4月24日 読売新聞「編集手帳」
書店で米国の推理作家ドン・ウィンズロウの『夜明けのパトロール』(角川文庫)を手にした時、
単純にパトロール警官の物語かと思った。
が、
違った。
主人公はサーフィンを愛する探偵で毎朝のように海に出かける。
風向きなどの関係で明け方はいい波が来るらしい。
米西海岸ではそんな人々が集って波を“見回る”姿を
「DAWNドーン(夜明け) PATROLパトロール」と呼ぶとか。
たとえいい波が来なくとも、
サーフボードに体を預けながら眺める海原は心洗われる景色だろう。
だが、
今や周辺の住民には穏やかな海に見えなくなっている。
地元の子供たちは浜遊びを控えているという。
なのに、
海岸は夏のようににぎわう。
むろんサーファーばかりではない。
ビーチバレーに身を躍らす若者、
バーベキューをする家族――
感染症の危惧を覚えるほどの人出が週末ごとに現れる。
誰もが海辺は「密」じゃないと思って来るから、
「密」になるのかもしれない。
人気の湘南海岸を抱える神奈川県では近づく大型連休に備え、
違法駐車へにらみをきかすそうである。
どうか、
こちらのパトロールのお世話にはならないように。