もう十数年前のことですが。
東名高速道のS・Aで休憩した時、S・A内に立ててあった風にはためく幟の文字が、視界の端に入り、ぎょっとした。
そこには「アイスクリ-ム」の文字があったんだけど、何と、
「巨乳アイスクリーム」と書いてある!!
「え?・・・・え・え~~っ?!」
よく見たら「巨峰アイスクリーム」だった。
何だ!紛らわしい。
・・・・私がスケベ?・・・なのかな?
巨峰は好きで、よく食べるけれど。
古事記に「おおけつひめ」の話があります。穀物の神様です。目・鼻・口、果ては尻からも食べ物を出す。豊作、豊穣の神様です。
その食べ物をつくるさまを覗き見してしまったスサノヲ命が、
「そんなものをオレに食わせる気か!」
、と腹を立てて殺してしまう。
おおけつ姫が大きな尻から食べ物を出す・・・・って???
「え?・・・・え・え~~っ?!」でした。
何より尻から穀物って・・・・。きったねぇ~。
ですが、実は「おおけつ姫」という名だからと言って、お尻が大きいと言うわけじゃない。
「けど、『おおけつ』だから『巨尻』・・・」
だから、違いますっ。
この神名は「おほ」+「け」+「つ」+「姫」です。
「おほ」は「大」。「つ」は「~の」。
それで、「け」と言うのは「食べ物」の意味です。
後の世に食器のことを「け」というようになったようです。こんな歌があるでしょう?
「家にあれば笥(け)に盛る飯を 草枕旅にしあれば 椎の葉に盛る」
ー家に居るならば笥に盛る筈の飯だけれど、旅の空の下だから、椎の葉を食器とする。ー
伊勢神宮には御饌殿(みけでん)という建物があります。朝に夕べに天照大神に献ずる食事の用意をする場所です。
「け」は食べ物を指すのですから、「大いなる」、「け」、「の」「姫神」という意味で、「おおけつ姫」は、「食べ物、食事全般を司る姫神様」ということです。
「立派な(大いなる)、食物、食事全般の姫神」。
それが大宜津比売、です。
石見の国一宮の物部(もののべ)神社に、大田(おおだ)市駅から向かう途中、或る由緒正しい神社の名前が目に入ります。
その名は「新倶蘇姫神社」。
何て読むと思います?
そうです。御想像の通り、「にいぐそひめ神社」。
・・・・・これは、どうも・・・・・・。
意味は?と調べてみると「新しいクソの姫神」だって・・・・。
そのまんま、じゃないか!
しかし、何ともえぐいと言うか気の毒と言うか・・・。だって、姫神様ですよ?
姫神様に「くそ」って・・・・。ひどい。
そう思いながら、でも、考えました。
資料にもあったんですが、「くそ」というのは、今のような「汚いもの」という意味ではなく、「肥料」の意味であったということです。
でもねえ、「くそ」、ですよ、「糞」。
しかし、これ(この感じ方)、ちょっと変です。
日本で人糞を畑の肥料に、とするようになったのは戦国末期から。大陸から伝来した農業技術なんだそうです、人糞を畑に撒くのは。それに「肥え」とか「肥やし」と言います。良い意味です。
江戸期になると、江戸市中の長屋などは共同便所ですから、一箇所に集められることになる糞尿は、近郷の百姓が金を出して買って行ったそうです。これもやはり金肥(きんぴ)です。見事なリサイクル。お金は大家の収入となった、とか。
元に戻ります。
古事記や日本書紀が書かれた頃には、人糞は肥料にされていたわけではない。「糞」という字を使ったから、人糞、みたいなイメージがあるけれど、本来の「くそ」にそんな意味はなかったと言えるんじゃないでしょうか。
「くそ」は「く」と「そ」、です。「そ」とは「蘇」のこと。最近はテレビでも採り上げられるようになりましたが、古代の乳製品、チーズのことです。
そして「く」は「倶」の字が当てられていますが、「具」「供」でも同じ。「供える」、です。用意、とか助ける、の意味を含んでいます。
こう考えると、ここで使われている「倶蘇」は一番身近なところで言えば、牛糞、と見るのが妥当なところでしょう。
牛を飼い、牛乳を用いて「蘇」をつくり、牛糞を肥料とする。そんな新しい農業技術を実践する一族が拓いた土地の産土神。それに祖先神、氏神として「新倶蘇姫」の神名を献じた。
当時の、最先端の農業である「酪農」をやる一族がこの地に住んでいたという証拠が、この「新倶蘇姫神社」である、ということになります。
古事記、日本書紀の書かれた頃、田畑では一体どんな作物が作られていたのでしょうか。現在、日常に我々が目にする食物のうち、穀物以外の農作物というのは当時ほとんどなかった、ということを考えたら、「肥料」というのが違って見えてくることでしょう。
そうなると「くそ」は「糞」や「屎」ではない、ということも見えて来ます。
「今」の眼で、快刀乱麻を断つが如くの勢いで全ての物事を裁定するのは小気味良いことではあるけれど、それでは歴史の存在価値は皆無になってしまいます。
そこには「アイスクリ-ム」の文字があったんだけど、何と、
「巨乳アイスクリーム」と書いてある!!
「え?・・・・え・え~~っ?!」
よく見たら「巨峰アイスクリーム」だった。
何だ!紛らわしい。
・・・・私がスケベ?・・・なのかな?
巨峰は好きで、よく食べるけれど。
古事記に「おおけつひめ」の話があります。穀物の神様です。目・鼻・口、果ては尻からも食べ物を出す。豊作、豊穣の神様です。
その食べ物をつくるさまを覗き見してしまったスサノヲ命が、
「そんなものをオレに食わせる気か!」
、と腹を立てて殺してしまう。
おおけつ姫が大きな尻から食べ物を出す・・・・って???
「え?・・・・え・え~~っ?!」でした。
何より尻から穀物って・・・・。きったねぇ~。
ですが、実は「おおけつ姫」という名だからと言って、お尻が大きいと言うわけじゃない。
「けど、『おおけつ』だから『巨尻』・・・」
だから、違いますっ。
この神名は「おほ」+「け」+「つ」+「姫」です。
「おほ」は「大」。「つ」は「~の」。
それで、「け」と言うのは「食べ物」の意味です。
後の世に食器のことを「け」というようになったようです。こんな歌があるでしょう?
「家にあれば笥(け)に盛る飯を 草枕旅にしあれば 椎の葉に盛る」
ー家に居るならば笥に盛る筈の飯だけれど、旅の空の下だから、椎の葉を食器とする。ー
伊勢神宮には御饌殿(みけでん)という建物があります。朝に夕べに天照大神に献ずる食事の用意をする場所です。
「け」は食べ物を指すのですから、「大いなる」、「け」、「の」「姫神」という意味で、「おおけつ姫」は、「食べ物、食事全般を司る姫神様」ということです。
「立派な(大いなる)、食物、食事全般の姫神」。
それが大宜津比売、です。
石見の国一宮の物部(もののべ)神社に、大田(おおだ)市駅から向かう途中、或る由緒正しい神社の名前が目に入ります。
その名は「新倶蘇姫神社」。
何て読むと思います?
そうです。御想像の通り、「にいぐそひめ神社」。
・・・・・これは、どうも・・・・・・。
意味は?と調べてみると「新しいクソの姫神」だって・・・・。
そのまんま、じゃないか!
しかし、何ともえぐいと言うか気の毒と言うか・・・。だって、姫神様ですよ?
姫神様に「くそ」って・・・・。ひどい。
そう思いながら、でも、考えました。
資料にもあったんですが、「くそ」というのは、今のような「汚いもの」という意味ではなく、「肥料」の意味であったということです。
でもねえ、「くそ」、ですよ、「糞」。
しかし、これ(この感じ方)、ちょっと変です。
日本で人糞を畑の肥料に、とするようになったのは戦国末期から。大陸から伝来した農業技術なんだそうです、人糞を畑に撒くのは。それに「肥え」とか「肥やし」と言います。良い意味です。
江戸期になると、江戸市中の長屋などは共同便所ですから、一箇所に集められることになる糞尿は、近郷の百姓が金を出して買って行ったそうです。これもやはり金肥(きんぴ)です。見事なリサイクル。お金は大家の収入となった、とか。
元に戻ります。
古事記や日本書紀が書かれた頃には、人糞は肥料にされていたわけではない。「糞」という字を使ったから、人糞、みたいなイメージがあるけれど、本来の「くそ」にそんな意味はなかったと言えるんじゃないでしょうか。
「くそ」は「く」と「そ」、です。「そ」とは「蘇」のこと。最近はテレビでも採り上げられるようになりましたが、古代の乳製品、チーズのことです。
そして「く」は「倶」の字が当てられていますが、「具」「供」でも同じ。「供える」、です。用意、とか助ける、の意味を含んでいます。
こう考えると、ここで使われている「倶蘇」は一番身近なところで言えば、牛糞、と見るのが妥当なところでしょう。
牛を飼い、牛乳を用いて「蘇」をつくり、牛糞を肥料とする。そんな新しい農業技術を実践する一族が拓いた土地の産土神。それに祖先神、氏神として「新倶蘇姫」の神名を献じた。
当時の、最先端の農業である「酪農」をやる一族がこの地に住んでいたという証拠が、この「新倶蘇姫神社」である、ということになります。
古事記、日本書紀の書かれた頃、田畑では一体どんな作物が作られていたのでしょうか。現在、日常に我々が目にする食物のうち、穀物以外の農作物というのは当時ほとんどなかった、ということを考えたら、「肥料」というのが違って見えてくることでしょう。
そうなると「くそ」は「糞」や「屎」ではない、ということも見えて来ます。
「今」の眼で、快刀乱麻を断つが如くの勢いで全ての物事を裁定するのは小気味良いことではあるけれど、それでは歴史の存在価値は皆無になってしまいます。
2012.05/19