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全力で

2018-08-06 07:00:00 | 編集手帳

8月5日 編集手帳

 

 凜(りん)としてたたずむ漆黒のスコアボードは、
甲子園球場の顔だ。
形や色から潜水艦と呼ばれた時代があったらしい。

1983年まで稼働した2代目では手書きの氏名板を裏方さんがはめたりはずしたりした。
1日に何試合もある高校野球は大忙しで、
勝利校の校歌が響く頃、
責任者である艦長さんが、
グラウンドを眺めて交換の頃合いを計った。

本紙記事によると、
外をのぞくのは、
その刹那のみだったとか。
負けた選手が土を手に一礼している。
「私は高校野球の悲しいところだけしか見ていないんです」。
そんな言葉がつづってある。

いやいや視線の先には歓喜する勝者の姿もあっただろうに…。
「選手はいつも泣いていますがネ」。
別の記事にもこうある。
勝者より敗者が記憶に刻まれる。
それが甲子園というものなのだろう。

きょう開幕する夏の高校野球は、
地方大会に3781チームが参加した。
笑顔のまま夏を終えるのは1校のみ。
かつて聞いた解説の名言を思い出す。
「負けることが大事。
 全力で戦い全力で負ける。
 それが糧になる」。
大海原、
泥まみれになって散る球児に、
心揺さぶられる日々が始まる。


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