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フランスに浸透する日本の食文化

2018-08-02 07:00:00 | 報道/ニュース

7月14日 国際報道2018


1980年代にはフランス全土で50軒ほどだったと言われる日本料理のレストラン。
2000年代に入って急増し
この10年余で5倍の3,600軒に増えている。
フランスの人々の日本料理への理解をより深めたいと奮闘し続けている人がいる。
かつて日本で暮らしたこともあるパトリック・デュバルさん(64)。
2004年に創刊した日本料理を紹介する雑誌の編集長を務めている。
(パトリック・デュバルさん)
「いまフランス人は日本料理の豊かさに気づき始めています。
 その好奇心をどうしたら満たせるかと考え
 私は日本料理をフランス人の目線で伝えようと思ったのです。」
デュバルさんがまず手掛けたのが日本料理の教室。
日本人の寿司職人の実演に合わせデュバルさんが説明を加える。
フランスの一般家庭では生の魚を包丁で切り分けることはほとんどない。
(参加者)
「包丁で切るといっても繊細さが必要なんですね。」
包丁の使い方1つで
刺身の見た目だけでなく舌触りも変わることを体感してもらうのが狙いである。
(参加者)
「苦労した分おいしいです。」
さらにデュバルさんは日本料理独特の食べ方も伝えたいと自ら居酒屋の経営も始めた。
1つの皿を複数で囲むのは日本ではおなじみの光景だが
多くのフランス人の目には斬新に映ると言う。
(客)
「パリに日本料理店はたくさんあるけれど
 こういうのはありません。」
日本料理の魅力はこうしたさりげない生活スタイルの中にこそ宿っていると
デュバルさんは考えている。
(パトリックデュバルさん)
「私はフランス人の料理に対する概念を壊したいのです。
 それぞれが好きな料理を注文して皆でちょっとずつ味わうという
 日本料理の楽しみ方をフランス人に伝える架け橋になりたいです。」
日本の食にはさらなる追い風が吹こうとしている。
日本とEUとの間で署名されるEPA経済連携協定である。
発効されると
しょうゆ、みそ、緑茶などは即座に関税が撤廃されて
日本からEUへの輸出がしやすくなる。
同様にEUによる関税撤廃の影響を受けるのが日本酒である。
日本政府は食品の輸出拡大を目指していて
その重点品目に日本酒が含まれている。
そんななか日本酒の魅力をフランスの人たちに伝えたいと
世界的に有名なフランス人シェフが起ち上がった。
ワインの国フランスで
目指すは“日本酒に合うフランス料理”。
5月下旬 山口県岩国市に1人のフランス人シェフが降り立った。
「フレンチの神様」と呼ばれるジョエル・ロブションさんである。
ミシュランガイドで世界最多の星を獲得するなど
監修したレストランの多くが高い評価を受けている。
この日の目的は日本酒“獺祭”の酒蔵を視察すること。
数年前に試飲したときロブションさんはそのフルーティな味わいにひかれ
“新たなフランス料理が作れる”と確信したと言う。
(ジョエル・ロブションさん)
「この酒は繊細な味がします。
 組み合わせによるさまざまな可能性を秘めています。」
パリの凱旋門から1kmほどの1等地。
ロブションさんはここに酒造メーカーと共同で新しい店をオープンすることを決めた。
フランスでは日本酒は中国酒と混同されるなどまだなじみが薄い飲み物である。
日本酒と合う料理を提供し
その魅力を多くのフランス人に伝えたいと考えたのである。
(ジョエル・ロブションさん)
「本物の日本酒というものを全てのフランス人に知ってもらいたい。」
(旭酒造 桜井博志会長)
「ロブションさんの料理・サービスとともに獺祭をフランスの方々に飲んでもらう。
 新たな顧客を開拓できる。」
ロブションさんは信頼するシェフと一緒に半年かけて料理を開発した。
日本酒と相性が良いと考えた魚や野菜などを使いつつ
フランス人の好みに合った味付けを目指す。
フランス人に最もなじみ深い料理の1つ「タルタル」は
シソを加えて味を変化させた。
(シェフ ファビアンさん)
「タルタルはふつうパセリを使いますが
 今回はシソを使います。
 シソの新鮮さと日本酒が非常に合うのです。」
さらにサーモンを混ぜアボカドとキャビアを合わせて完成。
「さわやかなシソにより味が混じり合います。
 キャビアの油っぽさが日本酒を引き立たせます。」
ほかにもエビ団子を使ったスープや牛肉とわさびで味付けした野菜を使った料理などができ上がった。
ワインとは違う日本酒独特の甘い余韻が味わえるよう
どの料理も工夫したと言う。
(ジョエル・ロブションさん)
「日本酒を味わうと
 たくさんのお客様が『こんなにおいしかったのか』と反応されます。
 この酒はすでに世界中に知られていますが
 ここからさらに広がっていくでしょう。」
6月中旬 店が本格的にオープンした。
(客)
「こんな味わいは初めて。
 本当に素晴らしいわ。
 口の中でとろけちゃう。」
「すばらしく合うね。
 料理と酒だ。
 ブルゴーニュワインも完璧だけど
 日本酒はもっと繊細な味がする。」
世界的ンシェフによるフランス料理とのコラボレーション。
日本酒の新たな可能性が広がっている。
日本の食文化と切っても切り離せないのが料理道具。
日本の力文化の広がりとともに料理道具も広がっている。
和包丁など日本の台所の刃物製品の日本からEUへの輸出額は
この20年で4倍になっている。
フランスの包丁と日本の包丁の違いは
日本の包丁は研ぐことを前提に作られているので
手入れをすれば長く使うことができる。
砥石の需要も高まっている。
日本で使われる片刃の包丁は
魚を下すときに骨に沿って切れたり
刺身を切ることができる。
日本料理だけではなく様々な料理に使われる日本の料理道具。
フランスを代表する名シェフも愛用している。
パリ中心部にあるフレンチレストラン。
なかなか予約が取れない人気店である。
この店のオーナーシェフ エリック・トロションさん(54)。
トロションさんは
“フランス版の人間国宝”とも言われる国歌最優秀職人章を受賞した
フランス全土にその名が知れた凄腕シェフ。
東京にも店をオープンさせた。
そのトロションさんが今イチ押しだという料理が「フォアグラ・ソテー」。
一見すると普通のフォアグラだが
秘密は食べる直前に足されるブイヨン。
フレンチなのによく知っている味。
(トロションさん)
「それはだしの風味です。
 枕崎のカツオです。」
 フォアグラはソテーすると油が浮き出てくるのですが
 ブイヨンがバランスをとってくれるんです。」
「牛ほほ肉の煮込み」も見た目はごく普通の煮込み料理だが
ほほ肉を赤味噌に長時間漬け込んである。
フレンチの巨匠も今や積極的に日本の食材を取り入れて
うまみやコクを上手に引き出している。
トロションさんの厨房には
日本で購入した細い鉄串。
「肉はすべてこの串に刺しています。
 フランスにはありません。
 フランスではグリルは使いますがこのようなタイプの串は使いません。
 この串を使うと焼き加減が一定になるんです。」
そして肉や魚を焼く時に使われるのが
隅の中でも最高級品と言われる和歌山の紀州備長炭である。
「備長炭はとにかくすごいですよ。
 備長炭は過熱が一定で
 美しい色合いを出すことができます。
 ヨーロッパの炭は温度が常に変化するので一定の過熱が難しいのです。」
トロションさん愛用の包丁には“栄里久”(エリック)と名前が刻まれている。
(国家最優秀職人章(MOF)シェフ エリック・トロションさん)
「日本の包丁はとてもよく切れるので料理にはとても便利です。
 料理道具でよく使うのは
 小さなステンレスの入れ物と魚を入れるバット。
 これらはフランスでは見つけられません。
 サイズが小さな調理場に合っている。」
「日本とフランス料理は刺激を受け合っていて共通点もある。
 材料選び
 道具を含めた技術
 盛り付け
 料理の見せ方に共通点がある。」





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