4月24日 NHKBS1「国際報道2020」
人口13億のインドも新型コロナウィルスとの厳しい戦いに直面している。
インドでは3月25日から
生活必需品などの買い物を除いて全土で外出が禁止されていて
“世界最大のロックダウン”とも呼ばれている。
公共交通機関や企業活動もほぼ全面的に停止されている。
こうしたインドの措置は世界で最も厳しい内容の1つとされている。
ロックダウンから1か月。
インド社会でさまざまな影響が広がっている。
インドの首都ニューデリー。
多くの人でにぎわっていた街は今は閑散としている。
外出は厳しく制限され
許可がない車は取り締まりの対象である。
こうした封鎖で思わぬ影響も出ている。
大気汚染が改善し
連日澄んだ青空が広がるようになった。
インドでは世界最悪レベルの大気汚染が深刻な問題で
日中でも少し先が見えない日があるほどだった。
それが交通量の激減や工場などの操業停止などによって
ニューデリーの大気汚染物質は7割も減ったという。
青空の一方
インドの社会には混乱が広がっている。
4月22日までの1か月で感染者数は30倍以上に増加。
封鎖が続くなかでも感染を広げるウィルスへの人々の不安が高まっている。
(住民)
「いつ感染するかわからず不安です。」
「何もできない状態が続いて
とても苦しいです。」
ウィルスへの恐怖から
最前線に立つ医療従事者を攻撃する人たちまで出ている。
ウィルス検査のため住宅街を訪れた医師が
住民たちに石などを投げられケガをした。
自宅に住民が押しかけ集合住宅から出ていくよう迫られた医師もいる。
(近所の住民)
「医者だからって何様のつもりだ。
このろくでなし!」
一部の人々の間に
医療従事者がウィルスを広めていると
誤った考えが広がったことが原因だった。
政府は
医療従事者に危害を加えた場合
最大7年の禁錮刑や70万円余の罰金を科す法律の改正を決めた。
(医師)
「対策をとても歓迎しています。
これで安全に医療活動に専念できます。」
長期化する封鎖で不満を募らせているのが
都市部で仕事を失った出稼ぎ労働者たちである。
最大の商業都市ムンバイでは
失業した労働者たちが故郷に帰ろうとバスターミナルに集結。
集まった人たちを排除しようとした警察と衝突する事態になった。
失業した出稼ぎ労働者は全土で1億人を超えると言われ
政府は
行き場を失った人たちを受け入れる臨時の避難所を各地に設置している。
900人余が生活している避難所。
北部の農村から出稼ぎに来ているデブシンさん(50)。
食堂で働いていたが封鎖によって解雇され
交通機関が停止するなか故郷に帰ることもできない。
地元に残した妻と2人の子どもに全く仕送りができない状況に焦りを感じている。
(失業した出稼ぎ労働者 デブシンさん)
「子どものそばにいられないので何もしてあげられません。
封鎖が終わっても
今年は仕事が見つからないでしょう。」
政府は貧困層を中心とした8億人に食料を支給するなど対策を取っているが
抜本的な解決策は打ち出せていない。
専門家は今後半年程度は厳しい雇用情勢が続くとして
出稼ぎ労働者に対するさらなる支援が必要だと指摘している。
(軽罪コンサルタント ハリシュ氏)
「6~12週間の封鎖で最も傷つくのは
現代インドを築いた出稼ぎ労働者たちだ。
政府は彼らの月給の半額を保証すべきだ。」