CubとSRと

ただの日記

伊達の薄着

2020年03月02日 | 心の持ち様
2012.01/24 (Tue)

 平安末期、源平の争いが繰り返されていた頃、武者は戦の前に兜に香を焚きこめて合戦に臨んだと言います。こうすれば、敗れ、或いは組討となって首を取られた時、敵に汗臭さを感じさせない。

 「天晴れ!見事な心がけ」と賞されたいがため・・・・ではない。「むさ苦しい奴」「卑しい武者」と嘲笑されぬため、のようです。「首を取られた時に笑われないように。」
 どこまで見栄っ張りなんでしょうかね。
 いやいや、見栄っ張りなんかじゃない。やはりこれは「恥を知る」武士。「もののふ」。それに自らの身嗜みのいい加減なことを笑われるだけではない。妻子供をはじめとして一族郎党、果ては先祖代々までが、後世の物笑いの種にされては心外だ、と。
 身綺麗にして置くというのは、己の評価にとどまらないのだと、身にしみて知っていた、或いは教えられていたのでしょう。勿論、そんな武者ばかりではなく、いつの世にもそういうことを全く考えない、いい加減な者もあったでしょう。いい加減というより、底抜けに楽天的な武者。ただ、そんな大拍子な生き方をする武者は、長くは生きられなかったでしょうけど。そんな武者には、当然、武術の稽古を地道にやる、合戦について知恵を絞ってみる、等の深謀遠慮はないでしょうから。

 いきなり大脱線をしましたが、この武者気質、後の世にもちゃんと形を変えて受け継がれているのではないか、と思っての、今日の日記です。

 「伊達者」という言葉があります。
 伊達政宗は相当な「カブキ(傾き)者」だったそうで、自身は言うまでもなく、家来にも、「当時でも」特に派手な目立つ格好をさせて、京の街を連れ歩いたのだとか。
 それが、派手で目立つだけでなく、ファッションリーダー、なんてものじゃない、桁違いにカッコいい。

 ご存知、戦国末期から秀吉の頃までは、伊達政宗のみならず、「お洒落」なんてのは何でもあり、の華やかさ。変わり兜の派手派手しさはいうまでもなく、陣羽織なんかは秋葉山の大天狗かと思うような羽根のついたものや、ラッコ(?)の毛皮の陣羽織を真夏に汗だくになりながら着て歩いていたり、歌舞伎の「暫く」に見られるような大袈裟な髷や、とんでもなく長い刀を反りを打たせて腰に差し、或いは地面に引きずっても良いように鐺(こじり。鞘の先)に車をつけたりする。
 武張っているんだか、お洒落なんだか、ただの目立ちたがりなんだか、もう何が何だかわけが分からない状態。混沌としている。

 意識はあるんだけど、何でもあり、何が何だか分からないもやもやとした形。
 物事のはじまり、というのはいつもそうなんでしょう。未分化の状態です。
 後世の人がこれを分類することは、それだけではあまり意味がない。けれど、はっきりと分化したものと、この未文化の状態をつないでみると、そこに意志、方向性が見えて来る。「人間の解剖は猿の解剖の鍵である」と言うそうですが、全く全く、です。

 「伊達者」という言葉には、「傾(かぶ)いている」、普通から外れているけれど、その凛とした「潔さ」故に、奇を衒った嫌味な部分があっても気にならない「カッコいい奴」といった雰囲気があります。だから、「伊達者」は男に決まっている。

 ところが後になると「伊達男」という言い方が流行って来る。だからと言って「伊達女」という言い方は聞かないでしょう?わざわざ「男」、とつけた辺りで、「伊達者」に流れていた武張った雰囲気が薄れ、「カッコばかり気にする」といった用い方になっていく。
 そして、「伊達の薄着」、です(やっと来た)。
 「カッコばかり気にする伊達男」が、でも、カッコつけるためにやせ我慢をする。
 「やせ我慢するだけえらいじゃないか」
 半分からかいながら、笑いながら、でも、伊達男の薄着、やせ我慢を、温かい目で、好意を持って見ている。その(伊達男の)「稚気」を周囲は愛している。
 それが後に「伊達の薄着」に付け句ができた。「風邪を引く」の一言。
 続けると「伊達の薄着で風邪を引く」。
 こうなると「やせ我慢を半分からかいながら、でも温かい目で~」とは言い切れなくなる。「それ見たことか」という意味合いが付いて、全体に批判的になり、「伊達の薄着に良いことなんかひとつもない。やせ我慢なんて愚の骨頂だ」、と断ずることになる。
 「ヘーゲルの弁証法を批判的に取り入れ~」なんて言い回しはこれと同じ考え方から、と思われます。「弁証法というのは社会主義思想と同じ」なんて思っている人がいるようですが、とんでもない早合点。「批判的に」の一言を見落とすと、何とも頓珍漢なことになる。「ヘーゲル=社会主義の元祖。マルクスの恩師」などと。全くもう、とんでもないことを・・・・。あれ?何書いてたのかな?

 「伊達者」は認められていた。「伊達の薄着」は、困った奴だと思われながらも、周囲から愛されている。けれど、「伊達の薄着で風邪を引く」となって、伊達を気取ること自体、否定されてしまった。
 物の見方が定まってきて、更に詳細が分かるようになる(重箱の隅までが能く見えるようになる)と、確かに、結果出された答えは正しいかもしれない。(薄着をしてたら、風邪を引いてしまう)
 けれど、「伊達者」の「潔さ」「カッコ良さ」も、十把ひとからげにしてしまって、否定的に見てしまう。
 何でそうなるのか、と見てみると、否定する側(評価する側)に「現時点」という基準があるだけで、歴史も、そこにある人の意志(目立ちたがり、名誉欲、向上心等)も、重要視されない、取るに足りないこと、と思われるから、のようです。評価する者の能力の低さと、「現時点」という基準の頼りなさ故に、評価が矮小化されてしまう。

 もうひとつ、実例。「伊達の素足」。
 石田純一の、「素足にローファー」、ですかね。好みもありますが、それも潔さ。お洒落の一つの形、でしょう。それがこうなる。
 ↓
 「伊達の素足もないから起こる」
 (持ってないんだろ?靴下。という発想。からかいが半分入って来ましたね。)
 ↓
 「伊達の素足もないから起こる あれば天鵞絨(ビロード)の足袋を履く」
 これ、完全に伊達(お洒落)を嘲笑してます。

 物事は、まずは思いつき。けれど、それを見詰める時、見詰め方次第で宝物にもゴミにもなる。さほどの努力もせず落ち込んでいる者に対して「オンリーワンじゃないか。あなたはあなたのままでいい」などと言う。そうやって気づかず、努力も、その結果高まる能力も否定してしまう。
 逆に「初めてなんだから、そうそう上手くいく訳はないよ。もう少し辛抱して見てやろう」などと上手くいかないことを受け入れて、結局みんな駄目にしてしまう。
 そんなことを言ってる人々は決まって、現時点を基準にして、努力していない自分をも肯定し、「これまでのことは過ぎたこと。今が大事なんだ」と歴史を軽んじ、「みんな、オンリーワンなんだよ」と言いながら、舌の根も乾かないうちに、「(やっぱり)才能がないから云々」。
 ちっとも首尾一貫してません。

 ということで、「恥を知る」日本人。今は「やせ我慢」を貫き通すしかないか、と。
 もう、「民主党が悪い。」「いや、自民党も悪かった」などと言っていてもはじまりません。「新しい政党を!」、「地方主権だ」「大阪都構想だ」などと言っても同じこと。所詮あなた任せ。
 我々日本人が日本の評者たる自身の能力を高める努力をしていかねば。

 ・・・・自分に言ってるんですからね~~。


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彼の国に「政経分離」なんてあり得ない

2020年03月02日 | 重箱の隅
2014.02/18 (Tue)

 「何を今さら言ってんの」と思われる方も多いかもしれません。
 けれど、反対に、
 「ええ~っ?まさかそんなぁ~!?」と驚かれる人もないとは言えない。

 何しろ最近は「ええっ?どうしてそんな結論になるんだ???」みたいな話が多過ぎる。事を分けて(きちんと整理して)話しても、前提の部分を明らかにせず、刺激的な言葉だけ挙げて、揚げ足取りとしか思えないような解釈を事実として言い募り、書き立てる報道ばかりでしょう?  で、「声が大きくてしつこい方が勝つ」。

 そりゃあ、その、特に問題となる言葉を発しているのは事実ですからね、間違っちゃあいない。けど、情報から論理を、とまではいかずとも粗筋を読み取って判断するんですよ、普通の人はね。
 それなのに、刺激的な言葉だけ採り上げて、ああだこうだと批判を繰り返すような報道だと、恰もそれだけしか言ってないようなことになり、論理どころか粗筋だって満足には見えなくなってしまう。代わりにイメージ、雰囲気だけが「染みつく」。
 あれですよ、ナチのゲッペルス宣伝相が言ったという「ウソも百回吐(つ)けば真実になる」、ってやつです。これ、繰り返されると、人間って考えなくなるんですよね。
 だから、意外とこんなことも知らない人が多いかも?と思って。「政冷経熱」とか「政冷経冷」なんて、よく聞いたでしょう?

 何ごちゃごちゃ言ってんだ、と言われそうなので、そろそろ本題に。
 宮崎正弘氏のメールマガジンに、愛知大学教授の樋泉克夫という方が、「知道中国」という題の文章を長期連載されているんですが、彼の国の基本的な確認事項というか、捉え方を分かり易く書かれているので、それを紹介しておこうと思いまして。

  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 樋泉克夫のコラム

 【知道中国 1037回】  △
中国においては、文化が政治であるなら経済もまた政治、いや日々の生活のなにからなにまでが政治に絡め取られてしまう。これが鉄則。いや鉄則も鉄則、大鉄則である。

これまで日中間の政治と経済の関係について、その時々の情況に応じ「政熱経熱」「政冷経熱」「政冷経冷」「政熱経冷」「政経分離」など様々な表現がみられたが、やはり経済は文化と同じように政治に隷属するものでしかない。こと日中関係に関する限り、「政経分離」はありえない。断固として「政経不可分」ということになる。

先方から兎も角も「政経分離」でいきましょうと声を掛けられると、日本側は歓喜する。文字通り複雑に錯綜し厄介極まりない政治問題を棚上げすると申し出ているんだから、こんな有難いことはない。今のうちに経済交流を実務的にドンドン押し進めてしまおうと考える。だが、それは日本側の単なる思い込みに過ぎない。悲しいかな。お人好しが過ぎるのだ。中国側からするなら、飽くまでも日本側を経済(=カネ儲け)というエサで釣れるだけ釣っておいて、結果として政治的に屈服させればいいという狙いである。
「政経分離」は政治目的を達成するための方便でしかない。文化にしても同じ。文化交流を表看板にしておいて、最後の段階でどんでん返し。政治的に止めを刺すことを目論んでいるだけだ。

であればこそ、かつて日中貿易への参画を許されたのは、「友好第一」という政治の旗印を掲げた友好商社と呼ばれる特殊な商社でしかなかった。もちろん、その中には大商社のダミーがなかったわけではない。

これを言い替えるなら、中国側が掲げる「友好第一」という旗を打ち振らない限り、日中貿易に参入することなど覚束なかった。当たり前すぎるほどに当たり前のことながら、友好商社を如何に扱うかは中国側のサジ加減一つ、彼らの胸算用に掛かっていた。中国側のご機嫌を損ねた段階で、取引は即刻停止。それが嫌なら中国側の意のままに動け、である。
かくて同業他社を出し抜いて貿易取引量の増大を目論む友好商社としてはニジリ寄り、ゴマをすり、媚び諂い、血眼になって中国に忠誠を尽くす。日中貿易というニンジンを目の前にブラ下げられた友好商社は、中国の政治的思惑のままに動かされ、「日中友好、ニッチューユーコー」を叫び続けたというテイタラクだったわけだ。
                (略)

おそらく「岸発言に断固反対する」という言質を与えない限り、愛群大廈で無聊を託っていた友好商社関係者に北京行きの許可は下りなかっただろう。中国側の政治的立場に対する“熱烈支持”を無条件で表明する一方で日本政府を痛烈に非難する以外、中国での商談は事実上不可能ということになる。
やはり「政経分離」は絵空事だったのだ。

 (岸発言というのは、岸首相が、「共産党に支配されている大陸ではなく、台湾と提携しよう」と言ったことを指します)

 ~宮崎正弘の国際ニュース・早読み(パキスタンにおけるテロ、タリバンの猛威とブットの息子)より~

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 「経済は文化と同じように政治に隷属するものでしかない」
 この一文ですよ、骨子は。
 「文化は政治に隷属する」「経済も政治に隷属する」
 これが彼の国の在り方です。

 文化も経済も政治の言いなり(隷属)なんだ、と書かれている。
 考えて見りゃそうですよ。彼の国では国をまとめるために政治があった。
 「どこの国だってそうだろう」と突っ込まれそうですが、大半の国は指導者が尊敬の対象ならば、「まとめ」なくとも「まとまる」。
 日本なんかがそうです。皇室、天皇に力があった時期はほんのわずかで、大方は権力者が「天皇の命」を受けて国を治める。それもそれこそ「地方主権」状態で治まっている。

 けど、彼の国はそうではない。だから何度も王朝が倒され、その都度新しい王朝ができた(易姓革命)。民衆を心服させることなどできるわけもないから、何とか王朝の正統性を示すために政治をする。経済も文化もそのために総動員させられる。つまり、唯々諾々と従わせられる。政治が黒だと言えば文化も経済も「御意!」という事になって、「南京大虐殺」は二万が二十万、三十万、四十万となる。
 そんな国なのに、「政治はそんなでも、民間が」「草の根交流で~」「中国人は日本が好きなんですよ」、なんてのは能天気過ぎるでしょ?
 政治が全能、なんですよ。政治は共産党が握ってるんですよ。
 大実業家ったって、共産党幹部でなければ明日にはあることないこと罪状を書き連ねられて全財産没収、当人は処刑、なんてこともあるんですよ。

 政治が全能って、そういうことですよ。
  で、その全権は共産党が持ってるんです。 

 ついでながら。
 コロナウィルスの件も、その発生と蔓延する現在までの変遷を、彼の国と我が国の報道の仕方について見比べるのも一策かも。


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