8月8日 編集手帳
ジャイアンがのび太から漫画や菓子を取り上げるときの“名言”をご存じの方は多かろう。
<お前のものは俺のもの。
俺のものも俺のもの>
難しい言葉でいえば、
【専横】
(わがままで横暴なふるまい=広辞苑)だろう。
最近しばしば頭をよぎる。
日本ボクシング連盟の山根明会長は、
2012年ロンドン五輪で村田諒太選手が決勝に進んだ際、
自分の息子にセコンドを務めさせたという。
息子に指導経験はなかったらしい。
晴れがましい決勝の舞台や輝く金メダルは村田選手のものであって、
他の誰のものでもあるまい。
先の“名言”がよぎった競技はこれだけではない。
気に入らない選手を干そうとした女子レスリング界の重鎮、
暴力まがいのタックルを指示した大学アメフト部監督――
選手の人生まで「俺のもの」といわんばかりの専横ぶりである。
『ドラえもん』にはこんな一幕もある。
トラックがのび太のランドセルを荷台に載せ走り去る。
ジャイアンが必死に探す。
荷台から転げ落ちたとき、
ケガも恐れず飛び込みナイスキャッチ。
「だってお前のものは…」。
元祖ジャイアンの名誉のため記しておく。