大学院生だった男が時計台からライフルで学生らを次々と狙い
合わせて15人を射殺。
当時 アメリカ市場最悪の銃乱射事件としてアメリカ中を震撼させた。
国内では銃と使った犯罪が後を絶たず
自衛のために銃の所持は必要だと訴える声が勢いを増している。
テキサス州立大学オースティン校。
夏休み明けのこの日
大学のキャンパスは物々しい雰囲気に包まれていた。
8月からテキサス州では
公立大学のキャンパス内への銃の持ち込みを認める法律が施行されたのである。
大学の入り口では
“銃の携行を推進すべき”と考える人たちが
キャンパス内への銃の持ち込みを支持する横断幕を掲げた。
(“推進派”学生)
「目の前で人が襲われるところを見たことがある。
銃を携行することは命を守ることだ。」
これに対して銃規制派は
「キャンパスに銃は必要?」
「NO!」
(“規制派”学生)
「気分が変になったり酔ったりした人が銃を持っていたら何が起こるかわかりません。」
キャンパス内では意見をぶつけ合う場面も見られた。
(“推進派”学生)
「もし女性が事件に巻き込まれ銃もなかったら
どうやって身を守るんだ。」
(“規制派”学生)
「私は銃を大学に持ち込むことに反対しているだけよ。」
銃の持ち込みを規制すべきだと考えるクレッグ・キャンベル准教授は
悲劇を繰り返さないためにも銃のないキャンパスは必要だと訴える。
(テキサス州立大学 クレッグ・キャンベル准教授)
「より多くの銃を持ち込めば
より多くの悲劇につながる。」
大手で調査会社のデータでは
18~29歳までの若者のうち
銃を持つ権利を守るべきだとする人の割合は
他の年代に先駆けて銃規制派を上回った。
一部の若者の間で銃に対する抵抗感が薄れていることの表れだという見方もある。
(テキサス州立大学 クレッグキャンベル准教授)
「私は教育者として学生たちに
情報社会の中で正しい判断ができる知識を与えていきたい、」
また地域によっては銃の存在がますます身近になっているところもある。
アメリカ中部カンザス州の田舎町で開かれていた地域のイベント。
抽選会の景品となっていたのは銃だった。
拳銃から殺傷能力の高いライフルまで多くの種類が並べられている。
(銃の当選者)
「初めて銃を持つの。
本当に興奮してるわ。」
当選者はその場で銃の販売業者による身元調査を受けるが
犯罪歴などを確認するだけの簡単なもので
それをパスすれば銃を持ち帰ることができる。
現在アメリカ国内に出回っている銃は3億丁とも言われている。
さらにFBI連邦捜査局のデータによると
今年の販売数は過去最高にのぼっているとみられる。
(主催者)
「この地域では銃の人気は高く
生活に銃が根付いています。」
銃をめぐる問題は大統領選挙の争点の1つともなっている。
フロリダ州では9月24日に銃を持つ権利を訴える団体の集会が開かれた。
今回の大統領選挙では共和党のトランプ氏は
銃の携行を推進する立場を鮮明にしている。
集会では全米ライフル協会を始め
多くのロビー団体の代表者会スピーチに立った。
「銃を携行する市民の権利が奪われることは認められない。」
(全米ライフル協会 役員)
「クリントン氏を阻止し
トランプ氏を当選させるために頑張りましょう。」
フロリダ州で
大学への銃の持ち込みを認める活動をしている大学4年生のアレックス・スチュワートさん。
大学に入る前は銃を持つことを考えていなかったというスチュワートさんだが
銃を規制するだけでは問題の解決にならないと考えるようになったと言う。
(大学生 アレックス・スチュワートさん)
「安全を確保するには自分で守るしかないんです。」
集会で他の参加者と交流を深めたスチュワートさん。
銃を持つ権利をさらに意識するようになったと言う。
(大学生 アレックス・スチュワートさん)
「アメリカに存在する銃の権利組織を大学まで伸ばし
協力を進めていきたい。」
アメリカ国内だけでなく世界各地で銃の乱射事件が相次いでいる。
悲劇がより身近になり
警察への信頼が揺らぐなかで
自分の身は自分で守らなければならないという考えが浸透している。
テキサス州の大学への銃持ち込みの理由に
近年 若者が巻き込まれる銃犯罪が相次いでいることがあげられる。
さらにアメリカ社会では銃を持つ権利が重要視されていることが大きい。
この権利はアメリカ憲法でしっかり規定されていて
多くの人が尊重されるべき大切な国民の権利だと考えている。
この国民の権利の制限につながることは
ゆくゆくは排除しようという動きにつながり
そして支持が広がりやすい。
ニューヨークやニュージャージー州の事件のように国内でテロが起き
緊張が高まれば高まるほど
大統領選で強硬な姿勢を示しているトランプ氏に有利に働くのではないかと見られている。
アメリカの地方では銃が日常の光景として根付いている一方で
ニューヨークをはじめとした大都市では
銃の携行については懐疑的なところが多いのが現状である。
地域によって落差が激しく
アメリカ社会の分断を実感する。