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アメリカ社会の“ 深層” 増大するヒスパニックパワー

2016-10-09 07:30:00 | 報道/ニュース

9月20日 国際報道2016


ヒスパニックとは
中南米系でスペイン語などを話す人たちを指す。
人口は約5,700万人。
アメリカの全人口の18%を占めている。
増加率で見ると最も高くなっていて
2016年には全体の30%になると予測される。
かつては安い労働力として
肉体労働などに従事することが多かったヒスパニックの人々だが
今ではアメリカで育った2世以降の世代を中心に
様々な分野で活躍。
年々その影響力を強めている。
ヒスパニックの購買力は2015年は約1兆3,000億ドル。
これはスペインやメキシコのGDPを上回る規模である。

南部テキサス州サンアントニオ。
人口の60%をヒスパニックが占めている。
ここで医療関係の人材派遣会社を経営するベロニカ・エドワーズさん。
母親がメキシコ移民のヒスパニック系アメリカ人である。
企業から18年
今では全米15か所に拠点を持ち
従業員約3,000人を抱える。
業界成長率は全米トップとなる大企業に成長させた。
本社の従業員も大半がヒスパニックである。
かつては安い労働力とみなされていたヒスパニックだが
こうした大企業の経営者など
社会でも影響力が大きくなっている。
(人材派遣会社CEO ベロニカ・エドワーズさん)
「私たちは教育を受け
 アメリカ社会で働き
 自ら会社を興したヒスパニックで初めての世代です。
 ヒスパニックのコミュニティーの力はとても大きくなっています。」
会社で行われた催しに参加したベロニカさんの母親。
17歳でアメリカにわたり
ベロニカさんら3人の子どもを育て上げた。
多くの困難を経験してきただけに
いまのヒスパニックの活躍を信じられない思いで見ている。
(ベロニカ・エドワーズさんの母)
「娘を誇りに思う。
 アメリカでは大きな変化が起きている。
 素晴らしいことだ。」
ベロニカさんは自らが役員を務める地元の大学を訪れた。
ヒスパニックコミュニティーの底上げを図るには教育が欠かせないと考え
学費が払えない学生の奨学金に資金を提供することを約束した。
「ヒスパニックのコミュニティーをより良くして
 教育レベルを高めたい。」
「そのとおり。
 あなたは素晴らしい役員です。」
ヒスパニックの大学進学者はこの15年で2倍以上に増加。
教育レベルの向上は結果として所得の向上にもつながっている。
ヒスパニックの2014年の平均所得は日本円で約430万円。
580万円の白人よりは低いものの
増減率で見ると
白人が前年より1,7%減少しているのに比べ
5,3%の増加と
年々差が縮まっている。
勢いを増すヒスパニックに企業も熱い視線を注いでいる。
アメリカの携帯電話大手4社のうち最下位の「スプリント」。
業績立て直しの戦略として打ち出したのが
ヒスパニック市場の開拓だった。
「ヒスパニック市場の開拓には何が一番重要?」
「スポーツ観戦が一番だよ。
 オンデマンドやドラマもいいけど情熱で言えばサッカーだね。」
ヒスパニック向けの広告に力を入れ
サッカー元イングランド代表デビッド・ベッカムを起用したCMを製作。
今年5月にはサッカー南米選手権のスポンサーになり
加入者は試合を無料で見られる特典を付けた。
さらに南米の通信会社と提携し
メキシコなど複数の国と無料で通話できるサービスも展開。
こうした戦略によって
昨年度は9年ぶりに黒字に転換した。
(ヒスパニック戦略担当)
「わが社にとってヒスパニックは間違いなく成長のエンジンだ。
 ヒスパニックはアメリカ社会にとって必ずポジティブな力になると思う。」
そして今ヒスパニックパワーは
経済にとどまらず
政治にまで影響力を強めている。 
「今回の選挙でカギを握るのは私たちだ。」
「ヒスパニック票なしでは誰もホワイトハウスに行けないのです。」
番組で
ヒスパニックの著名人たちが英語とスペイン語を交え
ヒスパニックの人たちに大統領選挙への参加を呼び掛けている。
この番組を手掛けたヒスパニックのアルベルト・フェレーラ監督は
さまざまなイベントに足を運び投票を呼びかけている。
今回 ヒスパニックの政治への関心を高めた大きな要因となったのが
共和党のトランプ候補である。!
「メキシコとの国境に壁を築く!
 トランプウォールだ!」
ヒスパニックは社会に完全には受け入れられていないと
危機感を抱くフェレーラ監督。
ヒスパニックは力をつけた今こそ
政治の場で声を上げるべきだと訴えている。
(アルベルト・フェレーラ監督)
「ヒスパニック票が大統領選の行方を決め
 そして世界の未来をも決めるのです。」

白人に比べて出生率が高いため
アメリカ生まれのヒスパニックが全体の人口を押し上げている。
テキサス州などでは人口の9割がヒスパニックという町も出ていて
英語がほとんど通じないという地域もある。
それだけに白人の中にはいら立ちもあり
ヒスパニックなど移民に対する世論調査では
白人の49%が否定的な回答で
肯定的な43%を上回った。
今回の選挙はヒスパニックの間でも特に関心は高い。
前回の選挙は
白人の74%と黒人の73%が有権者登録をしていたのに対し
ヒスパニックは59%にとどまっていた。
今回はカリフォルニア州で見ると
登録した人の数はすでに前回の2倍と急増している。
トランプ氏の当選を食い止めたいという思いが
大きな要素となっているのは間違いない。
最新の世論調査では
ヒスパニックの70%がクリントン氏を支持している一方
トランプ氏の支持はわずか19%にとどまっている。
特にアリゾナ州など接戦州では
彼らの票が重要になっている。
これまでヒスパニックの進出が遅れてきたのが政治の分野だったが
今や大きな存在感を発揮していて
大統領選挙は大きな転換点になる可能性があると言える。




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