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見事、危機を乗り越え、後世に誇れるよう

2020-05-10 07:00:00 | 編集手帳

4月19日 読売新聞「編集手帳」


現代に続く企業で世界最古との説もある。
寺社の造営が専門の建築会社、
金剛組(本社・大阪市)の創業は578年、
1400余年前に遡る。

初代トップは百済から招かれた工匠だった。
聖徳太子の命で最初に手掛けたのが大阪の四天王寺である。
22日に太子を偲ぶ聖霊会(しょうりょうえ)が行われる。
声明法要と舞楽が一体となった儀式で、
いつも大勢でにぎわうが、
今年は一般の参拝客は観覧できない。

金堂を始め、
境内の30ほどのお堂は今全部閉鎖されている。
寺によると、
おそらく6世紀の開闢(かいびゃく)以来初めてのことらしい。
宗派のない時代に創建し、
庶民信仰の寺として親しまれてきた。
空襲でほぼ全ての建物が灰燼(かいじん)に帰した時でさえ、
翌日には市民が三々五々集まったそうだ。

人と人とをつなぐ、
大勢の心の拠り所を奪ったウイルスがつくづく憎らしい。
由緒ある祭りや行事の中止の報を聞く度、
ただならぬ歴史の一コマに立ち会っていると改めて思う。
ならば後世に誇れる記録を残したい。
皆が気持ちを一つに見事、
危機を乗り越えた事績を。

閉鎖でも変わらぬ読経や勤めを寺はネットで伝えている。
これもまた時代だろう。

 

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