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シンガポール 外国人労働者感染9割の背景は

2020-05-28 07:00:00 | 報道/ニュース

5月7日 NHKBS1「国際報道2020」


東南アジアで新型コロナウィルスの感染者が最も多くなったシンガポール。
5月7日までに感染者は2万人超。
その数はいま急増している。
シンガポールは3月までは
外国人の入国を禁止するなど水際対策を厳しく行なって
感染拡大を抑え込んでいた。
WHOもその対策を高く評価していたが
しかし4月に入ると感染者の数が一気に増えていく。
1日に1,000人を超える日も相次ぎ
1か月で20倍以上になった。
実はこの感染者の約9割がシンガポール人ではない。
出稼ぎで来ている外国人労働者たちなのである。

シンガポールでは4月7日以降
企業のオフィスや学校が閉鎖され
外出も厳しく制限する措置が取られている。
街なかには監視員を配置。
2人以上で立ち止まっている人に注意する。
違反すると日本円で2万2,000円余の罰金が課せられ
繰り返すと起訴されることもある。
なぜシンガポールはここまで厳しい措置をとるようになったのか。
背景にあるのが4月から急激に進む感染爆発である。
シンガポールで初めて感染が確認されたのが今年の1月23日。
その直後から政府は
感染が拡大している国などからの入国制限や感染ルートの追跡など
水際対策を打ち出し
抑え込みを図った。
一方で経済や社会活動の混乱を避けるため
4月上旬までは
10人以上の集まりを禁止する程度にとどめ
マスクについても“症状がないなら着用しなくて良い“と繰り返していた。
こうした政府の姿勢は裏目に出る。
レストランなど公共の場での集団感染や
海外からの帰国者からの感染などで
感染者が少しずつ増えていったのである。
そして4月
出稼ぎ労働者の間で症状を訴える人が相次ぐ。
同じ居住区に暮らす外国人労働者を調べたところ
感染が爆発的に広がっていたことが分かった。
シンガポールの発展を支えてきたバングラデシュやインドなどからの出稼ぎ労働者。
その人数は約100万人と
シンガポールの人口の2割近くを占めている。
しかしその生活環境は劣悪である。
フェンスに囲まれた居住区や
雇用主が用意した狭い宿舎での集団生活を余儀なくされ
10人ひと部屋で
シャワーとトイレは共同。
距離が保ちにくく
感染が拡大しやすい環境である。
(バングラデシュからの労働者)
「我々は1つの部屋に住み
 1つのトイレを使っている。
 だから感染拡大が一気に進む。」
こうした外国人労働者は
実に感染者の9割にまでのぼっていたのである。
政府が宿舎内でのPCR検査を始めたのは感染が広がった後だった。
(シンガポール ウォン国家開発相)
「外国人労働者の宿舎で一気に感染拡大すると予想できなかった。
 予想できていれば
 違う措置を取っていた。」
外国人労働者たちは
いつ自分が感染するかわからないという不安を抱えている。
(バングラデシュからの労働者)
「一緒に生活していた10人のうち3人が感染し
 4人が検査の結果を待っている。
 数日前に発熱があったから
 私も感染しているかもしれない。」
「怖い。
 密集状態については以前から会社側に訴えていたが
 返事もなく
 もう諦めてしまった。」
政府は外国人労働者の居住区のゲートを封鎖。
完全に隔離する措置に乗り出した。
シンガポール人よりも厳しい外出禁止措置で
感染の封じ込めに躍起になっている。
政府が十分に注意を払ってこなかった外国人労働者。
その代償は
“感染拡大”という形で
シンガポールを苦しめている。

国民は
外出制限が始まった当初は
監視員の指摘になかなか納得できず言い合いをする人もいた。
オフィスビルも例外ではない。
メディアは社会に欠かせない業種の1つとしてオフィスでの勤務が最低限認められているが
ちゃんと許可を取っているのか
また室内で人と人との距離をしっかりとっているのかなどを調べて
問題がないことを確認していく。
政府の政策をメディアなどが批判することが少ないシンガポールだが
不自由はあるが政府を信じて収束を待とうというモードになっている。
新たな感染者は1日で1,000人に近い日もある。
こうした事態を受け
今まさに検査を進めている最中である。
国内の約100万人の外国人労働者のうち
5月1日の時点で
検査終了は23万5,000人にとどまっている。
政府は
検査能力を現在の5倍にあたる1日4万人まで引き上げるとしているが
まだ全容の把握には時間がかかりそうである。
シンガポール政府は外国人労働者への依存度を下げるため
出稼ぎ労働者の数そのものを減らそうとしてきた。
しかし経済活動への貢献に重きが置かれた結果
なかなか実現できずにいたのである。
さらに外国人労働者のおかれた環境についても
宿舎内で集団生活をしなくて済むようにするなど
改善の必要性は指摘されていた。
外国人労働者の扱いが社会問題化してい中での感染拡大で
社会不安を避けようと
首相は国民向けのテレビ演説に踏み切った。
(リー・シェンロン首相)
「外国人労働者の皆さんに改めて強調する。
 シンガポール人と同じように皆さんに対応する。」
シンガポールの経済発展を支えつつも
劣悪な環境下に置かれてきた外国人労働者の間で広がった爆発的な感染。
政府がこの問題をどう扱うかは
シンガポールがこれまで抱えてきた課題とどう向き合うのかに他ならない。




 
 






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