
(前号からの続き)
もとJリーガー前園真聖さんはTV番組の仕事で、自分が引き起こした過去の事件については、タブーの扱いをされることにしっくりとこない気持ちでした。
誰もが、あの事件のことには触れないでおこうという態度でした。
ところが、ダウンタウンの松本人志さんは違っていました。
テレビの番組で、松本さんが前園さんの失敗をいじってくれたことがきっかけで、タブーが解けました。
自分の殻を破ってくれた松本人志さんに、前園さんは感謝の気持ちしかないそうです。
それをきっかけに、あの失敗を自分の口で言えるようになりました。
いまでは、周りからもつっこんでもらえるようにもなりした。
ただし、前園さんは付け加えます。
「いじりはとても難しいのです。
一歩間違えば、いじめやパワハラになってしまいます。
いじりが楽しさとして成立するのは、いじられる当人が不快に感じないこと。
いじるほうといじられるほうの互いに信頼関係があることだと思います。
誰もがみな松本さんのように、高度なお笑いの技を持っているわけではありません。
いじりが行き過ぎないよう、注意が必要です。」
(『PHP No.848』の「ありのままのさ自分を出してみよう」の前園さんの体験談を引用)
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私は、この前園さんの経験談が、中学生のいじめといじりについて、深い示唆を与えてくれると考えています。
三中生にいじめの指導をすると、よく言うことがあります。
それは、
「いじっていただけ。相手も楽しんでいるように思ったもん」
しかし、相手はその行為により、とてもイヤがり、深く傷ついており、いじめになっていることに思いが届いていないのです。
相手を楽しませるようないじりは、前園さんの言うように簡単にはできることではありません。
いまのいじめの特徴は、相手に金品を要求したり、身体的危害を与える行為よりも、集団で無視したり、言葉で相手をからかったりする場合が多いのです。
三中1年生が2学期に「いじめといじり」を学習したように、とかくいじりはいじめにつながりやすいのです。
まだ十分な分別がつくとはいえない中学生であり、生徒と生徒の間に、信頼に基づく友人関係が築けていない現状があるなら、いじりはけっして許されない行為であることを、おとなもしっかりと胸に刻んでおきたいところです。